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2023年完全BIM/CIM化は間に合うのか?

掲載日:2021/11/30

2023年完全BIM/CIM化は間に合うのか?

現在、建設業界が直面するBIM/CIM化という課題。今後の建設業界が最適な形で業務を進めるためには、この技術への対応が必要不可欠だ。その一方で導入には課題も多く、どのように解決するべきか注目が集まっている。本記事では建設業界の新しいプロセス「BIM/CIM」の現状とこれからについて、解説する。

期待される完全BIM/CIM化

BIM/CIMとは

BIM/CIMは、建設におけるデータの構築管理に活用が期待されている新しいプロセスである。

これらを導入することによって「情報の有効活用」「設計の最適化」「施工の効率化・高度化」「維持管理の効率化・高度化」などのメリットがあるため、建築や土木の現場の生産性向上が可能なプロセスとして期待されている。

またBIM/CIMは、最新のICT機器を活用することでより大きな効果を発揮する。これは、建設生産システムの計画・調査・設計・施工・監理の各段階において情報を共有することにより、効率的で質の高い建設生産・監理システムを構築できるためだ。

政府の進め方

国土交通省は、2020年に「2023年までに小規模工事を除く全ての公共事業にBIM/CIMを原則適用すること」を決定した。これは、以前に目標としていた「2025年までに全ての公共事業をBIM/CIMを原則適用」を実質2年前倒ししたもので、より早期の導入を重視したことがうかがえる。さらに国土交通省は普及に向け、監督・検査マニュアルの作成や実施要綱の取りまとめ、中小建設会社の支援などの環境整備も進めている。

解決すべき課題とは

しかし、2023年に完全BIM/CIM化を完了するためには解決すべき課題が多くある。

例えば、BIM/CIMを扱うための環境を整備する際に発生する負担を懸念する声は多い。BIM/CIMにおいて根幹に関わる3次元データは、十分な性能を持つPCでなければ管理が難しく、企業によってはPCの総入れ替えが必要になることも考えられる。また、測量や調査の結果をデータ化するためには専用の機材を別途用意しなければならない場合もある。

さらに、BIM/CIM技術を扱える人材の確保に対するコストの発生についても注意すべきだ。いずれにせよ、中小企業にとっては経済的に大きな課題となるだろう。

課題は業種ごとに異なる

また、業種が違えば抱える課題にも違いがある。

例えば測量においては、扱うべきデータ量が膨大なものになる。BIM/CIMにおいて、データは単に蓄積すれば活用できる、というものではなく、用途ごとに分類・適用といった後処理が必要だ。そのため、この手間をどう捻出するかという問題に頭を悩ませる企業は多い。特に土木系ではレーザースキャナーなどの導入により測量データのCIM活用が進んでいるものの、前述の理由によって後処理を別途専門の業者に外注するケースも見受けられる。

また、施工においては、現場でBIM/CIMデータを活用するためのインフラ整備が急務となっている。これは、道路施工などではミリ単位の作業が求められるものの、土木は雨などの影響で地形が変わってしまうといった事態も頻発するためだ。現状は現場ノウハウの豊富な人員が手作業で調整しているケースが多く、ICT建機の活用が進まない原因になっているとの指摘もある。また、企業によってはこの問題を避けるために2D図面で作業する場合もあり、本末転倒な結果になっているのも確かだ。

同様に、設計についてもBIM/CIM化によって発生する膨大な入力作業を嫌って2D設計にこだわる企業が多い。いずれにせよ、BIM/CIM化による業務負荷をどのように解消するかが今後の課題になりそうだ。

課題解決のために期待されるアプローチ

完全BIM/CIM化を推進するに当たり、一つの解決策として注目を集めているのが、ソフトウェアの発展だ。現在の建設系ソフトは提供元企業によっては互換性が乏しく、多方面にわたってデータの活用が困難という問題が見受けられる。互換性が高く、さまざまな業務で利用できるソフトの提供によって包括的なBIM/CIMの業務活用が可能になる。端末や機材の購入コストを抑え、データ管理に必要な業務負荷の削減を期待したい。

2023年まであとわずか、完全BIM/CIM化の実現には多業種にわたる建設業界全体の改革が必要だ。最適な機材やソフトでユーザーとメーカーをつなげるベンダーの役割は、より重要なものになるだろう。