CAD

BIMによる建築プロジェクトで点群データを活用する
オートデスク製品に注目

掲載日:2022/10/26

BIMによる建築プロジェクトで点群データを活用するオートデスク製品に注目

BIMによる施工管理はプロジェクトの効率化に大きく貢献するが、その実現には精確な3Dモデルが必要不可欠だ。作成には地形や建造物の点群データをモデルに反映する手法が注目されている。ReCapやAutoCADなどオートデスク製品を活用し、建築に携わる全ての人が現状を正しく把握できる環境を作りたい。

近年、BIMによる建築プロジェクトが盛ん

BIM(Building Information Modelling)とは、コンピューター上に作成した、主に3次元の形状情報に加え、室等の名称・面積、材料・部材の仕様・性能、仕上げ等、建築物の属性情報をあわせ持つ建物情報モデルを構築する手法。平面図や断面図、属性情報などが別々に管理する既存のシステムとは異なり、建物を一つのモデルだけで分かりやすく可視化できる。

このため、施工に携わる事業者やスタッフが現状を共有し、コミュニケーションや理解度を向上できるほか、建物のライフサイクルを通じた情報利用やIoTとの連携を可能とする。こうしたメリットから、国土交通省でもガイドラインを定めて推進しているシステムだ。

BIM/CIM、点群データに関する国土交通省のガイドライン

対象物のあらゆる情報を数値化し3Dモデルの精度を向上

BIMの理想的な運用を実現するうえでは、システムの根幹となる3Dモデルには相当の精度が求められる。3D CADで3次元モデルを作ったとしても、これはあくまでも物体の形状を示したものであり、細部まで実態に追従することはできない。そういったディテールの部分を補えるのが、点群データという概念だ。

これは3次元空間に存在する対象物の表面形状を記録した、3D座標点の集合データのこと。X/Y/Zの座標や色情報、反射強度や反射率、角度情報といったデータを集めた、いわば「現実にある物体を位置情報まで含めて数値に置き換えたもの」であり、3Dレーザースキャナや空撮画像などを用いて作成できる。

点群情報をもとに3次元モデルを制作すれば、建物や地形を実態のまま再現し、現状をより精確に把握することが可能となる。座標や角度が数値化されているため寸法確認も容易で、既設建物の改築や更新にも有用だ。

実際に、静岡県ではこの手法を先進的に取り入れて、道路管理の効率化を図っている。同県では点群データと道路上の施設台帳データとを連携させ、同一プラットフォームで閲覧できる環境を構築。現場の状況を3次元ビューワ上で視覚的に把握のうえ幅員や高さ等の計測が可能となった。地図及び画像から施設台帳を容易に検索できたり、電柱など占用物件情報の連携にも応用できたりとさまざまなメリットが見込まれており、国交省でもこのモデルを推奨している。

ReCapとAutoCADの連携で高精度のモデルを作成

点群データを活用するうえで、オートデスクが提供しているのが「ReCap Pro」だ。これはレーザースキャナで作成した点群データの計測や編集を行えるソフトウェア。TopconやFaroなど各メーカーの3Dスキャナーで取り込んだデータを、高速で表示できる。

ReCap Proは、複数のスキャンデータを自動で複合する自動レジストレーションや、データから通行人等の不要な情報を除去するクリーンアップ、モデル全体を360度全方向から自由に見られるReal Viewなど、高度な機能を備えている。

また、レーザースキャナを要せず、写真から点群データを作成する手段として、「ReCap Photo」も提供。これはクラウドを利用して、写真から3Dメッシュや点群を作成できるソフトウェアおよびサービス。

「ReCap Pro」と「ReCap Photo」

写真のExifデータをもとに、対象物の座標点と測量点を設定することもできる。「ReCap Pro」と併用し、レーザースキャナだけではカバーしきれない上空からの視点を、ドローンによる空撮画像で補完するといった使い方も可能だ。

これらで作成したデータは、AutoCADやRevit、InfraWorksなど各種オートデスク製品と連携可能。例えば、レーザースキャンデータや空撮画像から作成した点群データをAutoCADの図面に適用し、高精度のモデルを作成するといった使い方ができる。

実行においては、既存の図面に点群ファイルを挿入・図面上で挿入位置や尺度、回転角度等を手動で設定することもできるが、地理的位置を使用するというユニークな機能も利用できる。

これは、点群データに収められた測量情報や座標をもとに、オンラインマップ上の精確な位置に点群データを配置できるもの。細かい設定を処理することなく、精度の高いモデルを作成できる。

セグメント化された点群からジオメトリを作成
群内の 2 つの平面セグメント間のエッジに相当する線分を抽出する例

維持管理の効率化まで実現する点群データ

こうして点群データを適用したモデルは、AutoCAD上で点群の密度を調整したり、断面を作成したりと、多彩な管理や編集が可能だ。この仕組みは、BIMを活用した建設において、さらなる設計や維持管理に大いに役立つ。

例えば、建造時のデータと現状の点群データを統合すれば、竣工時から現在に至るまでの、建物の変化を把握することが可能。モデル上で外壁を点検することで、外壁の浮きなど構造物の劣化を早期発見し対応できる。

関係者間の合意形成の迅速化や、施工時の手戻りの減少、維持管理の効率化など、さまざまなメリットに期待できるBIM。点群データの導入でその有効性を高めるうえでオートデスク製品を活用するよう、ぜひご提案いただきたい。