IoT・AI

IoTの次は「DoT」!?
Deep Learning × IoTが社会を変革する

掲載日:2023/04/04

IoTの次は「DoT」!? Deep Learning × IoTが社会を変革する

ここ数年、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)は当たり前に存在する社会インフラとして急速に拡大している。そして、このIoTにAI技術、特に「ディープラーニング」を組み合わせた「DoT(Deep Learning of Things)」によって、驚くほどのシナジー効果を生み出す事例が増えている。DoTによって実現する技術革新は、社会構造そのものを変革しつつあるのだ。

ディープラーニングとは

「ディープラーニング(Deep Learning:深層学習)」はAI技術の中の機械学習の一種だ。コンピューターが自動でデータを解析し、そのデータの特徴を抽出する技術であり、十分なデータ量があれば画像識別や音声認識、自然言語処理などを高い精度で実現できるようになる。

ディープラーニングは人間の神経細胞(ニューロン)を模した「ニューラルネットワーク」を用いて、データに含まれている「特徴」を「自動的に」学習する仕組みとなっている。

ニューラルネットワークは「入力層」、「中間層(隠れ層)」、「出力層」で構成されており、中間層が何層も折り重なった多層構造を持つ場合には「ディープニューラルネットワーク」と区別して呼ぶこともある。このディープニューラルネットワークでは、画像や音声、テキストといったデータの中に含まれるさまざまな特徴を階層ごとに段階を踏んで学習する。ディープラーニングという名前の由来も、この多層構造が深く折り重なる特徴に由来している。

ディープラーニングの理論そのものは、1980年代からあったが、精度の高い膨大な量のデータとそれらを処理できるコンピューターの処理能力が必要となるため、長年実用化に至っていなかった。しかし、近年になってインターネットを利用したビッグデータ、コンピューターの処理能力の向上によって、一気にディープラーニングが身近な技術となった。

近年、ディープラーニングの普及を強力に後押ししているのは、クラウドコンピューティングである。ディープラーニングでは、膨大な量のデータを比較して学習する必要があり、スムーズな学習のためには並列処理ができる高性能GPUを用いることが多い。こうした高性能GPUもクラウドサービスであれば、時間課金で気軽に利用できる。つまり、ディープラーニングに対するハードルが一気に低くなったのだ。

ディープラーニングとIoTの組み合わせで
実現する技術革新

IoTとディープラーニングの組み合わせは、IoTが登場した頃から検討されており、決して新しい考え方ではない。IoTの基本は(1)情報を収集、(2)収集した情報を転送、(3)データの蓄積および分析、(4)分析結果を次のアクションにつなげるという4ステップである。基本的に(1)~(4)の間に人間は介在せず、機械同士がやりとりを行う。

一方のディープラーニングは、IoTの(3)のステップに含まれるデータの分析において、その力を発揮する。ディープラーニングを用いてIoTデバイスから送られてくる膨大なデータを分析し、必要に応じて人や機械などのアクションにつなげることができるのだ。

例えばカメラから送られてきた画像を素早く識別することで、人物や標識、障害物などを認識する。また、マイクから送られてくる人の声から内容を把握する、あるいは人物を特定するといったことも可能になるだろう。ほかにも動物の鳴き声から動物を特定する、機械の作動音から機械の故障の有無を確認するといった応用も可能になる。また、自然言語処理においては、人が発した言葉を自動的に文字に起こす、自動で外国語を翻訳するといったことなども実現する。

DoTの活用イメージ

最近はさまざまな分野でDoTの活用事例が報告されるようになっている。

スマート農業

少子高齢化によって農業の人材は不足している。そこで田畑やビニールハウスにセンサーやカメラを設置してDoTを活用し、作物の育成状況、気温や降水量などをリアルタイムに認識して、適切なタイミングや量の水やり、肥料や農薬の提案、収穫時期の通知など農作業の効率化や生産の最適化を実現する動きが活発化している。

医療分野への応用

医療分野でもDoTを導入する動きが活発化している。例えばスマートウォッチなどのウェアラブルデバイスは、心拍数や血圧、睡眠の状態、カロリー消費量などユーザーの健康状態に関する情報を取得している。また、多くのウェアラブルデバイスは、ユーザーのスマートフォンと連携している。そのためスマートフォン上にあるヘルスケアアプリがデータを分析し、何らかの異常を検知したら即座に主治医のいる病院へと通知が届く、というような利用方法も検討できるだろう。

スマート家電

最も身近にDoTの恩恵を感じられるのは、おそらくスマート家電の分野だろう。日々の行動パータンから帰宅時間を予測する、あるいはスマートフォンのGPSデータから位置を割り出し、帰宅時間に合わせて掃除機が床を掃除して玄関の灯りを点灯し、室内が適温になるようエアコンを自動調整することもできる。寒い日には帰宅時間に合わせてお風呂の支度をしたりすることも技術的には可能だ。

さまざまな技術革新によって、現在ではDoTは非常に身近な技術になった。自動運転などで利用されるイメージが先行し、「大企業が取り組むもの」といったイメージを持つ経営者はまだまだ多い。だが、実際にはクラウドサービスを利用すればDoTは簡単に利用できる仕組みであり、センサーやカメラなどのIoT機器も比較的安価で入手できる。

DoTはアイデア次第でビジネスを大きく変革するチャンスにもなり得る。例えばレストランで気象予報のデータから明日のメニューを提案して食材の仕入れを変更する、街のクリーニング屋でカメラに衣類を映すだけで自動受付する、など可能性は未知数だ。今後もDoTの最新情報には注目すべきだろう。