IoT・AI

身に着けるAI 最新ウェアラブルデバイスを紹介!

掲載日:2024/06/25

身に着けるAI 最新ウェアラブルデバイスを紹介!

2000年代初頭の「第三次AIブーム」から二十数年。いまやAIは大がかりなPCやサーバーがなくても、小型デバイスで利活用できるようになった。さらに、AIを搭載したウェアラブルタイプの小型デバイスも続々と発表されている。これらはどのような使い方が想定されているのだろうか。

ウェアラブルデバイスの歴史

最初のウェアラブルデバイスにあたるものは諸説ある。その一つが、アメリカの計算機科学者であるアイバン・サザランド氏が1968年に発表したHMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)だ。これは初のVR(仮想現実)とAR(拡張現実)を実現するための機械であり、ゴーグルのようにしてモノを見る機械と捉えれば、後のスマートグラスにつながるものと考えられるだろう。

ただ、サザランド氏が発表したHMDは重量があり天井につないで支えるものであり、VR環境もシンプルなもので完成度が高いとは言えなかった。

もう一人、ウェアラブルデバイスの祖と呼ばれているのが、トロント大学教授のスティーブ・マン氏だ。マン氏は、1970年代に「人が作成したプログラムを実行可能なコンピューターを身に着ける」理論を提唱し、サングラス型の「アイ・タップ」などの機器を開発している。

実用可能なウェアラブルデバイスの誕生

一般の人でも利用できる初めてのウェアラブルデバイスは、2009年に発売されたスマートウォッチ「FitBit」だと言われているが、いまやスマートウォッチは日常的に使用されており、年間販売数は2024年度内に500万台を超えるという予想もある。

そのほか、スマートグラスやスマートリングなど、身に着けるデバイスは小型化しながらも高性能化が進んでいる。

注目の2つのAIウェアラブルデバイス

ウェアラブルデバイスは、AIを搭載するに至った。2023年末に元Apple社のエンジニア2人が創業したHumane社が発表した『AI Pin』とAIハードウェアのスタートアップ企業rabbit社が発表した『rabbit r1』が話題を呼んでいる。

『AI Pin』

『AI Pin』は縦47.50mm、横44.50mmとサイズがスマートフォンの半分以下のデバイスで、本体とバッテリーの2つのパーツをマグネットで合体させる構成だ。

衣服などに挟んで装着すれば利用でき、メイン機能は写真撮影やテキストメッセージの送付というシンプルなもの。キーボードなどは付いておらず、入力は音声や手の動きで行う。ディスプレイは内蔵プロジェクターから発せられるレーザーで、手のひらにテキストやグラフィックを映し出す仕組みになっている。

『AI Pin』で音楽などを再生する際は、本体のスピーカーのほか、Bluetoothでつないだイヤフォンを利用することも可能だ。さらにAI機能によって異なる言語同士での会話を同時通訳したり、生成AIのように質問に対して回答したりもできる。搭載カメラは1300万画素で、将来的には動画再生機能も搭載予定だという。

現状ではスマートフォンほどの機能を有していないが、機能や搭載言語が増えれば海外出張などで活用できるデバイスになりそうだ。日本での発売はまだ発表されておらず、アメリカでの発売価格は699ドル+毎月のサブスクリプションとされている。

『rabbit r1』

「your pocket companion」というキャッチコピーで発表された『rabbit r1』は、2.8インチのディスプレイを持つ小型デバイスだ。78mm×78mmとAI Pinに比べると大きいサイズだが、それでもスマートフォンの半分ほど。身に着けて利用する仕様ではないため、正確にはウェアラブルデバイスではないが、ポケットなどに入れて常に持ち歩けるという意味ではほぼウェアラブルに含められるだろう。

基本的に音声で指示して操作するが、操作用のスクロールホイールも付属している。また、GPSと動作を感知するための加速度センサー、ジャイロスコープセンサーも搭載しており、カメラは800万画素だ。

特徴は、独自に開発した大規模アクションモデル(LAM)で、LAMとOpenAI社のChatGPT(LLM)の組み合わせで、LLMが音声入力などのコマンドを理解してLAMが実行するという流れでユーザーのリクエストに応える。そのためプロンプトを音声で入力して答えを得られるほか、翻訳や、音声メモ・写真での記録も可能だ。またAI機能は、興味のある植物にカメラを向けると種類を調べる、料理にカメラを向けると食材を教える、などの使い方もできる。機能はさらにアップデートされる予定で、アメリカでの価格は199ドルに月ごとの通信料が必要だ。

どちらのデバイスも現状ではスマートフォンと別に導入するだけの価値があるのか迷うところではあるが、今後のアップデートによってさらに多機能になることが期待できる。

スマートフォンを取り出しての作業が難しい工事現場や建築現場、介護現場など、ハンズフリーでも利用できるこのようなウェアラブルデバイス、もしくは小型AIデバイスは、今後あらゆるビジネスシーンで活躍することだろう。