流通・小売業

マシンがモノを買う時代
マシン・カスタマーとビジネスの関係性

掲載日:2024/06/25

マシンがモノを買う時代マシン・カスタマーとビジネスの関係性

これから人間がモノを購入したり契約したりする頻度は大きく減り、ほとんどの買い物をマシンに任せる時代が来るかもしれない。その鍵を握るのがマシン・カスタマーという概念だ。今回はその概要やビジネスに与える影響などについて解説する。

マシン・カスタマーとは

マシン・カスタマーとは、ソフトウェアや機械が人間と同じように製品やサービスの購入・契約・交渉などを自律的に行うことで、アメリカの調査会社であるガートナー社が提唱した概念だ。Webページやスマートフォンで目にする機会の多いAIアシスタントやチャットボットなどは、マシン・カスタマーの先駆けとなるサービスと言える。

マシン・カスタマーを一言で表すと、「AIによる購買行動の自動化」だ。例えば、ChatGPTのような対話型AIが自動で買い物をしてくれるケースが考えられる。プロンプト(指示文)に「友人の家に持っていく手土産を予算2,000円以内で買っておいて」と入力すれば、AIがECサイトで最適な手土産の検討・注文を自動で行い、後日、手土産が自宅に届くのだ。単に購買が自動化されるのではなく、AIが自ら製品・サービスの情報を取得し、比較したうえで購入するのがマシン・カスタマーのポイントである。

マシン・カスタマー進化の3つの段階

マシン・カスタマーは3つの段階を経て、進化を遂げるとされる。第1段階はソフトウェアや機械、AIなどのマシンが人間に代わり一部機能を自動で実行するフェーズ。第2段階では、あらかじめ設定されたルールの下に、マシンが状況に応じた選択と行動を実行する。そして、第3段階になると高度に自律したマシンが購買行動をはじめ取引の大半のプロセスを自動で実行するようになる。第3段階までマシン・カスタマーが進化すると、人間が行う購買活動のほとんどがマシンで代行される世界になるかもしれない。

マシン・カスタマーがビジネスに与える影響

マシン・カスタマー時代に突入したとき、これまでのビジネスの中でも特にセールス・マーケティングのあり方が大きく変わる可能性がある。なぜなら、人間ではなくマシンも顧客対象になるためだ。もちろん、マシン・カスタマーの普及によって人間の購買活動自体がなくなるわけではないが、企業は人間だけでなくマシンに対しても、製品・サービスを購入してもらえるように施策・戦略を練る必要性が生じる。例えば感情に訴える、などといった人間相手の戦略ではなく、流行や購買データなどのさまざまな情報をベースとした戦略がより重視されることになるだろう。

マシン・カスタマーの展望

マシン・カスタマーの概念を提唱したガートナー社の日本法人であるガートナージャパンは、2028年までにマシン・カスタマーとして機能する可能性のある製品・サービスは約150億個に上ると予想する。

さらに同社のアナリストは、ある情報サイトのインタビューで「2036年頃には人のニーズを推測したマシン主導のサービスが実現されると言われている」と述べており、マシン・カスタマーの成長は、販売戦略やそのほかのビジネスにも、デジタル・コマース以上の多大な影響を及ぼすようだ。

参考:Gartner、2024年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドを発表|ガートナージャパン株式会社

前述のとおり、マシン・カスタマーが人々の生活に浸透すれば、企業はマシンに向けてもアプローチを行う必要がある。従来とは異なるアプローチが求められるだけに、ビジネスに大きな影響を与えることは間違いないだろう。ベンダーとして、マシン・カスタマーの動向に注視しつつ、顧客への情報提供をしていきたい。