金融業

BNPL(後払い決済)の波が日本にも到来!?
導入企業に及ぼす影響とは

掲載日:2025/05/02

BNPL(後払い決済)の波が日本にも到来!? 導入企業に及ぼす影響とは

海外で拡大し、現在は日本でも注目が高まっている「BNPL(後払い決済)」。市場規模の大幅な拡大が予測される決済手段である。BNPLは導入企業にどのような影響を及ぼすのだろうか。本記事ではBNPLの概要や導入事例などを紹介していく。

BNPL(後払い決済)とは

BNPLは「Buy Now, Pay Later」の頭文字を取った言葉であり、直訳すると「今買って、後で支払う」という後払い決済を指す。BNPL利用の流れは次のとおりである。

まず消費者が商品購入時に決済方法としてBNPLを選択し、決済を実行する。続いて、BNPL事業者が当該店舗へ立て替え払いし、消費者は商品を受け取る。後日消費者がBNPL事業者へ立て替え分を支払う。

なお、支払い方法にはコンビニ払いや口座振替などで送金する形式やスマホ決済などが挙げられる。

クレジットカード決済との違い

後払いという言葉でクレジットカード決済をイメージした人も多いだろう。両者の大きな違いはBNPLの場合、分割手数料が事業者負担なのに対して、クレジットカード決済の分割払いなどで発生する手数料は消費者負担となる点だ。

また分割手数料以外の違いでは、利用開始のハードルの低さが挙げられる。クレジットカード決済を利用するには生年月日や住所などに加え、職業や年収などさまざまな属性情報も提供して与信審査を受ける必要がある。一方、BNPLを利用するにはメールアドレスや電話番号などの基本情報のみで、与信審査も不要または簡易的だ。

何らかの事情でクレジットカード決済が選択できない人であっても、BNPLであれば現金以外の決済手段を持つことができる可能性がある。

BNPL導入が企業にもたらす影響

先述のとおり、BNPLは与信審査が不要な場合が多く、ある場合でも厳しくはない。加えて、消費者側に分割手数料が発生することもない。そのため、クレジットカードを所有していない若年層や分割払いの手数料を嫌がる顧客層の取り込みが期待できる。

一方で、BNPLの決済手数料はクレジットカード決済よりも高いというデメリットもある。従って、消費者がBNPLを利用した際、加盟店の企業はクレジットカード決済よりも負担金額が増える。また利用開始のハードルが低い故に、クレジットカード決済よりも貸し倒れのリスクは高い。BNPLの導入に当たって企業はこうした懸念点も知っておく必要がある。

導入事例

では実際にBNPLは企業にどのような影響をもたらしているのだろうか。実際の導入事例を紹介していく。

取引額の拡大を実現したオフィス家具販売会社

オフィス家具の販売やオフィスの空間設計などを手掛けているある会社は、法人顧客が多いこともあり、掛け売り(後払い契約)への要望が多く寄せられていた。そこでBNPLを導入したところ、取引額の拡大や前払いと比較した際のオペレーション負担の軽減を実現。さらに商品の即時発送も可能になったため、顧客からも高評価を得ている。

人的コストの削減に成功したタクシーアプリ提供会社

タクシーの配車サービスを展開しているある会社では、取引先数の増加に伴い、請求や延滞の件数も増加。それらの対応に社内リソースが割かれており、業務の効率化が求められていた。さらに適切な与信付与が困難な団体や企業に対してはサービス提供を断ることもあり、売上の機会損失も生じていたという。

こうした背景から同社はBNPLを導入。毎月の請求書作成や送付、延滞者への連絡などをBNPLサービスに対応してもらうことで、請求関連の担当者を3人から1人へ削減することに成功した。さらにこれまでサービス提供を断ってきた与信付与が困難な事業者にもサービス提供を行えるようになった。BNPL導入により、人的リソースの最適化を実現した事例である。

BNPLの展望

BNPLの市場規模は今後拡大が見込まれている。矢野経済研究所の調査では、後払い決済サービスの国内市場規模は、2023年度の1兆5,317億円から2028年度には約2兆8,000億円規模まで拡大すると予測されている。

先述した事例のように、多様な決済手段の提供は機会損失を防ぐことにつながる。またオンライン決済市場の拡大も背景に利用者数の増加が予測されるBNPLの導入は、売上にも直接的な好影響をもたらす可能性がある。新規顧客層の獲得や機会損失に悩むクライアントにはぜひBNPLという選択肢を提案したい。