DX
サプライチェーンでDXを推進する流れとは?
見直すべきポイントと合わせて解説
掲載日:2025/05/27

近年では、製造業のサプライチェーンでもデジタル化が加速している。本稿では、デジタル化によってどのような課題が解決できるのか、そのメリットを探っていく。またグローバルな動向として、企業が評価される指標の一つにDX、GXが重視されている。課題解決にとどまらず、企業価値向上の観点からもDXを進める重要性を解説する。
製造業に大きな影響を与える海外情勢
原材料や部品を海外に依存しがちな日本の製造業は、コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻、関税と為替の問題などの海外情勢の影響を受けやすい。そのため、生産拠点の移転や見直しの選択を迫られる事態が起きている。また、脱炭素、SDGsなどの機運の高まりから、製造業に携わる企業単位にとどまらず、サプライチェーン全体での改善が求められている。
世界経済フォーラムは、2018年から各国の製造業の模範となる工場を選定し、「グローバルライトハウス」と認定している。選定基準には、人材育成や働き方だけでなく、生産効率の向上や、環境負荷への影響なども含まれている。グローバルライトハウスは、2024年時点で世界中から172の工場が選定されており、特に欧米諸国や中国の企業が多く選出されている。これに対し、日本の選出はわずか3工場にとどまり、デジタル化の取り組みが遅れていることが浮き彫りとなっている。
サプライチェーンのDX化を進める流れ
サプライチェーンのDXを進めるには三段階で考える必要がある。各段階について順番に見ていこう。
第一段階 自社の課題の把握
まずは、自社の状況や課題を把握するために各製造工程での発注・在庫状況などを可視化することが重要だ。さらに、サプライチェーン全体での生産工程の可視化まで踏み込めると、需要予測の精度向上やリスク管理なども効果的に行えるだろう。
第二段階 サプライチェーンの改善
次の段階では、可視化したサプライチェーン全体での生産工程にIT技術などを導入して改善を行う。
ここで活用される技術にはブロックチェーンやコントロールタワーの構築のほかに、ERPや製造実行システム(MES)なども検討したい。またクラウドとの連携も不可欠となるため、IoTや電波を用いて情報の読み取りを行うRFIDといった技術も役立つ可能性がある。
ブロックチェーンは、IoTやRFIDで得たデータを組織で横断して共有する際に利用される技術のことを指し、共有したデータはビッグデータとして活用できる。
コントロールタワーは、管制塔を意味する言葉で、サプライチェーンの全プロセスを管理し、売上や利益の最大化や在庫適正化などをコントロールするシステムを指す。
第三段階 運用改善とセキュリティ
導入したIT技術がシステム運用中に適切に機能しているかを確認し、データの収集・分析を通じて、必要な箇所の見直しを行っていく。
AIやデジタルツインなどの最新の技術を用いて、リスクの予測分析から在庫、物流計画を作成し、継続して改善していくことが重要だ。
サイバー攻撃への対策も不可欠だ。独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が発表した「情報セキュリティ10大脅威 2025」によると、2位に「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」が選出されている。これは7年連続の選出となり、サプライチェーンをターゲットとしたサイバー攻撃が後を絶たないことが分かる。
対策としては、各企業が信頼できる委託先、取引先、サービスを選定して、サプライチェーン全体で、サーバーやネットワークなどのセキュリティ対策を行うことが大切だ
サプライチェーンDXの活用事例

倉庫業・トラック運送業を営むある企業では、クラウド型の物流容器在庫管理システムを導入。全国に点在する在庫保管センター間の輸送や出荷時に使用する荷役台管理の効率化を実現した。また、運送業を営む別の企業でも、倉庫内の在庫の最適化を図る目的でRFIDを導入し、繁閑差の激しい現場でも運営を効率化することに成功している。
サプライチェーンの見直しでDXを実現
原材料の調達から製造、在庫管理、物流、販売に至るまでのプロセス全体を指すサプライチェーン。どの工程においてもそれぞれにボトルネックや課題があり、それに適したソリューションを提供することでDXを進める手助けをしていきたい。