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データ分析成功のカギは現場課題に即したテーマ設定 AIに代替可能なプロセスを積極的に活用すべき
~データ分析・活用コンサルタント 株式会社セールスアナリティクス 代表取締役 高橋威知郎氏~

掲載日:2025/06/17

データ分析成功のカギは現場課題に即したテーマ設定 AIに代替可能なプロセスを積極的に活用すべき
~データ分析・活用コンサルタント 株式会社セールスアナリティクス 代表取締役 高橋威知郎氏~

DXやAIの進化が止まらない昨今、企業活動におけるデータの重要性が高まり、その活用が業務の効率化や収益拡大、生産性向上の有効な手段になると注目されている。果たして蓄積されたデータをどのように分析し、ビジネス戦略に結びつければ最大の成果や課題の解決につながるのか。データ分析・活用の専門家である高橋威知郎氏に、データの利活用を成功させるためのポイントについて聞いた。

データ利活用の要諦は孫子にあり

BP:近年、企業経営におけるデータ利活用の重要性は日増しに高まっています。ただし、今でこそデータサイエンティストやデータエンジニアは花形職になりましたが、以前はデータ分析に携わる方が注目される機会はそれほどなかったように思います。まずは先生がなぜデータに目を向けるようになったかというパーソナルな話題からお聞きしてよろしいでしょうか。

高橋 威知郎氏(以下、高橋氏):私の場合、仕事としてデータ分析に携わりかれこれ25年になりますが、そのきっかけは大学を出て、中央省庁に入省した際に配属されたのがデータ分析を任務とするセクションだったという身も蓋もないものでした。ただし、業務として分析に取り組む中で、データの重要性を改めて認識する機会は何度もありました。入省した2000年代当時、すでに政府のさまざまな意思決定にデータが用いられていたことはその一つです。もちろん後付け的にデータが用いられるようなことも少なくないのですが、それでもデータに基づいて組織が動き、人が動くことを目の当たりにしたのは、やはりちょっとした驚きでした。

私が配属された内閣府(旧総理府)は、アメリカ政府との折衝を行うことも多かったのですが、その際にアメリカ側の担当者が口にした「人間はプレッシャーによって判断を誤ることが多いが、どのような状況であってもデータは誤ることがない。だから私たちはあらゆる判断で常にデータを優先しているんだ」という言葉も強く印象に残っています。当時のアメリカ政府がデータに基づく意思決定をどこまで行っていたかは分かりませんが、なるほど、彼らはこういう考え方をするのかと思ったことを覚えています。振り返ると、25年間、データに向き合い続けてきた理由は、やはり職場での出会いや気づきが大きかったのかもしれませんね。内閣府の私の上司の上司にあたる方から聞いた「データ活用の要諦はすべて『孫子』にある」という言葉もその一つです。

BP:『孫子』ですか?

高橋氏:そうです。データ分析に大切なことは、紀元前の兵法書である『孫子』にすべて書かれているというのです。実際に『孫子』を読むとデータという言葉こそ出てきませんが、まさに情報に基づいて状況を分析し、徹底的にリスクを避け、最大のリターンを得ることの大切さが言葉を尽くして説明されているわけです。なるほどそういうことか、と腑に落ちたことを覚えています。

私の学生時代は、データマイニングという言葉が広く使われるようになった時代でしたが、一方で金融工学がデータ分析の新分野として台頭した時代でもありました。そこで追求されていたのは、いかに標準偏差の幅を狭めるか、つまりリスクをいかに減らし、リターンを最大化するかという課題でした。これなどまさに『孫子』の考え方そのものですよね。

インセンティブ次第で進むデータ利活用

BP:先生は8年前に株式会社セールスアナリティクスを立ち上げ、ビジネスデータ分析コンサルティングを手掛けています。その社名通り、セールス支援という観点でビジネスデータ活用に取り組まれる理由を教えていただけますか?

高橋氏:その答えとしてまず挙げられるのは、どのような企業でも顧客情報や商取引履歴などセールスに関連するデータは必ず残っている点です。それ以上に大きいのが、売上を伸ばすためになにができるかをデータに基づいて考えることが多くの企業にとりきわめて受け入れられやすい領域であるという点です。

ご存じの通り、データ分析はさまざまな企業活動に活用が可能です。製品開発における原価管理もその一つですが、データを活用して原価を抑えても担当者の評価が急に高まるわけではありません。仕事なんだから、抑えて当たり前というわけです。しかしセールスはそうではありません。特に営業担当の場合、インセンティブという目に見えるリターンに直結しますから、データ分析による提案を積極的に受け入れる十分な動機があるわけです。データ分析を通して組織を変えていこうとする場合、その違いはやはり大きいと思いますね。

BP:逆に言えば、従業員のモチベーション次第では、セールス以外でもデータ利活用が進むというわけですね。それもデータドリブンな経営を実践する上で重要な観点になりそうです。ちなみに今はどのような顧客が多いのでしょうか?

高橋氏:もともと大手製造業が多いのですが、近年はそれだけでなく、新たにDX推進部署を立ち上げ、データ分析への取り組みを開始した企業も目立ちます。具体的には「データ人材を集め、分析プラットフォームを構築して全社的な取り組みを開始したものの、自分たちの取り組みが正しいかどうか分からない。毎週ミーティングに参加してアドバイスしてもらえませんか」というような相談が増えています。

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