IoT・AI
自然災害時にICT技術はどう利用されるのか?
掲載日:2025/09/23

近年、地震や異常気象をはじめとした自然災害による被害が目立つ。災害が生じた際に大切になる情報の入手や、国や自治体がどのような対策をしているのかを確認しておこう。また企業としての対策を検討し、ICT技術をうまく取り入れていくことが大切だ。
被災地でのICT技術活用
2024年1月1日に能登地方を襲った能登半島地震では、どのようなICT技術が用いられたのか。総務省は被災者個人へのアンケート、地方自治体へのインタビューによる調査を行った。2016年4月の熊本地震における同様の調査と比較することで、最近の被災地でのICT技術活用の特徴や課題が浮き彫りとなっている。
災害時は正確な情報の入手や安否確認が重要となる。能登半島地震では、熊本地震のときよりもTVから情報を得ていた人が多いという結果が出ている。その背景には、熊本地震が午前1時半頃に発生したのに対し、能登半島地震は午後4時頃に起きたという発生時間の違いがあると分析されている。
ただし、TVを利用した割合が高いのは、比較的被害が小さかった地域に限定される。被害が大きかった地域では、テレビからの情報を利用したのは22.5%にとどまっている。
デジタルツールが発達したことで、防災アプリ、インターネット安否確認サービスなどのツールやSNSの利用割合は増加している。有事にいきなり該当のアプリやインターネットサービス、SNSを使用するのは不可能に近いため、日ごろからどのサービスを利用するかを身近な人たちと共有しておくことが大切だ。
ただ、インターネットやSNSの情報には不確かなものも多いため注意が必要だ。同調査では、SNS利用者で真偽が不確かな情報をSNS上で見かけたという人が51.9%にも及んだ。LINEのオープンチャットでの地域コミュニティで偽・誤情報が拡散され、不確かな救助情報から自治体などに出動を求める問い合わせも寄せられたという。その中で、現地に赴いたところ救助を必要とする人がいなかったというケースも多かった。
被害が大きい場所ではTVでの情報は得られず、インターネット、SNSを頼ることになる。しかし、誤情報も多いことから、今後、自治体や公共機関はどのように情報を伝達するかを考える必要があるだろう。
災害時対策

災害時には、いかに早く正確な情報を得られるかが安全を守る鍵となる。国や自治体、通信事業者などが提供しているさまざまなサービスや仕組みを知っておくことで、いざというときの行動判断につなげることができる。ここでは代表的な情報源や活用例を紹介する。
災害時のフリーWi-Fi
災害が発生したときに、公衆無線LAN「00000JAPAN」を開放する活動が行われている。無料開放する事業者は、大手通信会社、自治体、APベンダーなどで、災害時には「非常用統一SSID 「00000JAPAN」に関するガイドライン」に従い、独自に構築したWi-Fi環境を災害時ネットワークに開放できるようになっている。
川の防災情報
近年、大雨による災害が増えている。より速くリスクが分かるように、国土交通省は「川の防災情報」サイトを公開。「川の水位情報」では、全国の危機管理型水位計と河川カメラを用いて、リアルタイムでの情報を発信している。
キキクル
土砂、浸水、洪水災害の危険度が高まった際に状況を確認できるサイト「キキクル(危険度分布)」を気象庁が公開している。キキクルで警戒レベル4に相当した場合は、プッシュ型で通知するサービスを5つの事業者が実施している。
ドローン
自然災害が発生した際、道路が寸断されてしまい、被災地の状況把握が難しいケースがある。そのようなときに、ドローンの活用が期待されている。災害時のドローン活用には、状況把握のほか、行方不明者の捜索や人命救助、物資の輸送なども考えらえているが、まずは災害状況の迅速な把握のためのマニュアルが策定されている。
災害時のAI利用

防災・減災のためのAI活用の動きもある。2019年に防災基本計画が改正され、「情報通信技術の発達を踏まえ、AI、IoT、クラウドコンピューティング技術、SNSなど、ICTの防災施策への積極的な活用が必要」との記載が追加されている。
内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」では、AI技術を活用し、津波や風水害での人的被害の軽減や、災害対応機関の人手不足解消、より迅速な災害対策のための研究開発を推進。
災害時にSNS上でAIが被災者と対話して避難指示などの情報を提供したり、被災状況をAIが収集、分析したりできる防災チャットボットなどの開発を目指している。
災害はいつどのように発生しているのか予測できないものもある。IT-BCP(ITシステムに特化したBCP)とともに、正確な情報を得られるように事前に準備しておきたい。