IoT・AI
AIエージェントとRAGはどう違う?
両者の概要とメリット・デメリットを解説!
掲載日:2025/11/18

昨今進歩が目覚ましいAI技術の中でも注目されているキーワードが、AIエージェントとRAGである。両者が持つ特長は大きく異なり、用途に応じて適切に使い分ける必要がある。本稿ではAIエージェントとRAGの意味と、両者のメリット・デメリットまで詳しく解説していこう。
AIエージェントのメリット
AIエージェントとは、人の指示に基づき複数の業務を自律的に実行してくれるシステムである。質問への回答内容に応じ、ゴールへ向け最適な行動を選択できる。
ビジネス活用も盛んで、いまや顧客サポートや社内スケジュール調整など幅広い領域で実用化が行われている技術である。ここでは、AIエージェントについて、メリットとデメリットを解説する。
まずはAIエージェントのメリットについて、以下の三点を解説する。
効率性向上
AIによる自動化で、業務効率の向上が期待できる。例えば、需要を先読みして過不足なく在庫管理を行うことが可能だ。これにより、同じパフォーマンスに必要な人員やツールなどの削減につながるため、コスト削減にも寄与する。
意思決定への活用
機械学習で大量のデータを瞬時に処理・分析することで意思決定に活用できる。例えば金融業界であれば、市場データをAIエージェントで細かく分析することで、投資先の選定やリスク管理に活用することが可能である。
ユーザーエクスペリエンスの向上
各顧客に最適化された対応でユーザーエクスペリエンスの向上を実現できるため、顧客満足度の底上げが可能である。例えばネット通販では、過去の購入履歴から好みを推測して商品をレコメンドできる。
AIエージェントのデメリット
対してAIエージェントのデメリットは以下の二点である。
問題があるアウトプットのリスク
AIエージェントでは多種多様かつ大量のデータを扱う。そのため、データの中に個人情報などがあればセキュリティリスクにつながりかねない。また、偏った内容のデータを学習すると差別を助長するなど、倫理的に問題がある内容がアウトプットされることもあり得る。
技術的課題の多さ
高度なAIエージェントシステムを組み上げるには、機械学習に関する深い知識・スキルが欠かせない。また、自社で独自に学習・運用を行うには高性能なコンピューターと大量の電力が必要であるため、設備面でのハードルも存在する。
RAGのメリット
RAGとは、情報検索機能(Retrieval)と生成AI機能(Generation)を組み合わせた手法である。これまでのAIに活用されてきた大規模言語モデル(LLM)では、事前の学習データからアウトプットを作成する。
しかし、RAGは外部データベースから関連情報の情報検索を行い、その結果に基づきアウトプットを作成できるため、正確で状況に即した答えを出せる点が特長である。ここではRAGのメリットについて、以下の三点を解説する。
生成結果の精度向上
LLMだけでは事前の学習データしか参照できないため、古い情報や誤った情報からアウトプットが生成され、ハルシネーションが発生しかねない。しかし、RAGであれば信頼できる外部の情報源を参照するため生成結果の精度が向上し、ファクトチェックの手間も削減できる。
更新の手間を削減
LLMで生成結果の精度を向上させるには、新しい情報の再学習(ファインチューニング)が有効である。ただ、それには時間も費用もかかる。しかし、RAGなら外部情報を参照するだけで常に新しい知識を取り込めるため、更新の手間を削減できる点もメリットである。これは、コストパフォーマンスの面でも優れている。
回答のパーソナライズ化
LLMでは、参照する情報はインターネットなどで公開されている既存の情報に限られる。そのため、自社にパーソナライズ化されたアウトプットの作成には向いていない。
しかしRAGであれば、社内文書や業務マニュアルなど社内ローカルやインターネット上で見つけづらい専門的な情報も活用できるため、回答のパーソナライズ化が可能である。
RAGのデメリット
RAGのデメリットは、以下の二点である。
外部情報に出力結果が左右
RAGで参照するデータ自体に間違いがあれば、出力結果も不正確なものになりかねない。また、誤って機密情報をRAGに学習させると、RAGで生成したアウトプットに機密情報が含まれるリスクもある。
そのため、RAGに学習させるデータとそこから出力されたアウトプットの両方を十分に確認することが必要である。併せて、機密情報へのアクセス制限なども欠かせない。
オリジナリティがあるコンテンツ生成には不適
RAGでは外部から正確な情報ソースを取得し、それに基づきアウトプットを作成する。そのため、アウトプットの正確性を高めるには効果的であるが、オリジナリティがあるコンテンツ生成には不適である。
AIエージェントとRAGの強みを掛け合わせてより効果的に活用

また、AIエージェントとRAGを組み合わせた「Agentic RAG」というシステムもある。このシステムは、アウトプット生成時に事前学習データだけでなく外部からの取得データも活用できるため、AIエージェントの行動選択をより正確なものにできる。また、より多くの情報で早期に大量の学習を実行できるため、自律的に作動してくれるうえに、使用回数が増えるほど性能を向上させることができる。
AIエージェントは人の指示に基づき複数の業務を自律的に実行することで、業務の効率性向上や意思決定への活用などが期待できる。一方で、昨今注目が集まっているAI技術であるRAGは、情報検索機能(Retrieval)と生成AI機能(Generation)を組み合わせることで、生成結果の精度向上や回答のパーソナライズ化などが可能である。
クライアントには、自社で便利に活用できるAI技術として、AIエージェントとRAGの活用を提案してみるのも良いだろう。