セキュリティ

マルウェア侵入を許しても被害は最小限に
ゼロトラストネットワークを解説

掲載日:2026/05/01

マルウェア侵入を許しても被害は最小限に ゼロトラストネットワークを解説

昨今のサイバーセキュリティにおいて、マルウェアの侵入を防ぎきれないことを前提に、その被害を最小限に抑える「ゼロトラストネットワーク」。本記事ではゼロトラストネットワークの意味や構成要素、メリットまで詳しく解説していこう。

ゼロトラストネットワークとは

ゼロトラストネットワークとは、ネットワークの外部と内部いずれかからのアクセスにも脅威が潜んでいる可能性があると考え、厳格な検証を都度行う仕組みである。ネットワーク上の全てのデバイスでトラフィックやログを確認する。

近年はリモートワークの普及やクラウドサービスの利用拡大、サイバー攻撃の巧妙化などの影響で、このゼロトラストネットワークが注目されている。

ここでは、ゼロトラストネットワークと比較されやすい手法との違いについて解説していこう。

従来手法との違い

一般的に境界型セキュリティと呼ばれる従来の手法は、ネットワーク外部に境界を設けることによって、水際でサイバー攻撃を防ぐ手法である。本手法では、ネットワーク内部は安心であることを前提としているのに対し、ゼロトラストネットワークでは、ネットワークの内外を問わず全ての通信を検証対象とする点が相違点である。

VPNとの違い

VPN(Virtual Private Network)は、インターネット経由で仮想的プライベートネットワークを構築する手法である。これにより、VPN内部の通信を暗号化し、第三者による傍受を防ぐ。ただし、VPNでは一度認証されると内部全体でアクセス可能となる。一方ゼロトラストネットワークでは、ネットワーク内部からのアクセスも認証するため、内部から悪意あるアクセスがあった場合にはVPNよりも検知しやすい。

ゼロトラストネットワークの構成要素と特長

ゼロトラストネットワークの実現には、複数要素の連携が不可欠だ。以下に、安全なアクセス環境を構築するうえで不可欠な構成要素とその役割をまとめた。

上記のように、ゼロトラストネットワークは従来の境界型防御とは異なる革新的な考えに基づいている。以下では、その主要な特長を紹介する。

常時認証

一度ログインした後も、アクセスごとに多要素認証やリスクベース認証などを行う。これにより、なりすましや不正利用の抑制が可能である。また、最小権限の原則に基づき、基本的には必要最低限の情報以外にはアクセスさせない。

マイクロセグメンテーション

ネットワークを細かく分割し、各セグメント間で通信を管理することで、万一ネットワークの一部が攻撃されても全体に波及しないようにリスクを抑制できる。また、ネットワークの可視化や柔軟なポリシー適用にも有効である。

データ中心のセキュリティ思想

データそのものを守るべき主対象にすることで、データがどこにあっても一貫したセキュリティ対策を実行できる。クラウドやモバイルの普及によってデータの所在が流動化しており、データ中心のセキュリティ思想が一層重要になるであろう。

ネットワーク活動の可視化

ネットワーク上のあらゆる通信ログから、リアルタイムでトラフィックや動作を監視する。これにより、潜在的リスクやインシデントの早期発見が可能である。また、それらの可視化によってセキュリティ対策の改善も立案・実行しやすい。

セキュリティポリシーの自動化

膨大なアクセス要求に対し、システムがセキュリティポリシーに沿って即座に自動判定を行う。手動対応を減らすことで、ミスなくネットワークの保護を実現可能である。環境の変化にも柔軟に適応し、常に最適な防衛状態を維持できる。

ゼロトラストネットワークのメリット

ゼロトラストへの移行は、セキュリティの向上だけでなく、柔軟な働き方や運用管理の効率化にも直結する。ここでは、導入によって得られる具体的なメリットを三つの観点から解説する。

セキュリティの強化

ゼロトラストネットワークはネットワークの内外を問わず全てのアクセスを検証するため、境界型セキュリティでは防ぎきれないサイバー攻撃にも強固な守りを実現できる。マルウェア侵入後や未知の脅威に対しても、被害を限定的な範囲に抑えられる点がメリットである。

アクセシビリティの向上

境界型セキュリティでは、社内外の境界があいまいな状態でセキュリティを強化することは困難である。しかし、ゼロトラストネットワークでは場所や時間を選ばないため、自宅や外出先からも安全かつ快適に社内リソースへ接続できる。

設定の容易さ

ゼロトラストネットワークのサービスは、多くの場合がクラウドベースのサービスである。そのため、機器の設置工事や細かな設定をせずとも導入できる。また、管理画面から全社的なルールの一括適用もできるため、拠点ごとの個別対応は必要なく、拠点追加や組織変更にも柔軟に対応可能である。

ゼロトラストネットワークのデメリット

一方、ゼロトラストネットワークはデメリットも存在する。まずは導入・運用コストの観点だ。

ゼロトラストネットワークを新規導入するには、既存のネットワーク構成を根本から見直す必要があり、初期費用や月額の利用料金が増加する可能性がある。そのため、中長期的視点で費用対効果の検討が不可欠となる。

また、運用担当者の負担もデメリットになるだろう。ゼロトラストネットワークの適切な運用には高度な専門知識が求められるため、専門性が高い人材を確保できていないと運用に影響が出かねない。

ゼロトラストネットワークでサイバー攻撃後の回復力を高める

ゼロトラストネットワークとは、ネットワークの外部と内部いずれかからのアクセスにも脅威が潜んでいる可能性があると考え、厳格な検証を都度行う仕組みである。

常時認証やマイクロセグメンテーションなどが特長で、セキュリティの強化やアクセシビリティの向上につながる点がメリットである。

クライアントには、自社セキュリティの強化だけでなく、サイバー攻撃後の回復力を高める手段として、ゼロトラストネットワークの活用を提案してみるのもよいだろう。