セキュリティ

AIサーバーの活用には冷却が必須
適切な2つの冷却手法を紹介

掲載日:2026/6/16

AIサーバーの活用には冷却が必須 2つの冷却手法を紹介

AI開発・運用に特化している「AIサーバー」。データ処理能力は高いものの放熱量が多く、パフォーマンスを維持するためには適切な冷却が欠かせない。本記事ではAIサーバーを冷却する必要性や手法の選び方まで詳しく解説していこう。

AIサーバーの活用には冷却が欠かせない背景

AIサーバーは、人工知能の開発・運用に特化したサーバーである。一般的なサーバーのプロセッサーにはCPUがよく使われるが、AIサーバーでは並列処理に強みがあるGPUが多数搭載されている。そのため、大量のデータを高速で並列処理でき、AIモデルの学習・推論に適している。よって、画像認識・自然言語処理・音声解析・需要予測など高度なAI処理においても、短時間で精度が高い結果を得られるであろう。

ここでは、AIサーバーの活用に冷却が欠かせない背景について、以下の2点を解説する。

AIサーバーの需要が拡大

Global Market Insights Inc.(米国)の報告によると、AIサーバーの世界市場規模は2024年時点で1,280億ドル、2034年には1.56兆ドル規模に達すると予測されており、年平均28.2%という驚異的なペースでの急速な市場拡大が見込まれている。

この爆発的な需要増を牽引しているのが、生成AIの急速な普及と大規模言語モデル(LLM)の発展だ。現在、あらゆる業界でDXが推進され、クラウドサービスを介したAI活用が日常化する中、企業が扱うデータ処理量は指数関数的に増大している。その結果、これら膨大な演算を高速処理できる高性能GPUを搭載したAIサーバーが現代のビジネスインフラとして不可欠になっている。

パフォーマンス維持の要は冷却技術

冷却技術はデータセンターの安定稼働に欠かせない。なぜなら、AIサーバーやその周辺機器は大量のデータを高速で並列処理できる半面、大量の熱が発生しやすいからである。その熱を放置すると、処理能力の低下だけでなく、場合によっては機器の故障につながる。その結果、AIサーバーの稼働時間が減少することで業務の遂行に影響を与えかねない。

そのような事態を防ぐためにも、AIサーバーを適切に冷却し、パフォーマンスを維持する技術が求められている。

AIサーバーの冷却手法:空冷

空冷方式の種類について、導入コストを抑えやすく、従来のデータセンターで最も広く普及しているアプローチの2点を解説する。

自然空冷

自然空冷は、空気の温度差によって対流を発生させることで機器を冷却する手法である。ファンなどの機械装置を必要としないため消費電力は少ないものの、放熱の効果も限られてくる。そのため、熱伝導率の高いヒートシンク(冷却部品)と組み合わせて活用されるケースが多い。

強制空冷

強制空冷は、ファンで気流を人工的に生み出すことにより、発熱部の熱を強制排出する手法である。自然空冷よりも冷却性能が優れているものの、電力消費の増大や騒音の発生に注意する必要がある。

AIサーバーの冷却手法:水冷

空冷の限界を超える圧倒的な熱処理能力を持ち、次世代インフラの主流とされる技術である、水冷方式の種類について、以下の4点を解説する。

伝導冷却

伝導冷却とは、CPUやGPUなどのプロセッサーに冷却プレートを直接接触させることで熱を取り除く方式である。プレート内部に水を通し、その水が熱を受け取ってからラックなどで一旦冷ます。その後も再度循環させることで、継続的に熱を排出し続ける。

対流冷却

対流冷却とは、冷却液で満たした液浸ラックに発熱部を直接浸すことで冷却する手法である。冷却液には、シリコーンオイルなど絶縁性の不活性液体が採用される。熱を帯びた液体はラック上部に移動するため、それをポンプから排出し、ラック外や別フロアの熱交換器で冷やしてからラックに戻す。

沸騰冷却

沸騰冷却とは、沸点の低い液体に発熱部を浸し、その液体が気化する際にAIサーバーの熱を奪う冷却手法である。冷却コイルで蒸気を液化すれば、その液体を再利用できる。

ハイブリッド冷却

ハイブリッド冷却(リアドアクーリング)とは、水冷と空冷を併用する冷却手法である。ラック背面の扉に熱交換器を設置し、サーバー後方から排出される熱を瞬時に冷却することで、冷却効果を高める。

AIサーバーの冷却手法を選択する基準

ここでは、自社の設備環境や将来のビジネス計画に合わせ、最適なシステムを見極める基準について解説する。

サーバーの規模

一般的に、空冷よりもコストはかかるものの、水冷の方が効率良く冷却できる。そのため、大規模なサーバーであれば、冷却効率に優れた水冷が適している可能性が高い。一方、中小規模のサーバーであれば、コスト重視で空冷が選ばれるケースも珍しくない。

また、規模が大きくなくても負荷が大きい演算処理が必要であれば、コスト以上に冷却効果の高さを重視すべきケースもあり得る。

サーバーの密度

サーバーの密度が高い場合は熱がこもりやすいため、冷却効果が限定的な空冷では対応しきれないケースが多い。そのため、一般的には冷却効果が高い水冷が向いている。特に、AIサーバーはGPUを高密度に配置していることが多く、パフォーマンスを維持するために水冷が採用されるケースが増えてきた。

ただ、サーバー密度が高くなければ、コスト面を考慮して空冷が採用されることも少なくない。

サーバーの拡張性

AIサーバーを用いるデータセンターでは、ビジネスのフェーズや商売の季節特性によってサーバー台数や処理能力の増強・縮小が必要となるケースも想定される。そのため、柔軟にサーバーを拡張・縮小できれば、コストと冷却効果の両面において常に最適な状態でサーバーの冷却を実施できるであろう。

特に、将来的な事業規模拡大や技術進化を見込むのであれば、拡張性は見逃せないポイントである。

AIサーバーのパフォーマンスを維持するためには適切に冷却を

AIサーバーは人工知能の開発・運用に特化したサーバーで、データ処理能力は高いものの放熱量も多い。そのため、冷却を確実に実行しないと機器の性能低下や障害発生につながりかねない。

AIサーバーの冷却方法は空冷と水冷の2つに大別され、前者はコスト面、後者は冷却効率に優れている。冷却方法を決定する際には、サーバーの規模や密度などが着目点である。自社のクライアントには、AIサーバーの効果を高めるポイントとして、冷却手法の見直しを提案してみるのも良いだろう。