IoT・AI
まずは投資対効果が見えやすいところから取り組みを開始することが重要なポイント
日本クラウドコンピューティング株式会社 代表取締役社長 清水 圭一 氏
掲載日:2026/6/23

もはやAIは業務効率化のツールにとどまらず、企業経営を支えるインフラとして機能し始めている。特に中小企業では、身近な業務への活用から投資対効果を実感しやすく、迅速な変革につながる可能性が高い。しかし、実際にはどこから導入し、どのように成果を引き出すべきか分からないケースも多いようだ。そこで、日本クラウドコンピューティング株式会社の代表取締役社長として中小企業に特化したITコンサルティングを行う清水圭一氏に、実践知に基づくAI利活用のポイントを聞いた。
AIの果実を刈り取るにはどこから取り組むべきか
BP:利活用を巡る、大企業と中小企業の格差を指摘する声が少なくありません。こうした中、清水さんは自社サイトなどで中小企業に特化したAI利活用のヒントを積極的に発信されています。本題に入る前に、従業員50名以下に特化したITコンサルティングというビジネスを立ち上げられた理由からお聞きしたいと思います。
清水 圭一氏(以下、清水氏):私は大学卒業後に就職したIT企業で長くエンタープライズ営業を担当してきましたが、数百億円規模のプロジェクトの場合は携わるスタッフも多く、効果が見えるのは何年も先の話になります。一方、システム部門を持たないような中小企業の方とお話しすると状況は全く異なるわけです。得てして経営者自身が担当者というケースもあり、そのスピード感は大企業とは比較にならないほど早いのです。こうした中、むしろ中小企業の方が意義ある仕事ができるのではないかと強く感じました。従業員50名以下という数字自体に大きな意味はありません。システム部門を持たない企業の目安という意味合いが大きいですね。
また、私が今の会社を立ち上げた2010年当時、SaaSに代表されるクラウドサービスの台頭期であったこともその判断を後押ししました。クラウドサービスの最大の特長は、これまでエンタープライズ企業にしか使えなかったようなツールを中小企業も月額課金で使えるようになった点にあると考えています。AI利活用についてもそれは同じです。中小企業だからこそスピード感ある導入が可能だという観点から提案を続けています。
BP:清水さんが生成AIに注目されたのはいつ頃のことですか?
清水氏:自社の業務にAIを使い始めたのは2023年頃です。実際に使い始めると、例えば会計システムへの入力で分からない点があった際にも、AIに聞けばサポートに問い合わせるまでもなく解決できてしまうわけです。その可能性にはすぐに気づかされました。
BP:AI利活用が「バズワード化」する一方、どこから手をつけるべきか悩む企業は少なくありません。導入プロセスを具体的に教えていただけますか?
清水氏:中小企業の導入支援で常に私が心掛けているのは、まずは身近なことからAIに仕事を任せてみるという観点です。OCRによる経費精算の自動化はその一例です。特に経営層の場合、毎月の経費精算に1時間以上掛けていることも珍しくありませんから、投資対効果の明示が可能です。また、業務マニュアルの整備も第一歩としておすすめしているAI利活用の一つです。中小企業の場合、人事労務の業務マニュアルが用意されているものの、データ更新が行われていないために実際は使われていないというケースも珍しくありません。こうした場合、生成AIに既存マニュアルを読み込ませたうえで、修正点を音声入力することが有効です。順序を気にすることなく思いついたことから入力すれば、AIがそれを上手にまとめてくれます。業務マニュアルをアップデートしておくことで、AIとの対話による検索が可能になることも注目したいポイントです。
法務分野における活用もその一つです。中小企業は弁護士との顧問契約を結んでいないことも少なくありませんが、その結果、契約書の不利な条文を見落とすなどのリスクが否めません。顧問弁護士の費用は月5~10万円が一般的です。スポットでチェックを依頼することもできますが、この場合、一案件につき2~3万円が相場です。AIであれば、条文を読み込ませるだけでそのリスクを的確に洗い出すことができます。
これらの提案に共通するのは、投資対効果が明確である点です。1人の経費精算に1時間掛けていたなら、従業員50名の企業は50時間の省力化が可能です。マニュアル整備は、多くの中小企業が直面している属人化の解消に大きな役割を果たすはずです。まずは投資対効果が見えやすいところから取り組みを開始することが重要なポイントになります。

データドリブン経営にもAIが果たす役割は大きい
清水氏:経営計画書の作成もおすすめしたいと思います。従業員50名以下の中小企業の場合、経営計画書を作っていないことも珍しくありません。目先の仕事への対応に追われて手が回らないのは仕方ないことですが、経営計画書を作成することで見えてくる課題は少なくありません。しかし、これもAIに決算書を読み込ませることで簡単に作成できてしまうのですよ。「交際費が多すぎる」など経営者にとっては耳が痛くなる指摘も多いのですが、当社の顧客の場合、AI利活用をきっかけに経営計画書を作成し、経営判断に取り入れるようになったというケースも多いですね。
BP:DXではデータドリブン経営が重要視されていますが、特に中小企業がそれを実現するためには、データを分析してビジネスに反映することができる人材の確保が難しいという課題がありました。それだけに、今後データ利活用の領域でAIが果たす役割はかなり大きくなりそうですね。
清水氏:まさにそのとおりです。具体例を挙げると、経営計画書の次のステップとして人事考課におけるAI利活用を提案しています。中小企業の場合、従業員の評価において経営者や上司の主観が大きなウエイトを占めることがあります。それを全て否定するつもりはありませんが、従業員が安心して働き続けるうえでは「正当に評価されている」という実感が重要です。AIによる客観評価と人間による主観評価の併用は、従業員の定着率向上において大きな意味を持つはずです。
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