IoT・AI
日本が目指すAIの基本計画とは?
掲載日:2026/09/15

2026年7月14日に「人工知能基本計画」が閣議決定した。これは、2025年に閣議決定したAI法の18条第1項に規定されている計画だ。日本政府はどのようにAI戦略の方向性を定めているのだろうか。人工知能基本計画を簡単に見ていこう。
AI法とは
2025年12月23日に「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」いわゆる「AI法」が閣議決定された。
日本におけるAIの開発や活用が遅れていることや、多くの国民が抱えるAIへの不安を解決するために成立した法だ。目的は国民生活の向上と国民経済の発展としており、経済社会と安全保障上で重要な研究開発を保持し、国際競争力を向上させるため、基礎研究から活用までを総合的・計画的に推進させる。
世界のモデルとなる法制度を構築し、「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」を目指している。
「人工知能基本計画」
人工知能基本計画は、AI法の18条第1項に規定され、2026年7月14日に閣議決定した。スローガンには「日本AX、より強く、より豊かに」を掲げている。
人口減少や賃金停滞などの課題を解決するためにAIの利活用を促すことが目的である。AI活用の機運を高めるために、政府が自らガバメントAI「源内」を通じたAI利用環境を構築して、約18万人の政府職員が生成AIを利用可能とする予定だ。
AI活用を進める背景には、エージェント型AI市場の急速な伸長があり、世界各国で産業や行政、研究開発、安全保障など広範な分野で業務を自律的に回す基盤が構築されはじめていることがある。もはや、社会全体でAIを使いこなす実装能力が不可欠となっているのだ。
政府は、日本の勝ち筋として、医療・金融・建設など特定業界の業務に特化したAI「バーティカルAI」とロボティクスや製造装置など、物理空間のハードウェアと連動して動作するAI「フィジカルAI」の実装による「AX(AI Transformation)」を挙げる。
AIによって起こり得る技術的、社会的、安全保障上のリスクについては、日本型の新しい統治・管理モデル「責任あるアジャイル・ガバナンス」で対応するとしている。
「4原則」と「4つの基本的な方針」
人工知能基本計画では、AI関連技術の研究開発・活用の推進に関して「4原則」と「4つの基本的な方針」を定めている。
4原則
人工知能基本計画において、AIのイノベーション推進と安全性の確保を両立させるために掲げられている「4原則」は以下のとおりだ。
- イノベーション促進とリスク対応の両立
人とAIが協働し、イノベーション促進とリスク対応の両立を徹底する。 - 挑戦と学習
あらゆる主体が無謬性(誤りがないこと)や前例踏襲にとらわれずに、「まずやってみる」という精神を増進する。試行錯誤を通じて学習しながら段階を踏み、本質的な課題に取り組む環境や文化を醸成する。 - アジャイルな対応
永遠のベータ版(完成品ではなく、常に進化し続ける)として、PDCAサイクルを循環させ、物事に柔軟かつ迅速に向き合うアジャイルな対応を志向する。 - 内外一体での政策推進
日本が多様なAIイノベーションの結節点となるために、国内外一体でAIに関わる政策を推進していく。
4つの基本的な方針
4原則を踏まえ、社会全体でAIの実装と変革を推進していくための骨組みとなる「4つの基本的な方針」は以下のとおりだ。
- AI利活用の加速的推進(「AIを使う」)
積極的にAIを利活用することで、AIイノベーションの基盤となるデータの集積・利活用、組織を越えたデータの共有を促進することで、AIの徹底的な利活用と性能向上を実現する。 - AI開発力の戦略的強化(「AIを創る」)
インフラからアプリ、物理空間との接続を含むAIエコシステムの開発を進め、有機的に組み合わせることで「信頼できるAI」を開発する。 - AIガバナンスの主導(「AIの信頼性を高める」)
AIの適正性を確保するガバナンスを構築し、AIの利活用と技術革新の好循環を実現する環境を構築する。日本は国際的なガバナンスの構築を主導する。 - AI社会に向けた継続的変革(「AIと協働する」)
AI人材の育成・確保や人とAIの役割分担を模索し、AI社会を生き抜く「人間力」を向上させる環境を構築する。
具体的な取り組み
「AI利活用の加速的促進」「AI開発力の戦略的強化」「AIガバナンスの主導」「AI社会に向けた継続的変革」の側面から具体的に取り組みを行っている。素案に掲載されている取り組みの中から、一部を紹介する。
AI利活用の加速的推進
政府自らが率先して、AIを適正に調達し、安全・安心な利活用を推進。ガバメントAI「源内」をオープンソース化し、自治体のAI導入支援を進める。また医療・ヘルスケア、介護、金融、教育などのあらゆる分野においてもAIの開発・実証・導入・社会実装を促進している。
AI開発力の戦略的強化
日本国内のAI開発力を強化すべく、データセンターの整備、データ基盤および情報流通基盤の高度化、効率的な電力・通信インフラの整備などを進めるとしている。またスーパーコンピューター「富岳」の次世代のフラッグシップシステムなど、AI時代に対応したHPCI(革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ)の高度化を推進する。さらに、オープンソース・オープンウェイトのAIモデルを含む、信頼性の高いAIエコシステムを構築し、日本のリーダーシップのもとで国際的ネットワークを形成する予定だ。
その他、多様なロボットの強化、育成を進め、また、AIを利活用した研究への支援、計算資源やデータ基盤などの一体的な高度化を行い、AI for Scienceの取り組みの推進も掲げている。
AIガバナンスの主導
行政がAIエージェントを導入する際のルール作りを進め、適切な利活用の推進と周知徹底を図る。同時に、AIを悪用したサイバー攻撃の危険性が高まる中、重要インフラ事業者などへの対策強化に関わる注意喚起や人材育成支援などに取り組む。
AI社会に向けた継続的変革
中堅・中小企業を含む組織における、DX・AI利活用の取り組みを可視化し、人材の育成や確保を進める。AIの利用に関わる知的財産権侵害対策やパブリシティ権、人格権などのガイドラインを作成する。
まずは利用するところから

政府は、信頼のおけるAIエコシステムで世界をリードすることを目指しているが、現時点では、日本のAI利活用が他国より進んでいるとは言い難い。この状況を打開するため、まずは政府や自治体から積極的にAI利用を広げていく計画だ。その先では、民間企業がいかにAIでビジネス改革を進めていけるかが問われていくだろう。