セキュリティ
サプライチェーンリスク管理(SCRM)とは
掲載日:2026/09/18

自然災害や紛争、為替変動などのリスクが生じると、直接影響を受けるのは一部の企業であっても、間接的な影響がサプライチェーン全体に波及することがある。そこで、サプライチェーン全体でさまざまなリスク管理を行うSCRMでは、IT技術の利用による問題解決が期待されている。
SCRMとは
サプライチェーンとは、商品の企画・開発の段階から、原材料・部品などの調達、生産、在庫管理、配送、販売までのプロセス全体を指す。
SCRMは「サプライチェーンリスク管理」または「サプライチェーンリスクマネジメント」の略。サプライチェーン内に潜む脆弱性を見つけて対処するプロセスのことをいう。SCRMを実施することで、企業の運営や評判、財務実績などに対するリスクを最小限に抑えることができる。
サプライチェーンのリスク
リスクの発生要因は多岐にわたっており、自社でコントロールできるものから外部環境の不可抗力によるものまで存在する。サプライチェーンの寸断を防ぎ、迅速に復旧するためには、以下に挙げる代表的な四つのリスク要因を事前に把握・分類しておくことが重要だ。
環境的リスク
地震や水害などの自然災害は局所的だが、被災地からサプライチェーンを伝って全体に波及する。例えば、東日本大震災の際には、自動車の電子部品を扱うメーカーの工場が被災し、部品を供給できなかったことで、1次サプライヤー、完成車メーカーへと連鎖的に影響が広がった。
新型コロナウイルスの感染拡大も自然災害に分類される。コロナ禍では、渡航・外出制限などによって生産活動や物流の停滞が生じた。
地政学的リスク
テロや戦争、政情不安などの地政学的リスクもサプライチェーンを大きく揺るがす。例えばウクライナ侵攻では、穀物輸出の停止や天然ガスの供給制限などにより、食品、化学、エネルギー産業に大きな影響を及ぼした。中東情勢の緊迫化によって生じた、原油・LNGなどの海上輸送の遅延は、製造業のみならず小売店にも影響が波及している。
地政学的リスクは物流の混乱やコスト高騰などを引き起こし、サプライチェーンリスクにつながる。
経済的リスク
世界的な経済危機や急激な為替変動、原材料価格の高騰などが企業経営に直接的な打撃を与える。また、取引先の経営悪化や破綻による調達ルートの途絶、急激な需要変動に伴う過剰在庫や欠品リスクもこれに該当する。なお、前述した環境的リスクや地政学的リスクが波及した結果、二次的な問題として深刻な経済的リスクを引き起こすケースも多い。
技術的リスク
サイバー攻撃やシステム障害などが挙げられる。注文・在庫・流通の管理とデジタルシステムや通信テクノロジーは切り離せない。ランサムウェア感染やサプライチェーン攻撃などを受けると、その影響はサプライチェーン全体に波及する。
SCRMのフレームワーク
SCRMを単なる一時的なトラブル対応で終わらせず、組織的な成果へとつなげるためには、体系化されたフレームワーク(管理手順)に沿って段階的に取り組むことが不可欠だ。組織として確立しておくべき基本的な「四つのステップ」について解説する。
【ステップ1】 特定
影響を及ぼす可能性がある潜在的な問題や弱点を、サプライチェーン全体で特定する。サプライヤーの所在地や輸送ルート、政治的安定度、気象パターンなど、内部と外部要因を考慮する。
【ステップ2】 評価
脆弱性を特定後、問題がどの程度の割合で起こり得るのか、サプライチェーンのリスクが起きた場合に短期的・長期的にどのくらい影響があるのかを判断する。そのために、データと調査によってリスクをスコアリングする。必要に応じて専門家の判断を仰ぐ。
【ステップ3】 軽減
リスクが判明したら、最も重大なリスクから、対処するためのストラテジーを打ち出す。
在庫管理の改善、コミュニケーションの強化、ソリューションへの投資、緊急時対応計画の策定などを行う。
【ステップ4】 監視
SCRMは継続的に行うことが重要だ。サプライチェーンのオペレーションを監視し、セキュリティポリシーやSCRMの手順を定期的に見直すことが望まれる。これには、主要業績評価指針の追跡、サプライヤーとの強固な関係の構築、利害関係者の関与などが含まれる。
ITでサプライチェーンリスクを解決
国境や組織を越えて広がるサプライチェーンのリスクを手作業だけで管理することには限界がある。そこで重要となるのが、最新のIT技術やデジタルツールの活用によるデータのリアルタイム収集、分析や業務処理の自動化だ。ここでは、SCRMで有効に機能する主なIT技術を解説する。
追跡と監視
センサーやGPS、IoTなどのデバイスを使って、製品ライフサイクルの各段階でリアルタイムな情報を収集する。
あらゆるポイントで収集したデータから、潜在的なリスクや業務改善のポイントなどを洗い出せる。
オートメーション
自動化ツールとロボティクスで人的エラーを減らし、サプライチェーンの効率を高める。環境的リスクなどによって人が立ち入ることができない場所でも、自動化システムやロボットであれば作業できる。
AI
AIと機械学習のアルゴリズムで膨大な量のデータを分析し、最適な輸送ルートを特定したり、潜在的な矛盾などを浮かび上がらせたりすることができる。シミュレーションソフトウェアによってリスクを予測し、緊急時の対応計画を策定する。
クラウド
データの保存、共有、サプライチェーン全体のコラボレーションを容易にする。
SCRMのメリット

SCRMを採り入れると、リスクが生じたときに迅速に対応できるばかりではなく、サプライチェーン全体を見直すきっかけにもなる。非効率な領域や無駄を特定し、コスト削減につなげられる可能性がある。
潜在的な問題を早期に特定し、処理することで、リスクが生じたときの高額なリコール費用などを回避し、企業の評判を落とさないで済む。
サプライチェーン全体で、予期せぬリスクが生じても持続的に業務を続けられる体制づくりを目指したい。