IoT・AI
生成AIが及ぼす人間の記憶や思考能力への影響
掲載日:2026/9/29

生成AIは、もはや誰もが気軽に使えるツールになりつつある。日常的に生成AIに質問したり、相談したりという人も多いようだ。しかし、気になるのは生成AIが人間の記憶や思考能力に及ぼす影響であり、さまざまな研究機関の調査から、ネガティブな影響だけでなくポジティブな影響まで判明しつつある。本記事ではこれらを踏まえて生成AIとの付き合い方を論じていく。
生成AIに「相談」する人が増えている?
NTTドコモ モバイル社会研究所が2026年2月に行った調査では、生成AIの利用率が51%に達し、過半数を占めた。2025年の同時期に実施した調査では27%だったことから、1年でほぼ倍増していることが分かる。
また、内閣府の消費者委員会も2026年2月に生成AIに関するアンケート調査を実施している。対象は「10代」から「70代以上」までの各年代、男女103人ずつ計1,442人の生成AI利用者だ。この調査では、10代女性の52.4%が生成AIの使用目的に「悩み相談」を挙げている。
日常生活での使用目的を複数回答で尋ねると、「悩み相談」は「情報の検索・リサーチ」、「文章の作成・編集」に次いで、23.3%で3位となっているほか、10代女性では2位、20~50代女性と30代男性で3位となっている。
人間関係に関するAIのアドバイスを「とても信頼している」「ある程度信頼している」と回答した人は全体で38.6%だった。
この二つの調査から、生成AIを利用する人は右肩上がりで増えており、プライベートでも相談事などで生成AIを頼る人も多いことが分かる。
AIが及ぼすネガティブな影響
2026年4月には、アメリカのカーネギーメロン大学、マサチューセッツ工科大学(以下、MIT)、UCLA、イギリスのオックスフォード大学の研究チームが、AIが人間の思考力に与える影響について調査結果を公開した。
調査の参加者の半数は、AIを利用せずに分数の計算問題を解き、残り半数はAIアシスタントを約10分間利用した。最後の3問は後者にもAI禁止の条件が付いた。
その結果、AIを利用した参加者は、前半の問題で好成績を収めたものの、AI禁止の問題では成績が大きく低下。AIをわずか10分間使用しただけでも、一度もAIを使用しない人より成績が悪く、解答を諦める傾向が強く出たという。
MIT Media Labなどのチームが2025年6月に行った研究では、実験参加者を「LLMを使用」「検索エンジンを使用」「ツールを使用しないで頭だけで考える」という3つのグループに分け、それぞれのグループに3回ずつ小論文を執筆させた。実験中は参加者の脳波や神経活動を測定し、実験用に構築したAIと人間が小論文を評価した。
実験結果では、自分の頭脳だけで3回作業した後に、4回目としてLLMを使用して作業したグループは、記憶をより良好に想起でき、脳の広い領域で神経活動の再活性化が示された。検索エンジンを使用したグループにも類似の神経活動パターンが観測されている。
だが、最初からLLMを使用した群は、脳内の神経活動がほかの2群に比べて弱く、執筆直後に自分が書いた文章を正確に引用する力も低かったという。
アメリカのニューヨーク市では、2026年の新年度から公立の小中学校のAIツール利用を原則禁止すると発表した。就学前から8年生(中学2年生相当)までの児童・生徒の利用を一時停止し、1年かけて検証を行うのだという。
5月には、アメリカ公衆衛生局長官が「スクリーンの過剰利用が子どもや若者の健康に悪影響を及ぼす証拠が増えている」と、警告を発している。
AIが及ぼすポジティブな影響
しかし、生成AIが思考に及ぼす影響はネガティブなことばかりではない。
ドイツのレーゲンスブルク大学が2024年に行った研究では、学生の参加者を二つに分け、独自開発したAI支援ツールを「使用する」グループ/「使用しない」グループとし、二つの異なる課題に取り組ませた。
この実験の結果、AIを「使用する」グループが「使用しない」グループよりも短時間で高品質なアイデアを発想できた。また、AIを使用すると、「知識の共有促進」「アイデア発想プロセスの迅速化」「効率性の向上」「アイデアの多様化」などが示唆され、結果に対する満足度も高かったという。
AIの適切な利用法を考える

生成AIを問題解決の初期段階で安易に使うと、自分自身で思考するプロセスが省略され、思考力や記憶力の低下を招くリスクがある。一方、自分の考えを拡張するのにAIを活用すると生産性やクオリティの双方に効果が表れる。
生成AIの本質は「言語による思考」ではなく「確率論的な計算・出力」である点を踏まえて付き合っていくべきだろう。
人間が考えるべきことはAIに頼らず、プラスアルファをAIに尋ねる。あるいは、設計は人間が行い、細かい作業をAIに任せるなど、使い方の工夫が必要になる。