IoT・AI

「AIエージェント」を使いこなすことで、
生産性は5倍にも10倍にも向上するはず
株式会社パンハウス CEO
東京大学大学院博士課程修了(松尾研究室)
・博士(工学) 岡本 弘野 氏

掲載日:2026/10/20

「AIエージェント」を使いこなすことで、生産性は5倍にも10倍にも向上するはず 株式会社パンハウス CEO 東京大学大学院博士課程修了(松尾研究室)・博士(工学) 岡本 弘野 氏

新たな業務変革の手段として期待を集める生成AI。しかし、その真価は現場で活用されてこそ発揮される。私たちはビジネスシーンにおいて、対話型からエージェント型へ進化した生成AIとどう向き合うべきなのか―。日本におけるAI研究の総本山と言われる東京大学松尾研究室で知見を広げ、AIビジネスの社会実装に取り組む株式会社パンハウスの岡本弘野CEOに、生成AIの進化と可能性、導入のポイントについて聞いた。

生成AIは「IQ150の新入社員」

BP:まずは、岡本さんが日本におけるAI研究の総本山でもある東大松尾研究室を経て、起業に至った経緯からお話をお聞きしていきたいと思います。

岡本 弘野氏(以下、岡本氏):私は理学部物理学科を卒業していますが、松尾先生の著作を読み、私自身の興味・関心とかなり近いところにあると感じたことがAIに興味を持ったきっかけです。当時、松尾研究室が企業との共同研究も積極的に行っていたことから、まずはアルバイトとして関わりを持ち、博士課程からは松尾研究室でAI画像処理をテーマに研究に取り組みました。そして、博士課程修了後に立ち上げた会社がパンハウスです。当初は画像処理を中核にしたシステム開発を手掛けていましたが、ChatGPTの登場を受け、生成AI研修と関連システムの開発に軸足を移し、今日に至っています。

BP:パンハウスさんは既に300社・累計2,000名以上に生成AI研修を実施されているそうですが、企業の生成AI導入の課題をどのようにお考えですか?

岡本氏:強く感じているのは、従来のシステムと生成AIの違いを理解することの重要性です。自動化や24時間365日の業務遂行が目的であるなら、ルール整備やRPAの方が効果的です。

私はよく、生成AIを「IQ150の新入社員」と説明しています。とても優秀で語学も堪能ですが、社内マニュアルや意思決定に至る経緯、社内の人間関係は全く知りません。その能力を発揮してもらうためにまず必要になるのは、「どこに行けばどのような情報が入手できるのか」を教えることです。

また、業務手順を教えても、新しいチャットを開くたびにリセットされてしまうようでは意味がないので、人と生成AIの会話を記憶としてプールする仕組みも必要でしょう。生成AIは従来の対話型から自律的に業務をこなすエージェント型に進化しており、この「AIエージェント」を使いこなすことで、生産性は5倍にも10倍にも向上するはずです。

BP:生成AIが理解できるようにデータを整備することが一つの課題になりそうですね。

岡本氏:しかし、それを人間が行う必要はありません。生成AIを一口に言えば「多様な情報を統合し、よしなに出力する変換機」です。AIエージェントは、机の上に並べた名刺を撮影するだけで、データベース化から、相手企業に合わせたメール文面の作成、下書きへの保存まで一気通貫で行ってくれます。送信まで任せることもできます。

生成AI導入には新たなシステムのようなものが必要だと考えている方も多いと思いますが、私に言わせればそれは逆です。実は、こうしてお話をしているさなかも私のPC上では10個ほどのAIエージェントが働き、今も返答のアドバイスをしてくれています。出張時のホテル手配でもエージェントに任せきりで、予約サイトを自分で操作することはほとんどありませんし、調べ物をするときもGoogle検索ではなくAIエージェントに訊ねています。データ基盤や、超高速処理・定型処理を担う一部のシステムを除くと、今後はデータと人の媒介役を担う社内システムの多くが不要になるのではないかと思っています。

仕組みを理解するよりも「使う」ことが重要

BP:先ほど「変換機」という言葉が出ましたが、生成AIにブラックボックス的な危うさを感じている方も多いと思います。開発者として生成AIに携わったご経験は、認識の違いにも反映されているとお考えになりますか?

岡本氏:私の開発者としての経験は「生成AIに任せるべきこと」の切り分けには役立っていると思いますが、生成AIの能力が指数関数的に進化する中、5年前と今では「出来ること」に大きな違いがあります。そうした意味では、知識が発想の制約になっていることは否めません。私にとっても、生成AIの全体像を把握することは既に困難になっているのですが、仕組みを理解するよりも実際に使ってみたうえで、何ができるのかを考えていくことが大切になると思います。

BP:生成AIが対話型からエージェント型に進化したというお話がありましたが、その可能性をどのように見ていますか。

岡本氏:まず整理しておきたいのは、「AIエージェント」という言葉の定義です。さまざまなニュアンスで使われていると思いますが、私が想定しているのは、OpenAIのCodex、AnthropicのClaude Codeといった、LLM開発ベンダーが提供するAIエージェント機能になります。自律的に作業を行うという特長は、従来の対話型AIより幅広い活用の可能性につながると感じています。

メール返信を例に説明すると、従来の対話型AIは、人が届いたメールを貼り付けて指示し、できた文面を人が送る使い方です。「承知しました」で済むメールなら時短効果はさほど大きくありません。エージェント型は、指示を受けると自分で過去のやり取りや社内資料を調べ、相手との関係を踏まえた返信を送る直前まで用意します。材料を人が集めて渡すか、AIが自分で集めて動くかの違いです。利用するプランによりますが、AIエージェントが月数千円から利用できることを考えると、費用対効果はかなり大きなものになると考えられますが、私の実感では、導入に取り組む企業はまだごく少数です。AIエージェントの導入支援ニーズはこれから急速に高まると見ています。

こちらの記事の全文はBP Navigator to Go「ニッポンの元気人」からご覧ください!

https://bp-platinum.com/platinum/view/files/bpntogo/genkijin/