Azure Stack HCIは、Azureファミリーの一つとしてアナウンスされていることから、ハイブリッドクラウドに適したソリューションとして注目されている。クラウドとの連携に優れていることはもちろんだが、導入メリットはそれだけではない。Azure Stack HCIは、旧来のHCIと比較して、高速・高性能であること、また、セキュアな運用ができ、管理がしやすくコスト面でのメリットがあるといった効果をもたらしてくれる。そこで、今回は「コスト面」「運用面」「スケールメリット」について、事例を交えて紹介したい。

Azure Stack HCIのメリットとは?

HCI(ハイパーコンバージドインフラ)は、サーバー、ストレージ、ネットワーク、そして仮想化ソフトウェアや管理ツールをパッケージ化した仮想化基盤だ。最大の特徴は、これまで一般的だった外部接続の共有ストレージ装置を必要とせず、 一般的なx86サーバーにサーバー機能とストレージ機能を統合した点にある。 スモールスタートが可能で、拡張性にも優れている点が高く評価されている。

HCIの一つであるAzure Stack HCIは、Azureサービスとハイブリッド接続できる特徴がある。またオンプレミスにある HCIをクラウドへ拡張することや、Azureポータル経由でHCI を管理することができる。もちろん、Azureファミリーの一つなので、さまざまなAzureサービスを利用できる。

Windows Server 2019 Datacenter Editionがセットアップされ、新しいプラットフォームとしても注目されるAzure Stack HCIは、従来のHCIと比較しても特筆すべきメリットが多い。今回は、導入事例から「コストの低減」「管理運用業務の効率化」「スケールメリット」について紹介したい。

導入事例1:物理サーバーを仮想化しコストを圧縮

飲食業を営むA社では、ERP(Enterprise Resource Planning)を含む17の業務システムを10台の物理サーバーで管理・運用していた。しかし、導入から5年間の運用を経たシステムは、経年劣化による深刻なパフォーマンス不足とハードウェア障害の発生が問題となっていた。

以前から取引のあるパートナー様から物理サーバーを仮想化し集約することで、管理コストと設置スペースを圧縮できるという提案を受け、HCIへのリプレースを検討。そこで最新プラットフォームであるAzure Stack HCIの存在を知り、導入にいたった。

最大の懸案事項は、現在のシステムの移行だったが、これまで10台で運用していた物理サーバーは、3ノードのAzure Stack HCIで処理できることを確信し、パートナー様の綿密な計画により移行作業は1週間ほどで終了した。テストの結果も良好で、パフォーマンスと信頼性に劇的な向上があり、価格性能の20%から30%ほどの向上が見られた とのとだ。

Windows Server 2019 Datacenter Editionのライセンスと、ハードウェアをパッケージとしたAzure Stack HCIは、低コストでHCIのインフラを構築できる。一般的なHCIソリューションと比較して、 3ノードまで10Gスイッチなしにケーブル直結で拡張できるので、大幅なコスト削減となったのだ。

Windows ライセンスだけでできるHCI
コスト削減の図

導入事例2:使いやすい無償管理ツールで管理コスト低減

B社は、全国の官公庁や自治体と提携して基幹業務システムの開発や導入サポートを行っている。事業の拡大により、提携先が増えることで運用体制をコントロールできるかという点に不安を抱えていた。システムの管理・運用費用は、人件費となりコストが見えづらい。また、管理業務が俗人化することで、効率化できないという課題もある

この不安を解決したのは、Azure Stack HCIの管理ツールだった。HCIの管理をブラウザ上で効率的に行える「Windows Admin Center」は、スマートフォンを操作するような感覚で手軽に管理できる ことを目指している。小規模から大規模のハイブリッドクラウド環境に対応することはもちろん、定期的に利用者の要望を取り入れてアップデートされている。常に使いやすさを求めて進化しているのだ。

Windows Admin Centerであれば、Azure Stack HCI の管理業務を平準化でき、管理者が変更となっても引継ぎの負担が少なくて済む。しかもWindows Admin Centerは、無償で提供されている。

自治体の新しいシステムの導入検討は、決められた予算内で可能かどうかで決まる。Azure Stack HCIであれば、導入時のイニシャルコストはもちろん、管理業務の効率化でコスト低減が可能。提携先の新規案件獲得への貢献とともに管理体制の拡充が実現した。

Windows Admin Centerの画面イメージ
Windows Admin Centerの画面イメージ

導入事例3:将来を見越した標準化とスケールアウト

物流分野で活躍するC社では、在庫管理や運行管理、配送管理といった複数の業務を一括管理するシステムを運用していた。導入から数年が経ち、基幹システムの老朽化とユーザー数の増加により、パフォーマンスの低下が課題となっていた。その他にも同社では、将来的な成長シナリオに沿った継続的なリソースを確保する必要があった。

そこでパートナー様が提案したソリューションが、Azure Stack HCIだった。

最新ハードウェアとWindows Admin Centerの活用で、パフォーマンスの向上や管理業務の負荷を低減が実現できる。スケールアウトについても各サーバーにCPU、メモリ、ディスクが搭載されたAzure Stack HCIであれば状況に応じて、容易に拡張が可能だ。

残るは、最適な拡張時期の問題だけだったが、パートナー様の管理ソリューションを組み合わせることで解決できた。既存システムのリソースの使用状況を、“見える化”する管理ソフトは、中長期計画に基づく将来予測も含めて、どの程度の規模のシステムが必要かを分かりやすいレポートしてくれる。このレポートを稟議書類として活用することで、TIの設備投資を含むスムーズな運用が可能となったのだ。

拡張性に優れたAzure Stack HCI
Azure Stack HCIの拡張展開の図

漠然としたイメージのDXをAzure Stack HCIが解決

今回取り上げた導入事例は、主に中堅・中小企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を促進する際に直面する課題でもある。DXには、どこか漠然としたイメージがあるものの基幹業務システムの課題を解決するソリューションとして捉えると、パートナー様のビジネスチャンスにつながる。そのソリューションの中心を担うのが、Azure Stack HCIであり、さらのパートナー様が持つ得意なソリューションを組み合わせると、可能性は大きく広がる。

Azure Stack HCIは、他にもさまざまなメリットがあるので、これからの好機を逃すことなく、ビジネス領域の拡大させていただきたい。