建設・土木業

業界大注目の建設DXが実現する方法とは

掲載日:2022/07/19

業界大注目の建設DXが実現する方法とは

コロナ禍の影響によって多くの企業で働き方の見直しが行われ、DXが加速しているのはご存じだろう。そのような中で、特に注目されているのが建設業界におけるDXだ。コロナ禍前から人手不足や働き方などが課題視されていた建設業界だが、DX実現に向けて具体的にどのような取り組みが必要なのだろうか。本記事では建設業界が抱える課題に触れながら、その解決方法を紹介する。

建設業界が抱える課題とは

コロナ禍による打撃を大きく受けていた建設業界だが、最近は工事が再開され、以前のような需要が戻ってきている。今後も大阪万博開催やリニア新幹線開通などが控えていることから、その需要が減少することは、余程のことがない限り考えられない。

増加する需要に対応し続けていくためには、業界全体が抱える課題解決に取り組む必要がある。ここではまず、建設業界の課題について説明しよう。

生産性の低下

建設業界の生産性は上昇傾向にあるといっても、ほかの業界と比較すると極めて低い。その理由として考えられるのは、企業規模や現場によって労働環境が異なるという建設業界の特性だ。そのため業界全体での業務の標準化が難しく、生産性の向上を実現するにはまだまだ時間がかかりそうだ。

人材不足と技術の継承問題

現在、建設業界の就業者数は減少傾向にある。少子化が深刻化している今、就業者数が大幅に増加することは望めないので、今後は同じ作業をより少ない人数で進めていくことになる。

また、技術力の高い人材を確保することはどの業界においても重要だが、建設業界ではどうしても技術力は現場経験に比例するという現状がある。今後、建設業界の労働者が減少するにつれ、必要な技術も継承されないまま途絶えてしまうというリスクが上がっていくのだ。

働き方改革への対応

昨今のコロナ禍の影響でさまざまな業務がオンライン化した一方で、建設業界ではまだまだその流れが浸透しているとは言えない。ただし、建設業界の顧客に当たる企業がオンライン化することで、建設業界もそれに合わせざるを得ないという流れもある。

このような状況下で注目されているのが、建設DXなのだ。

建設DXに必要な技術と、その効果

建設DXとは、デジタル技術を活用して建設業を改革することだ。建設DXを実現することで、少ない人手を効率的に活用し、生産性を高めることが可能になる。すなわち、現状の建設業界が抱える課題を解決するための重要な手段であるのだ。

では、実際に建設DXを実現するために必要な要素にはどのようなものがあるのだろうか。AIやICT、 IoTの導入など、さまざま考えられるところだが、その要素について具体的に見ていこう。

ICT

DX推進の基盤とも言えるICT。iPadなどのスマートデバイスやアプリケーションを用いて図面や資料をデータ化することによって、正確さが向上し、オンライン上で情報共有が可能になる。また、遠隔地から機器を操作する技術への活用ができるため、危険な現場での作業を自動化するなど、安全面の確保にも有用だ。

AI

現場の画像を分析し、構造に問題がないか計算・解析するとして期待されているAI技術。人でしか判断できないために、次のステップへの進捗(しんちょく)が遅れてしまう、などといった懸念を払拭するのに有用だ。また、先端的な映像技術と組み合わせることによって、人間が目で確認する以上に情報の高度な確認・解析が可能になる。

5G

高速で大容量な通信技術を活用することにより、遠隔地からでもリアルタイムに情報を把握したり、現場の機器を操作したりといった作業が可能になる。さらに、複数の機械を扱えるようになるため生産性向上に期待できるだけでなく、危険を伴う工事現場でも安全性が向上する。ただ、全ての場所に5Gサービスが提供されているわけではないので、利用には注意が必要だ。

クラウドサービス

まだまだアナログな情報のやりとりが残る建設業界。情報が分散し、それによってノウハウも分散するといった問題を改善するためには、クラウドサービスを活用して情報を一元管理するのも一つの手段だ。さらに、これまで現地からオフィスに情報を持ち帰って処理していたところを、オンライン上で完結できるようにすることで、時間短縮にもつながる。情報共有が容易になるだけでなく、コスト削減につながる可能性もある。

BIM/CIM

構造物を立体的な画像で示せるデジタル技術「BIM/CIM」。従来の図面でのやりとりでは、顧客との間の理解度に違いが出てしまう可能性があったが、立体的画像でのやりとりによってそのリスクを軽減できる。さらに、顧客とのコミュニケーションの回数や時間の短縮や、設計品質の向上なども大きな特長だ。また、「BIM/CIM」は、新しい環境整備に有効であるとして、国が特に重視している技術でもある。

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建設DXの実例をチェック!

実際、建設DXを取り入れることで大きなメリットを享受している企業は多数存在する。ここでは、その事例とDXを導入する際の注目ポイントを紹介しよう。

技術の組み合わせで効果を大きく

東日本で活躍する某総合建築企業では、施工状況の共有をスムーズにするためBIM/CIMの全面的な導入を進めている。その一方で、工事の進捗管理を撮影する、360°撮影可能なカメラも導入した。BIM/CIMデータは設計上必要な情報を端的に現す点では優れているが、工事現場の現状をリアルタイムかつ質感レベルまで把握することはできない。

同企業ではBIM/CIMデータと360°カメラのデータを組み合わせることで、より正確な工事現場の把握が可能になったほか、建築の知識がない社外の人間にも情報を伝えることが容易になるというメリットを感じているという。このように、場合によっては 複数のデジタル技術を導入することで、更なる効果が望めることもある。

効果を発揮するためのリサーチは十分か

道路舗装に定評がある某建設企業では、工事に使う資材の受発注を管理する専用サイトを立ち上げた。当初このサービスは受発注作業を担当する社員の負担軽減を目的としたものだったが、実際はその効果に加え、受注側・発注側共に省電力化を実現できたという。

このケースは予想外の影響が良い方向に作用した。しかし、DXは業務の構造を抜本から変革するものであるために、予想外の悪影響を及ぼすこともあり得る。事前に技術の導入目的や利用目的を明確化しなければ、期待どおりの効果は得られないだろう。

建設業界にとってDX推進は急務なもの。まずは環境整備やアナログな事務処理のデジタル化など、取り組めるところからスタートしたい。

2023年には「BIM/CIM原則適用」が、2024年には改正労働基準法の「時間外労働の上限規制」が建設業界にも適用される。ベンダーとしても、建設DXが身近になるこのタイミングで、より現実的なポイントから適切な商品やサービスの紹介を進めていきたいところだ。