コロナ禍のクラウド利用の先にあるものは?

現状のリモートワークには、さまざまな課題がある。例えば、業務連携の遅れだ。紙ベースの決裁・稟議を継続する場合、週1、2回の出勤日に合わせて回覧を進めるやり方では、決裁に要する時間は予測ができない。また、互いの顔が見えない働き方への移行は、コミュニケーションツールを業務に必要不可欠な存在に変えた。その他にもセキュリティ対策やBCP(事業継続計画)対策という観点も含め、今後も環境改善を継続的に取り組む必要性が求められている。

先に述べた課題のうち、紙ベースの決裁・稟議はクラウドサービスに置き換えが進んでいる。互いの顔が見えない働き方への移行は、Web会議やチャットなどが使えるコミュニケーションツールの利用率が爆発的に上がったことからもその価値が分かる。セキュリティ対策やBCP(事業継続計画)対策についてもクラウドサービスの活用やハイブリッドクラウドへの移行が進んでいる。

昨年3月、半ば強制的にリモートワークを導入した企業は、後追いながらも環境整備を継続し、こうした課題をクラウドサービスを活用し一つ一つ解決してきたのだ。クラウドがなければ、コロナ禍への対応はこれほど迅速に進まなかったに違いない。コロナ禍を機にオフィスの縮小を推進した企業も多く、そうした企業にとって、リモートワークは今後も重要な働き方の一つになる。

今後はクラウドを前提にしたシステム構築がより一般化することは間違いない。そこで注目したいのが、マルチクラウドという考え方だ。

マルチクラウドの考え方
マルチクラウドの考え方

マルチクラウドとパートナー様の課題

クラウドという言葉が登場した頃は、現在のように多種多様なクラウドサービスは存在していなかった。先進的な企業は、クラウドの利便性に早くから着目し、自社の閉じられたネットワークの中だけで業務に使える仕組みを構築して、プライベートクラウドとして運用していた。ところがプライベートクラウドは、構築に高い技術力やコストが求められるという課題があった。

一方、マルチクラウドは、複数のベンダーが提供するクラウドサービスをパーツとして組み合わせ、最適な環境を実現するという方法だ。例えば、本番環境とバックアップ・リカバリー環境を別のベンダーに切り分けて、可用性向上を図ることなどが分かりやすい。またIoTデータ収集用クラウドとその機械学習用クラウドを切り分けて運用するなど、用途に応じて使い分けることも始まっている。特にMicrosoft TeamsとZoom ミーティングの併用など、すでに当たり前のものとして受け入れられている。

Microsoft Teamsで利用可能なクラウドストレージ
Microsoft Teamsで利用可能なクラウドストレージ

クラウドサービスを提供するベンダーでも、マルチクラウドを促進するようなサービス連携を推進する動きが目立つ。Box、Dropbox、Googleドライブなどのファイル同期サービスをMicrosoft Teams上で共有できる機能連携はその最たる例だ。利用者にとっても、使い慣れたコミュニケーション系ツールとドキュメント系ツールを組み合わせて利用できることのメリットは大きい。

このように、一見するとエンドユーザー様の課題は、マルチクラウドによって解決されているように見えるが、パートナー様の収益が断たれるという新たな課題が浮上しているのだ。

マルチクラウドの課題はマルチクラウドで解決

このパートナー様の課題を解決するのもまたマルチクラウドだ。

例えば、紙ベースの契約をデジタルに置き換え、管理保管する導入提案で考えてみたい。契約書を作成し、効果を持たせるには、担当者が作成したテキストを社内ワークフローの中で、複数の決裁者のデジタル承認を得て、相手先に提出、その後に保管することになる。この場合のデジタル承認には、Adobe Signなど電子承認システムが思いついたとしても、それ以外のワークフローを電子的にどうするかは、提案の余地がある。

また、Adobe Signなどの電子契約システムでは、契約書はPDFなどに電子化されソリューションベンダーが提供するクラウドストレージに収納される。そのため、これまで企業が行ってきた製品・サービス別、顧客別など独自の分類ルールに従った契約書管理が行いにくくなっている。

さらに付け加えると、電子契約システム導入後も取引先の要望などにより、紙ベースの契約が並行して行われたり、取引先との関係次第では別システムで契約手続きを行うことも珍しくない。こうした多様な契約ドキュメントの一元的管理と真正性担保の両立は、今後新たな課題として浮上している。

その解決策として注目されるのが、マルチクラウドによる電子契約とドキュメント管理の切り分けだ。例えば、Adobe SignとMicrosoft 365のSharePointとの連携を考えると、この場合、電子署名ワークフローにAdobe Signを、ドキュメント保管にSharePointを利用することでルールに応じた契約ドキュメント管理が可能になる。

Adobe Sign+SharePointの連携例
Adobe Sign+SharePointの連携例

この例では、二つのクラウドサービスを使って課題を解決したが、サービスの選定から、サービス内容の理解、実際の契約、そして運用までをエンドユーザー様が業務の合間に行うことは現実的ではない。

特に管理の煩雑さは、エンドユーザー様を悩ませる最大の課題といえる。例えば、Microsoft 365は1カ月単位で契約を変更することが可能だが、Adobeなどのクラウドサービスの場合、1年単位が契約の前提条件になる。こうした、サービスを跨いだ契約変更に対応するには、管理業務を切り分けるしかない。その管理業務をパートナー様が請け負い、エンドユーザー様の利用状況を把握することで、次の課題を発見し、解決策を提案することでビジネスを拡大できる。

将来的には、各ベンダーのサービスを跨いだプラットフォーム一元化が大きな意味を持つ。ウィズコロナ時代に必要とされる製品やソリューション情報はもちろん、管理ツールや運用の効率化も重要なポイントとなる。大塚商会BP事業部の支援体制やサブスクリプション販売プラットフォーム「くらうどーる」をうまく活用することで、パートナー様のビジネスを拡大していただきたい。