ITビジネスの観点からも注目したいローカル5G

サービス範囲の拡大が順調に進む5Gも注目すべきキーワードの一つだ。リモート会議などでたびたび問題になる自宅から使用する光回線の不安定さや、私物Wi-Fiや公衆Wi-Fiのセキュリティ面の懸念を解消すると期待されている5G回線。昨年、自宅に設置するタイプのモバイルルーターが注目されたが、理由はそれだけではない。

ITビジネスの観点で特に注目したいのが、企業や自治体、教育機関がその建物内や敷地内に5Gネットワークを構築し、自営するローカル5Gだ。その運用は無線局免許の取得が必要だが、免許さえあればWi-Fiと同じように運用できるため今後、ローカルネットワーク構築にローカル5Gを利用するケースも多くなるとみられる。その最大の特長がWi-Fiと比べ、より広い範囲のカバーが容易に行えるようになる点で、工場や建設現場、農業のIoT基盤としての利用のほか、例えば大学キャンパスでは教室内だけにとどまらないLAN拡張に大きな役割を果たすことが期待されている。

ローカル5Gの運用イメージ
ローカル5Gの運用イメージ

ローカル5Gと混同されがちな5Gネットワークに、プライベート5Gがある。その違いは、前者が独自の周波数帯を利用してネットワークを構築するのに対し、後者は通信事業者が持つ周波数帯を利用し、環境構築・保守運用まで通信事業者が行う点にある。エンドユーザー様のニーズに応じてより柔軟なシステム構築が可能なローカル5Gは、用途が限られるものの、Wi-Fi代替策としても注目しておく必要があるだろう。さらに製造業や建設業ではIoTも重要なキーワードの一つだ。

またセキュリティの観点では、ゼロトラストセキュリティが今後より重要性が増すと考えられる。

これまでセキュリティは信頼できる「内側」と信頼できない「外側」に分け、外側からの脅威に対し内側のデバイスを守るという考え方が基本だった。しかしクラウドやリモートワークの普及、さらに社外コラボレーションの一般化は、この二元論に大きな影を投げかけることにつながった。こうした中、登場したのがあらゆるユーザー、デバイスによるアクセスを信頼できないものと捉え、そのつど検証を行うというゼロトラストセキュリティの考え方だった。従来のファイアウォールを基盤とするセキュリティ対策と比べると理解が難しい部分もあるが、デバイスの真正性の確認およびネットワークにおける厳密なアクセス制限、そしてネットワーク上の不審な動きのチェックを24時間365日行うというのがその具体策になる。

ゼロトラストの考え方
ゼロトラストの考え方

DXでは社内に蓄積されたデータ活用がキーワードに

Webマーケティングの分野で大きな課題になっているのが、いわゆるクッキーレスの動きだ。これまでWebマーケティングはブラウザが蓄積するクッキーに基づき、自社の広告を提供するという考え方が主流だった。個人情報保護という観点から、ブラウザが蓄積するクッキー利用への懸念が広まる中、ブラウザ側ではいわゆる3rdクッキーを排除する取り組みが進んでいる。

特定の検索キーワードなどに対し、自社製品の広告を提供することが困難になる中、改めて注目されることになったのが自社サイトへのアクセス履歴をはじめとする、社内のデータの積極活用だ。こうした中、注目したいのがマーケティングオートメーション(MA)である。

Webマーケティングにおいて、リード獲得後の顧客育成(ナーチャリング)は極めて大きな意味を持つ。そこで大きな意味を持つのが、顧客の興味や関心に応じて適切なコンテンツを配信したり、営業支援システム(SFA)などと連携し、適切なタイミングで適切なアプローチを行う施策になる。リードを分析し、適切なコンテンツ提供を自動化するMAは、その効率化や省力化に大きな役割を果たす。

BtoCをイメージしがちなMAだが、むしろ検討期間がより長くなる傾向にあるBtoBにおける顧客のフォローアップにおいて大きな意味を持つ点にも注目したいポイントだ。

DXを考える上で特に大きな意味を持つのが、企業が日々蓄積するデータの利活用といえる。その際に挙げられることが多いのが、データが部門別、業務別、利用ユーザー別に分けて保存されることに伴うサイロ化の課題である。企業が蓄積するいわゆるビッグデータの受け皿として近年注目されるのが、主にクラウドで提供されるデータウェアハウス(DWH)と呼ばれるデータ基盤である。

DWHの特長は、ストレージと高速なデータ分析ツールを一元的に提供する点にある。そのメリットは、マーケティングにおけるインサイト(洞察)抽出を例に考えると分かりやすい。インサイト抽出は一見すると無関係に思えるデータを突き合わせ、相関関係を探る地道なプロセスを経る一般的で、データ処理の待ち時間はアナリストにとり大きなストレスになる。さらに、データが有意なものであるかどうかは分析してみないと分からないという点も課題となる。そのため容量やコストを気にすることなくデータが保存できる環境は効率的な分析には不可欠な条件なのだ。こうしたニーズに応えるべく登場したのがDWHということができる。

DXの到達点として、「常にデータに基づいた意思決定ができること」、「自己変革し続けられる組織になること」と定義されることが多い。その前提になるサイロ化の解消に加え、意思決定を支援するAI構築でもDWHが果たす役割は大きく、既に多くの事例が紹介され始めている。

データウェアハウスのイメージ
データウェアハウスのイメージ

DX提案の重要なテーマが、経験と勘と度胸に頼る意思決定からデータ分析に基づく客観的な意思決定への移行にあることは間違いない。その実現において大きな役割を果たすのがMAやBIツール、DWHということになる。冒頭でも触れた通り、DX提案はエンドユーザー様の規模や直面する課題、デジタル活用の進ちょく度に応じて考えていく必要がある。この分野は、パートナー様が最も得意とする領域であり、エンドユーザー様のご要望に耳を傾け、困りごとをITの力で解決することは、これまでも継続して提案し続けてきた。特に中堅・中小企業のエンドユーザー様の場合、ドキュメントソリューションまで含めたDXを確実に支援することが、DXを推進する最短の道筋といえる。