【連載】
5Gがもたらす生活の変化(2)
5Gの普及で生活も働き方も大きく変わる
掲載日:2021/08/24
「高速・大容量」「低遅延」「多接続」という3つの利点をもつ5Gは、徐々に我々の生活になじみITビジネスへ影響を与えると考えられている。本連載の第2回では、5Gの普及が日々の生活にどのような変化をもたらすのか、また昨今のコロナ禍で大きく変わった働き方をさらにどうサポートするかを考えていく。
5Gの普及で進むIT社会の変化
4Gまでの移動通信システムでは、スマートフォンなどのモバイル端末やPCがネットワークの主役であった。5Gは高速通信を可能にするとともに、多接続により基地局一つ当たりに接続できるデバイス数が圧倒的に多くなる。そのことから「モノ」をインターネットにつなげる機能を持ったIoT機器が5Gを活用してネットワークに接続することで、IoT機器が収集するデータをやりとりする速度や、容量の向上が期待されている。
自動車を一例に見てみよう。現在、各自動車メーカーは自動運転の開発に力を入れている。しかし現状の自動運転車は、自車に搭載されているセンサーからの情報を元に運転制御を行う。そこで5Gの「低遅延」および「多接続」という利点を生かすと、周囲の環境をタイムリーに情報収集しながら、それぞれの自動運転車同士が互いに通信をして、運転制御を行うことが可能になるのだ。
ブレーキやアクセル、ハンドルなどの操作の情報を周囲の車に伝えることができれば、AIが最適な運転経路や危険の回避方法を瞬時に判断。センサーだけに頼ることなく、より安全で快適な自動運転ができるようになり、事故数が削減されると考えられている。
また、「高速・大容量」と「低遅延」という利点を生かすことで、遠隔医療の可能性がさらに広がることが予想される。現在の遠隔医療は遠隔地からの映像による診断(オンライン診断)が中心だが、5Gの高速性と低遅延を生かせば、遠隔地から医療ロボットをコントロールして手術を行える。また、オンライン診断にもIoT機器を導入することで、病気の予防や異常の早期発見が可能になる。
遠隔医療が発展することで社会全体の医療の質が向上し、都市部と地方との医療格差の是正が期待できる。
さらに「高速・大容量」を生かすサービスとして、高精細な動画配信サービスやスポーツ・音楽ライブなどのマルチアングル配信などが考えられる。現在、4Gを利用した動画配信サービスはフルHD(2K)が一般的だが、5Gならより高精細な4K映像や8K映像の配信もストレスなく行えるようになる。
また、スポーツや音楽ライブなどの生配信において、複数のアングルからの映像を同時に配信し、視聴する側でアングルを自由に変更しながら楽しむといったことも可能になる。
5Gの多接続が生活を変える
自宅の環境も5Gによってより進化する。例えば、5Gの「多接続」という利点を生かして、照明やエアコン、鍵、風呂など、自宅のさまざまな家電や設備などのライフラインをIoT化し、多くのIoT機器をネットワークに接続。自宅から離れた場所にいても、スマートフォンなどを使って自宅の家電を操作可能なスマートホームが実現できる。
「多接続」という利点は、花火大会やスタジアムなど人がたくさん集まる場所で、電波が混み合ってスマートフォンなどがつながりにくくなるといったトラブルも、大きく減らせるだろう。
ほかにも、5Gの普及は生活だけでなく、働き方にも変化をもたらす。
昨今のコロナ禍によりリモートワークで働く人が増えている。5Gの「高速・大容量」および「低遅延」、さらにVR技術を活用することで、オフィス以外の場所でもオフィスとほぼ同じ環境で働くことができるようになる。
建設現場など、今までは直接現地に向かわなければ対応できなかった業務のIoT化も予想される。ショベルカーやブルドーザーなどの建機をIoT化し、5Gに接続を行う。そうすることで建機を遠隔で操縦できるようになる。建機の遠隔操作が可能になれば、一人の建機操縦者が同じ場所にとどまったままで遠くの建設現場の業務の掛け持ちや、在宅勤務で現場仕事ができるようになる可能性がある。
このように、5Gの普及は、いわゆる働き方改革やDXの進展を強力に後押しするのだ。
ほかにも5Gの普及によって実現される新たなサービスや、利便性が向上するサービスはまだまだ考えられる。その可能性は非常に大きく、進化し続けている。5Gを上手に活用することで、自身の生活や社会を豊かにできると言えるだろう。