キーワードは「低感染リスク」。IT導入補助金には今年も注目したい

DX投資促進税制だけが2021年のITビジネスにおいて注目すべき公的制度ではない。2016年度に創設されて以来、主に中小企業のIT投資において大きな役割を果たしてきたIT導入補助金もその一つだ。IT導入提案において活用したい2021年度IT導入補助金のポイントを紹介する。

本年度のテレワーク助成は2プロセス以上が採択の前提

今年もまたIT導入補助金の公募がスタートした。4月に始まった第一次公募は5月14日に締め切られたが、7月に第二次公募が予定され、それ以降も申請状況を見極めながら公募が行われる見通しだ。

2021年度の特徴として挙げられるのは、昨年に続き新型コロナ感染症対策への補助であることは間違いない。ただし、「サプライチェーン毀損への対応」「テレワーク環境の設備」という二つの領域で大盤振る舞いした昨年と比較し、よりテーマを絞り込んだ導入補助が行われる

通常枠(A類型・B類型)に加え、今年新設された「低感染リスク対応型ビジネス枠」がそれだ。同枠はC類型(低感染リスク型ビジネス枠)とD類型(テレワーク対応型)があり、どちらも補助率は2/3以内で、ソフト導入費用・ハードレンタル費用ともに補助対象になる。まずはC類型から見ていこう。

C類型は、補助金申請額を基準にC類型-1(30万~300万円)、C類型-2(300万~450万円)に分けられる。ポストコロナを見据えたC類型による補助として想定されるのは、複数の業務プロセスを非対面化し一層の生産性向上を図るITツールの導入。具体的には、飲食店の遠隔注文システムやキャッシュレス決済システム、それらに対応する会計管理システムなどが挙げられ、ソフト導入費用・ハードレンタル費用ともに補助対象になる。

一方、テレワーク環境整備という昨年来のテーマを引き継ぐのがD類型だ。最大450万円の上限額は150万円に縮小。さらに単なるテレワーク環境整備だけでなく、2プロセス以上の非対面化を実現するソリューションが対象になる。その一例として想定されるのが「クラウド型勤怠管理システムとWeb会議システムの導入」というケース。多くの企業がすでに一定のテレワーク環境整備を終えた現状を考慮すると、クラウド型勤怠管理システムや印鑑レス、リモートアクセスなど、テレワークの次の一手を踏み出そうとするエンドユーザー様への提案に活用したい。

IT導入補助金2021の概要
IT導入補助金2021の概要

インタビュー(株式会社大塚商会 執行役員 人事総務部長 小泉 茂)

今年4月、大塚商会はいち早くDX認定を取得している。取り組みをリードした執行役員人事総務部長の小泉 茂にその狙いとパートナー様との関係構築に向けた想いについて話を聞いた。

DX認定取得の経緯について教えてください。

小泉:企業の成長や存続を図るうえで、DXは避けて通ることができない課題です。お客様からの相談に応えるためにも、まずは自分たちが認定を受けていなければ始まらないだろうというのが今回の取り組みのきっかけでした。社内でそんな話が出たのが、昨年秋のことで、同年12月に本格的に準備を開始。1月中旬に申請を行い、4月に承認を得ています。

申請はスムーズに進みましたか?

小泉:簡単という印象を受けるかもしれませんが、かなり難しいなというのが個人的な印象です。実は弊社の場合、数年前に公表している通り「お客様マイページ」新設やコールセンターのAI利用という形でDXをスタートさせていました。こうした具体的な取り組みがなかったり、全社的な体制が未整備である場合は、認定取得のハードルは決して低くないと感じています。

中小企業は、DXにどう取り組むのが正解だと思いますか?

小泉:現実問題として、大上段に「DXといわれても」というケースはかなり多いと思います。こうした場合、まずは業界内のロールモデルを設定してくださいというのが私からのご提案です。たとえIT知識が不十分であっても、業界動向については、経営者の方が誰よりもよくご存じですから、上手にITを活用している企業はすぐに思い浮かぶはずです。目標さえ定まれば、あとは道筋をつけるだけですから、そこから先はITベンダーに任せ、自らは商売の基幹に注力するというのが成功への一番の近道ではないでしょうか。また弊社は今年4月、DXを具体的にイメージし、課題やニーズの気づきにつなげられる場として「DXオフィス」を本社ビル3階に開設しています。ぜひこちらもご活用いただきたいと考えています。

経済産業省が主導するDXでは、クラウド移行促進が強く打ち出されている印象があります。一方、パートナー様の立場では、急速なクラウド移行はビジネスモデルの変革という新たな課題に直結します。

小泉:確かにDX施策ではレガシーシステム刷新やクラウド移行が大きなテーマになっています。しかし痒いところに手が届く、作り込まれたシステムをあえてクラウドに移す必要があるのかといえば、それはまた別の話です。経産省発表のDXレポートでは、レガシーシステム刷新などのメッセージは、大企業などの基幹システムを対象にしたメッセージであると受け止めています。クラウドという言葉に捕らわれることなく、本来の意味におけるDXを支援していくことがまず求められるのではないでしょうか。

近年のITビジネスでは各種支援施策の活用が大きな意味を持っています。

小泉:弊社の場合、補助金などの発表の前後、100名規模の営業支援専門部隊が関連情報をいち早く収集し、制度の勘所を押さえ、営業活動を支援しています。一人の営業担当の後ろ側のこうした仕組みはやはり大きな強みです。BP事業部はパートナー様のビジネス支援に今後より一層力を入れていきます。弊社が蓄積するノウハウの共有も含め、パートナーの皆様とのWin-Win関係を構築していければと考えています。

IT導入補助金2021の概要

前のページへ