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 仮想化ストレージベンダーの3PARをめぐるDellとHPの買収合戦は、半月の綱引きを経てHPの勝利に終わった。8月16日に発表されたDellによる3PARの友好的な買収だったが、ライバルのHPがDellを上回る買収額を示したことでたちまち行方が分からなくなる。DellとHPによる競り合いで買収額はどんどん上昇し、最終的には当初のDellの提案額である1株あたり18ドルを大きく上回る、1株33ドルでHPが買収することになった。18ドルという買収金額も、発表時点での3PARの株価の2倍近いプレミアだったから、わずか2週間で3PAR株の価値は3倍以上にふくらんだことになる。 この3PARに限らず、ストレージ分野のM&Aは決して珍しくない。昨年の夏は、NetappとEMCによるData Domainの争奪戦があり、今回同様、後から乗り込んできたEMCに軍配が上がった。Dell、HPともミッドレンジストレージ製品の中核は、それぞれが買収したEqualLogicとLefthandの製品で構成されている。今回、買収の対象となった3PARは、ハイエンドまでは行かないにしても、Equal LogicやLefthandよりも少し上のクラスのストレージベンダーである。 なぜストレージベンダーにM&Aが目立つのか。その大きな理由の1つは、仮想化からクラウドへという流れにあって、主戦場がサーバからストレージへ移ろうとしているからだろう。サーバ統合によるコスト削減を目標にスタートした仮想化技術は、より積極的な仮想化の利用による可用性や信頼性の向上、オンデマンドによる利用効率の向上へと向かっている。それを実現するには、物理アドレスに縛られず、物理容量の制約を受けない仮想化されたストレージが必要になる。が、サーバの仮想化に比べて、ストレージの仮想化は普及が遅れており、商戦もこれから本格化すると期待されている。Equal Logic、Lefthand、3PAR、いずれもが仮想化ストレージの代表的なベンダーであり、特に3PARは物理容量に依存せず容量の割り当てを可能にするシンプロビジョニングや、性能の異なるデバイス（SSD、SASディスク、SATAディスク）を混在させた階層化ストレージをいち早く提唱したことでも知られる。先進的な技術とアイデアを持つ1社であることは間違いない。 また、水平分業化が進み、各コンポーネントの標準化が進んだサーバと異なり、ストレージはストレージベンダーごとに技術的な差異が大きい。可用性や信頼性の実現や、性能の確保、さらにはストレージ拡張の方式まで、ベンダーごとに異なる。一般にA社のストレージにB社のストレージを増設するといったことはできない。たとえ容量が増えたとしても、それはA社とB社の2本立てになる（管理も二重になる）のであって、A社のストレージを拡張したことにはならない。サーバであれば、仮想マシンをA社のサーバからB社のサーバにホットムーブすることさえ、それほど難しいことではないし、サーバ管理のチップにさえ一定の標準（IPMI）が存在する。サーバに比べてストレージは、一度選ぶと、技術的な連続性という点で乗り換えが難しい。またユーザにしても、命より大事なデータを任せている以上、よほどの不具合でもない限り、動いているストレージはそのままにしておきたい、というのが正直なところだろう。 つまり、技術的にも、心理的にも、ストレージはユーザのロイヤリティが高い製品だ。ベンダーを買収した場合も、戦略的な方向転換でもない限り、大多数のユーザはついてきてくれると期待できる。顧客ベースの維持という点で、買収する側にとってストレージベンダーは、比較的リスクの低い買い物だと考えられる。これもストレージベンダーのM&Aが目立つ理由の1つかもしれない。
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