【連載】

モビリティビジネス Starter Book(1)

普及の進むeSIM、ノートPCの5G対応も進みつつある

掲載日:2021/04/20

普及の進むeSIM、ノートPCの5G対応も進みつつある

物理的なSIMカードを抜き差しせずにすむeSIMは、ユーザーが望むタイミングと場所で回線契約ができるメリットがある。また、無線WAN機能を搭載したノートPCは、Wi-Fiのあるなしにかかわらず、いつどこでもインターネットに接続できることが利点だ。ここでは、eSIMとノートPCの無線WAN対応の最新事情を解説する。

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ラインアップの拡充が進むeSIM対応端末

eSIMとは、Embedded SIMの略で、組み込み型SIMという意味である。通常、スマートフォンなどの回線契約情報は、SIMカードと呼ばれる小型のメモリーカードに記録されており、回線契約を変更する場合や新たに契約する場合、SIMカードを物理的に抜き差しする必要がある。

端末内部に組み込まれているeSIMは、ショップに行かずとも、ユーザーがその場で携帯電話事業者が提供するアプリなどを使うことで契約が可能になる。

また、同時に2つのSIMに対応したDSDS(Dual SIM Dual Standby)仕様の端末なら、通常の通信プランに海外キャリアの回線契約を追加して同時に使うということも、簡単にできるようになる。

eSIMを利用するには、端末と携帯電話事業者の両方が対応する必要がある。2021年3月時点で、日本で正式販売されているeSIM対応端末としては、2018年秋以降にAppleから発売されたiPhoneの各モデルなど、以下の製品などが挙げられる。

eSIM対応端末は、このように少しずつ増えてきているのだが、問題は携帯電話事業者側の対応だ。海外に比べて日本の通信事業者はeSIM対応が遅れており、昨年までは、eSIM(M2Mプラットフォーム向けのサービスは除く)に対応した携帯電話事業者は、楽天モバイルとIIJmioしかなかった。

しかし、2021年3月17日からソフトバンクが「ワイモバイル(Y!mobile)」ブランドでeSIM対応プランを開始した。楽天モバイルのeSIM対応プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」は、4Gと5Gに対応しており、月1GBまでは0円、1GB~3GBまでは月額980円、3GB~20GBまでは月額1,980円、20GBを超えたらどれだけ使っても月額2,980円と、かなり低価格である。

また、IIJmioのeSIM対応プラン「データプラン ゼロ(eSIM)」は、データ通信のみ対応で、音声通話は現在使っている携帯電話事業者をそのまま使うことになる。月額料金は150円で、1GBまでのデータ通信はプラス300円、それ以上は1GBごとに450円(最大月10GBまで)の追加料金がかかる。

ワイモバイルのeSIM対応プランは、新たにプランを作ったわけではなく、既存のSIM向けのシンプルS/M/Lの3種類のプランがそのままeSIMでも使えるというものだ。シンプルSは月3GBまで1,980円、シンプルMは月15GBまで2,980円、シンプルLは月25GBまで3,780円である。

ソフトバンクがサブブランドでのeSIM対応を開始したとはいえ、まだ大手携帯電話事業者はeSIM対応に及び腰になっている。しかし、総務省は2020年10月27日に発表した「アクション・プラン」の中で、各携帯電話事業者が2021年夏までにeSIMに関する指針を策定することを求めているため、今年の夏以降は、大手携帯電話事業者もeSIM対応プランを提供してくることになるだろう。

ノートPCの無線WANのトレンドは5G対応へ

ノートPCには、無線通信機能として無線LAN(Wi-Fi)とBluetoothが搭載されていることが多いが、外出先や移動中にノートPCを使うことが多いビジネスマンにとっては、それだけでは不十分だ。

メールやサーバー上の資料を確認したいと思っても、外出先でWi-Fiが使える場所を探すのは手間がかかる。しかし、無線WAN機能を搭載したノートPCなら、無線WANのエリア内ならいつでもどこでもインターネットへのアクセスが可能になる。

無線WANとは、4Gや5Gといった携帯電話通信網を利用することと考えて差し支えない。以前は、無線WAN機能を搭載したノートPCは一部の法人向けモデルや通販専用モデルのみに限られていたが、2019年頃から店頭モデルでも無線WAN機能を搭載したノートPCが増えてきた。

2021年のノートPCの無線WAN機能のトレンドは、やはり5Gへの対応だ。これまでは4G/LTE対応のノートPCが多かったが、5G対応無線WANモジュールの出荷が開始されたことで、5G対応ノートPCが少しずつ増えてきている。

5Gは、4Gに比べて通信速度が最大20倍まで向上するが、その利点を最大限に享受できるのは、やはりスマートフォンよりも画面が大きく、CPUパワーも高いノートPCである。ただし、5Gに対応するにはノートPCに内蔵されているアンテナの数を4Gのときより増やす必要があるため、設計の難易度は上がる。

すでに5Gに対応したノートPCとして、ソニーの「VAIO Z」やレノボの「ThinkPad X1 Nano」、「ThinkPad X1 Fold」、富士通の「LIFEBOOK WU2/E3」、NECの「LAVIE Direct PM」、日本HPの「HP Spectre x360 13-aw」などが登場している。現時点では、モバイルノートPCの中でもハイエンドなモデルから5G対応が進んでいるが、順次ミドルクラスのモバイルノートPCでも5G対応製品が登場してくるだろう。