【連載】

モビリティビジネス Starter Book(3)

年内にリリースされるWindows 11のビジネスチャンス。モバイルデバイスのリプレイス提案で商機をつかみたい

掲載日:2021/08/17

年内にリリースされるWindows 11のビジネスチャンス。モバイルデバイスのリプレイス提案で商機をつかみたい

Windows 11のリリースが発表された。プリインストールされたPCは、年内の提供が予定されており、Windows 10からは無償アップグレードできるのは、2022年の予定だ。そこでノートPCや2 in 1 PCといったモバイルデバイスのリプレイス需要をつかむために、Windows 11のシステム要件とリプレイス提案のシナリオを考えてみたい。

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第2回「テレワーク時代は端末のセキュリティ管理が肝要。デバイスとMDM機能を同時提案で売り上げアップ」はこちら

64bit CPU、4GBメモリ、64GBストレージがシステム要件

Windows 11のリリース発表とともに必要最低のシステム要件も公表されている。プロセッサについては、1ギガヘルツ(GHz)以上で2コア以上の64ビット互換プロセッサまたはSystem on a Chip(SoC)となっている。ブランド的には、Intel、AMD、Qualcommの製品が該当する。

メモリーとストレージについては、4GBメモリー、64GBのストレージとされた。Windows 10の要件よりも若干厳しくなったという印象ではあるが、現在発売されているノートPCや2 in 1 PCは、8GB以上のメモリー、128GB以上のストレージが搭載されている製品が主流なのでそれほど問題にはならないだろう。

注意が必要なのは、システムファームウェアについてだ。まず、UEFI/セキュアブート対応している必要があり、TPM 2.0に対応している、そしてビデオカードのドライバがWDDM(Windows Display Driver Model) 2.0以降に対応していることが条件だ。

写真はマイクロソフト公式Webサイトより抜粋

【Windows 11 のシステム要件】
・プロセッサ: 1GHz以上で2コア以上の64ビット互換プロセッサ
       または System on a Chip (SoC)
・RAM: 4 ギガバイト (GB)
・ストレージ: 64 GB 以上の記憶装置
・システム ファームウェア: UEFI、セキュア ブート対応
・TPM:トラステッド プラットフォーム モジュール (TPM) バージョン 2.0
・グラフィックス カード: DirectX 12 以上 (WDDM 2.0 ドライバー) に対応
・ディスプレイ: 対角サイズ9インチ以上で8ビットカラーの高解像度(720p)ディスプレイ

◆UEFI(Unified Extensible Firmware Interface)

一般的に古いPCには、BIOSが搭載されており、最近のPCにはUEFIが搭載されていると思ってよい。現在、Windows 10を利用しているノートPCや2 in 1 PCを調べるには、タスクバーの検索から「Msinfo32.exe」と入力して起動してコマンドの実行を選ぶと「システム情報」が表示される。「システムの要約」の「BIOSモード」という項目で、BIOSかUEFIかを確認できる。BIOSの場合は「レガシ」、UEFIの場合は「UEFI」と表示される。

◆セキュアブート

セキュアブートとは、コンピューター起動時の安全性を確保するため、デジタル署名で起動するソフトウェアを検証する機能。UEFIの機能として提供され、2013年に仕様が策定されたUEFI 2.3.1から対応している。セキュアブートの確認も「システム情報」からできる。「システムの要約」から「セキュアブートの状態」が有効になっていれば条件を満たしている。

◆TPM(Trusted Platform Module)2.0

暗号化で利用する鍵を専用チップで管理するためのモジュール。TPMには、1.2と2.0があり、2.0では機能が大幅に強化され、仕様も大きく異なっている。モバイルデバイスは、持ち運べることもあり、セキュリティ対策としてTPMの導入は積極的といえる。最近では、チップセットやCPU内のSoCに搭載されたTPM機能をマザーボード上のファームウェアと組み合わせて利用するファームウェアTPM(fTPM)が一般化している。ちなみにIntelプラットフォームであればチップセットの仕様表で「Intel PTT(Platform Trust Technology)」を確認できる。使用中のノートPCや2 in 1 PCで確認する場合は、デバイスマネージャーの中に「セキュリティデバイス」があり、その下に「トラステッド プラットフォーム モジュール 2.0」があれば、TPM 2.0が有効になっている。TPM 1.2の場合は利用できないことになる。

◆WDDM(Windows Display Driver Model) 2.0

表示機能向上のために設計を大幅に変更し、マルチスレッドへの対応や安定度を向上させた新しいドライバモデルがWDDMである。要件を満たしているかは、「DirectX 診断ツール」で調べられる。タスクバーの検索から「dxdiag」と入力して起動し、表示されたDirectX 診断ツールの「ディスプレイ」のタブを選ぶ。ドライバの「ドライバモデル」の中にWDDM 2.x(小数点以下のバージョンはそれぞれのデバイスドライバにより異なる)と表示されていれば対応している。

Windows 11のシステム要件については、リリースの発表と同時に使用中のPCがシステム要件を満たしているかどうかを確認する「PC正常性チェック」が公開された。非常に手軽で便利なサービスであったが、システム要件も微妙に変化していることもあり現在は停止されている。

Windows 11の必要最低要件は、セキュリティ対策の面では、条件が厳しくなっているものの、プロセッサやメモリー、ストレージについては、現在、最新のWindows 10が問題なく利用できているのであれば、アップグレードできそうだ。

リリースの時期については、公式サイトにおいて「アップグレードのロールアウト計画は現在策定の最終段階ですが、2021 年後半に開始し、2022 年にかけて行う予定です。デバイスによって具体的なタイミングは異なります。」とされている。

また、Windows 10 のサポートは 2025年10月14日まで継続との発表があった。パートナー様のビジネスとしては、無料でのアップグレードを薦めるするよりもWindows 11がプリインストールされたノートPCや2 in 1 PCのリプレイスを提案したいところだ。

パートナー様のビジネスチャンス
リプレイス提案のシナリオとは?

 

エンドユーザー様が、Windows 8.1を搭載したノートPCや2 in 1 PCやタブレットをお使いのようであれば、Windows 11へのリプレイスのシナリオを組み立てる時期に来ている。

シナリオの一つ目が、スペック的な老朽化によるリプレース提案。Windows 8.1を搭載したノートPCやタブレットPCは、Intel Atomプロセッサを採用していたり、メモリーが2GB、ストレージが32GBといったスペックが珍しくない。実際に利用できているかどうかの確認を含めて、Windows 11へのリプレースを提案したい。特にタブレットPCは、スペックが低い傾向にあるので積極的に提案したい。ちなみにWindows 8.1は2023年1月10日に終了となる。

二つ目は、Windows 10へアップグレードしたノートPCやタブレットPCのリプレース提案だ。Windows 10のアップグレードに要するシステム要件は、以下の通りだ。

【Windows 10 のシステム要件】
・プロセッサ:1GHz以上のプロセッサまたはSoC
・RAM:1GB (32 ビット) または2GB(64 ビット)
・ハードディスクの空き容量:16GB (32 ビット OS)または20GB(64 ビット OS)
・グラフィックスカード: DirectX 9 以上および WDDM 1.0ドライバー
・ディスプレイ: 800 x 600

この条件は、インストールできる最低条件なので、業務で運用するにはかなり無理がある。特にメモリーとストレージがWindows 11のシステム要件と同等だとしても、システムファイルを更新するアップデートに耐えられるか微妙なところだ。間違いなくセキュリティ対策を含む正常な運用は困難になるはずだ。

三つ目は、テレワーク対応デバイスとしての課題を解決する提案だ。Windows 8.1のリリース当時には、Webカメラは搭載しているものの、実用度としてはそれほど高くない。2020年以降のモデルでは、Webカメラや音源、Wi-Fi 6対応など、飛躍的に性能が向上している。この点をアピールすることで、今後のハイブリッドワークにも充分対応できる。

今となっては懐かしさすらあるWindows 8のスタートスクリーン

マイクロソフトは、Windows 10は、最後のナンバリングであるとし、WaaS(Windows as a Service)という新しい概念で運用すると発表していた。新型コロナウイルスのまん延による世界的な社会変革を余儀なくされたこともあり、大きく方針を転換したのかもしれない。

パートナー様としては、これをビジネスチャンスと捉え、エンドユーザー様の課題会解決の手段としてノートPCやタブレットPCのリプレイスを勧める好機でもある。順調にいけば、Windows 11のリリースまで、6カ月を切っている。しっかりと戦略を立ててビジネスの拡大を狙いたい。