大塚商会の販売最前線からお届けするセールスノウハウマガジン「BPNavigator」のWEB版です。
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2002年3月時点の情報を掲載しています。
製品と商品は同じもの
流通とは生産と消費を結ぶ活動を意味する。パソコンの場合、それを生産するのは、言うまでもなくメーカーであり、ショップは最終消費者に生産されたものが渡る直前の場所に位置している。オレがかつて勤務していたアキバもそんな場所の代表だ。
「お買い上げ有難うございました。またのおこしをお待ちしております」
ひとつの商品は、店員のこの言葉とともに流通過程を終える。そこに至るまでには長い道のりがあるのだが、果たして、そんな流通経路まで関心を持つ店員が何人いることやら。 オレが勤めていたアキバの有名量販店でもそうだったが、店員は目の前の商品を売るのに精一杯だ。たまにこんな質問をしてきた新人くんがいたが、回答する先輩店員の大半はうざったい態度をするばかり。
「あのぉ、先輩、メーカーの人は製品っていうけど、オレたち店員は商品っていうじゃないですか、アレってどうしてなんですか?」
生産者から消費者に至る流通過程にあって、生産者たちは自分たちが製造した品物だから製品と呼ぶ。「製品」なる呼称はメーカー出資の販売会社あたりまで続くが、そこに二次流通会社が介在してくると、同じ品物が「商品」と呼ばれるようになる。ならば、メーカーの市場介在具合が強い商品はショップの店頭に並ぶまで製品なのかといえば、はい、その通りだ。こんな説明をしてあげればいいじゃないかと思う人もいよう。が、アキバではロケットが、札幌ではそうご電器が民事再生法の適用を受けた消費不況時代、そんな知識なんざあるだけ無駄と考える先達がいても可笑しくない。知識を詰め込む暇があるなら、接客機会を増やして販売効率を向上させろと考えるのだ。大体、知識というものは際限がない。ひとつのことを教えると、次なる質問の呼び水となることだってある。以下のようにだね。
まだまだ続く素朴な疑問
「パソコンを買ってくれたお客さんに、有償のインストールみたいなことをやってあげるときがありますよね。ああした形のないものも商品なんですか?」
商品というのは物流過程で流れてくるものだけを指すのではない。ショップが消費者に直接的に無形の品物を販売することをサービスという。つまり金銭を授受する商取引の対象になるものは、すべて商品という次第だ。
「ははあ、それじゃ商品の流通経路っていろいろな長さがあるわけですね?」
左様である。パソコンの場合、地球の裏側のメーカーの工場で組み立てられたものから、アキバの店裏の一角で店員が組み立てたものまである。日本型の流通システムでは、メーカーから二次、三次という長距離流通過程を踏まえる商品まである。とくにパソコン関連商品のようにボーダーレスな商品のケースでは、ハード、ソフト、ペリフェラル、アクセサリーと流通が無茶苦茶に複雑になる。さすがにインターネットが普及するようになり、その距離は年々短くなってきてはいるが、海外企業の批判の対象になる不透明なリベートシステムも残存している。新人店員の素朴な疑問はまだ続いた。
「よく、お客さんから直販会社は親切で、ショップは不親切みたいなことを指摘されますよね。ウチあたりでも、コピー用紙を届けたり、トナーを交換しに行くようなサービスをできないものなんですか?」世はデフレスパイラルだ。ただでさえ、アキバ内の競合店と利益を度外視したシノギ合いで汲々としている。
「そこに有償サービスを発生させたら、お前、どうなるか理解できるナ」
先達店員がちょこっと声を落として囁いた。その途端に、新人店員は売場内をうろつくお客さんに向かって早足歩き。そう、慣れぬサービスを発生させれば、余計な経費で、薄利多売の商売が成立しなくなる。昔から言うではないか。餅は餅屋に任せろと。
島川 言成
パソコン黎明期から秋葉原有名店のパソコン売場でマネージャを勤め、その後ライターに。IT関連書籍多数。日本経済新聞社では「アキハバラ文学」創生者のひとりとして紹介される。国内の機械翻訳ソフトベンチャー企業、外資系音声認識関連ベンチャー企業のコーポレート・マーケティング部長を歴任。現在、日経BP社運営のビジネスサイト「日経SmallBiz」でIT業界の現状分析とユニークな提案をするコラムを連載中。PC月刊誌「日経ベストPC」では秋葉原のマーケティング状況をリポート。また、セキュリティ関連ベンチャー企業のマーケティング部門取締役、ゲームクリエーター養成専門学校でエンターテインメント業界のマーケティング講座も担当。
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