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2007年7月時点の情報を掲載しています。
コラムビジネストレンド最前線無料で利用できるオフィスソフトが登場しはじめた。
すでに、オンラインによるオフィスソフトとしては、OpenOffice.orgやグーグルが提供を開始している。また、オフィスソフトで最大シェアを握るマイクロソフトも、将来的にはオンラインでオフィスアプリケーションを提供することを目指したビジネス戦略を描いている。
こうした中で注目を集めているのが、ソースネクストが開始したウェブを通じて無料で利用できるオフィスソフト「ThinkFreeてがるオフィス」である。現時点では、βサービスに留まっているが、9月には正式サービスへと移行し、ネットワーク上に用意された1GBのストレージに、これらのソフトで作成したデータを自由に格納できるようになる。ワード、エクセル、パワーポイントといったオフィスソフトは、ビジネスシーンでは、いまや必要不可欠なツール。これらと互換性を持つオフィスソフトを、無料で利用できるというのだから、ビジネスワーカーにとっては見逃すことができないといえよう。
ソースネクストは、韓国ハンソフトの子会社であるThinkFreeと提携しており、同社が開発したオフィスソフトをウェブを通じて無償で提供する仕組みだ。ThinkFreeは、99年の設立以来、一貫してオフィスソフトの開発を行っており、日本においても、低価格のパッケージソフトとして流通していた経緯がある。同社では、これを無料で提供することで、初年度に100万ユーザー、3年後には400万ユーザーの利用を目指すという。
現在、国内で稼働しているパソコンはビジネスPCで3,400万台、家庭向けPCで3,000万台と言われている。その多くのユーザーがオフィスソフトを利用している。3年後の400万人の目標値はPC利用者全体の約6%。ターゲットとしては、実現可能な数値といえよう。また、オンラインソフトである特性を生かして、作成したデータをオンライン上で複数のユーザーが共有したり、第3者に公開するといったWeb2.0的な活用提案も特徴的だ。
とはいえ、無料提供では、いくら利用者数を増やしても収益確保は難しい。ソースネクストでは、この事業においてどんな収益モデルを計画しているのだろうか。
ひとつは、本格サービスを開始した時点において、オフラインで利用できるパッケージ版の有料頒布である。無料版はウェブ上で利用するため、どうしてもブロードバンドでの接続が可能な場所が前提となる。オフィス内や無線LANスポットのある場所ならば活用しやすいが、移動が多いビジネスワーカーには、使いにくいといわざるを得ない。いつでもどこでも使いたいというユーザーに対して、オフラインで利用できるパッケージ版を提供し、移動中やブロードバンド環境がない場合でもオフィスソフトを利用できるようにするわけだ。オフラインで作成したデータは、ネットに接続した時点で、オンラインストレージ上に格納することができるようになる。有料パッケージと無料オンラインソフトを組み合わせた提案戦略が収益確保の手段となる。
また、利用者の増加にあわせて、ストレージ容量をアップグレードできる有料サービスを用意する。さらに、将来的には広告モデルでの収益確保も視野に入れている。「広告モデルは、こちらから積極的に働きかけることはしない。だが、400万人ものユーザーが利用しているとなれば、自然と広告モデルの提案も外から出てくることになるだろう」と、ソースネクストの松田憲幸社長は語る。
これまで、低価格ソフトのラインアップや新流通ルートでの販売、スリムパッケージの導入、セキュリティソフトの更新料0円というように、ソフト業界の常識を壊し続けてきたソースネクスト。今度は、オンライン型の無料オフィスソフトによって、業界の常識を壊しにかかっているといえよう。この衝撃は、ソフト業界やユーザーに大きなインパクトを与えそうだ。ソースネクストにとっても、いよいよマイクロソフトの牙城に正面から挑む商品になるのは間違いない。
大河原 克行
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、'01年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊アスキー(アスキー)などで連載および定期記事を執筆中。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社刊)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社刊)など。
【コラム】「ビジネストレンド最前線」
・第13回 ユーザー動向調査に見る企業のIT意欲と課題 【Vol.32】
・第12回 現場指向が強まるビジネスインテリジェンスの現状 【Vol.31】
・第11回 国内PCメーカー8社がマイクロソフトに要望したこと 【Vol.30】
・第10回 マイクロソフトがもたらす日本のCRMの変化とは 【Vol.29】
・第9回 つくばエクスプレスが実現する、ユビキタスの大きな一歩 【Vol.28】
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