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2002年7月時点の情報を掲載しています。
5月に発売されたパソコン新製品から、本体価格が軒並み2−2万5000円程度値上がりすることになった。値上げの要因は、大きく3点。メモリ価格の急騰と、液晶ディスプレイの価格上昇、そして円安の影響だ。
メーカー各社によると、メモリ価格は昨年暮れに比べて調達価格が約3倍に上昇、液晶ディスプレイは25〜30%程度の上昇となっている。また、円安に関しても、部品調達のほとんどを海外製品に頼り、しかも、その取引の大半がドル建てであるということを考えると、事実上の部品コストの上昇につながる。さらに、国産メーカーはこぞって台湾、中国での生産シフトをすすめており、これも円安の影響を直接受ける要因となっている。
「これだけの値上げ要因が重なったのは、パソコン産業の歴史のなかでも初めてのこと。残念ながら今回だけは、メーカー努力ではコスト上昇分を吸収できなかった」と、ある大手パソコンメーカー幹部は漏らす。値上げを吸収しやすいように、各社とも高機能モデルの強化にポイントを絞ったが、この背景には昨今のパソコン市場の動向が見逃せない。
というのも、コンシューマーパソコンを例にとれば、家庭へのパソコン普及率が57%に達したことで買い替え需要が中心となり、目的意識を持った購入が増加。その結果、比較的高機能モデルが売れ始めるといった背景がある。主要なパソコンショップの間からも、「デジタルカメラで撮影した画像の編集をしたい、あるいはDVDを再生したい、ホームページを作成したいといったように、使用目的をしっかりともった購入が増加している」という声が聞かれる。高性能パソコンが受け入れられる土壌ができあがっていることが、パソコンの価格上昇を高機能化によって吸収しやすい状況を生み出しているというわけだ。
価格上昇の動きに対して、業界内では2つの点に注目が集まっている。ひとつは、価格上昇が低迷するパソコンの売れ行きにどう影響するか、という点だ。電子情報技術産業協会(JEITA)では、01年度第3四半期の出荷実績が、同第2四半期に比べてパソコンの平均単価が上昇したにもかかわらず増加していたという経緯を受けて、「価格上昇はパソコン
の出荷実績に何ら影響しない」と分析、日本電気大型店協会(NEBA)でも、「ブロードバンドの浸透により、最新機能を搭載したパソコンへの買い替え需要が促進されることになり、価格上昇の影響は受けない」と予測する。だが、メーカーのなかには、「少なくとも、一時的な買い控えが起こるのではないか」との懸念の声があるのも事実だ。
もうひとつは、いつまで価格上昇が続くのか、といった点だ。メーカー各社は、年明けまで値下げはないとの見方を示しており、長期化への対応を余儀なくされそうだ。「メモリなどは、これまでの価格が異常だった。値上げは単に取引価格が正常化しただけ」(大手パソコンメーカー)という声もあるだけに、この価格帯での推移となる公算が強い。しかし、JEITAでは、「年末以降、部材の価格が下がると見込んでおり、年明けには今年1〜3月に比べて4%程度の値下げになる」と予測する。業界でも大きく意見が分かれている状況だ。
いずれにしろ、今回の価格引き上げは、高機能製品のラインアップ強化とともにメーカーの付加価値戦略を加速することになるのは間違いない。値上がりのなかで、各社がいかに製品の差別化を図るかが当面の鍵になるだろう。
大河原 克行
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、'01年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊アスキー(アスキー)などで連載および定期記事を執筆中。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社刊)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社刊)など。
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