大塚商会の販売最前線からお届けするセールスノウハウマガジン「BPNavigator」のWEB版です。
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2002年7月時点の情報を掲載しています。
自動販売機的店員と個性売り出し店員
ADSL、FTTHのユーザーが急増中。ブロードバンド環境に関する質問を、秋葉原の店員は毎日にように受けている。他のエリアと比較した場合、ユーザーレベルの多様さで、秋葉原ほど範囲の広い場所はあるまい。電気街ではストアオートメーション化と同じくして、店員の接客スキルがバラけはじめている。自動販売機のような店員と個性を売る店員に二極化しているのだ。読者ならどちらを支持するだろうか?
「こちらのお店でルータを購入したのですが、通信速度があまり速くないんです。接続や設定はマニュアルの指示に従っているのですが・・・」
こんな質問をされた大半の店員は、相手のADSLに関する知識を探るところからコミュニケーションを開始する。知識十分という相手か、そうでないかで言葉遣いを変えるのは個性を売る店員が得意だ。自動販売機のような店員は、相手の要望と接客機会損失との均衡を計算して顧客接遇を決める傾向が強い。
「左様でございますか。お客様、大変失礼ですが、お近くの電話局からお客様のご自宅までどれくらいの距離がありますか?」
ADSLは回線距離による減衰が生じることはどなたもご存知だろうが、実際の距離を知っている人なんて皆無だ。ここで相手の顔色を伺うところまでは、両タイプの店員とも一致している。
「もちろんADSLが電話局から2キロ以上も離れた場合、処理能力が著しく減衰することくらい知っている。だけど電話局に確認したら、ウチは1キロ程度なんだ。ルータに問題があるんじゃないのか?」
常時接続環境で実使用できているのだから、ルータに問題があるとは到底考えられない。多少の知識のある持ち主は、概して外野席の声を気にかける傾向も強い。
個性を売れる店員数不足は残念
自動販売機タイプの店員は、説明より対処を優先し、頭の中に機器交換という言葉が浮かぶはずだ。それに対し個性を売る店員は、相手の真意を測定すべく、相手の話をさらに積極的に聞く態度を示す。
「と、おっしゃられますと・・・」
「実は、私の友人が同じモデルのルータを購入したのだが、測定テストの結果を聞くと、私より速度が上なんだ。同じプロバイダーで、ADSLも8MBbpsで契約しているのに、そんなに差が出るものなのかね?」
お気の毒な話だと思うが、現在のADSLはそういうものだ。普段の学習を怠らない店員ならば、さも同情いたしますという顔を作り、以下のように説明するだろう。
「大変お気の毒だと思いますが、現在のADSLの場合、電話局とお客様のご自宅との回線距離だけが処理速度の減衰要因ではないのです。たとえば、ご近所にISDN回線が敷設されていますと、そこからの干渉も減衰原因になるのです。電話線というものは、お客様のご自宅に届くまでの間、複数の回線が束ねられて電柱から電柱へと結ばれているのです。飛行場、幹線道路、電波塔、高圧線の鉄塔などから発生するノイズもADSLに影響を与えます」
ここまで説明しても納得されない相手の場合はどうするか。仕様書の隅から隅まで精査しているような店員が秋葉原にはゴロゴロ働いている。なぜそこまでやるのか。「機械が大好き!」が理由としか言えない。
「それくらいの速度でしたら、メタリックケーブルの信号伝達特性を利用しているADSLの規格から考えて許容範囲が原因でしょうね。自宅でテレビや電子レンジなどの家電類で実験したのですが、それらからの発生ノイズで減衰が起きます。集合住宅の場合、各部屋で使用している家電類がありますから、時間によって減衰率が変化しますね」
自身の実験結果まで話されて納得しない相手はいない。こんな個性を売る店員が不足していると感じるのは島川だけだろうか。
島川 言成
パソコン黎明期から秋葉原有名店のパソコン売場でマネージャを勤め、その後ライターに。IT関連書籍多数。日本経済新聞社では「アキハバラ文学」創生者のひとりとして紹介される。国内の機械翻訳ソフトベンチャー企業、外資系音声認識関連ベンチャー企業のコーポレート・マーケティング部長を歴任。現在、日経BP社運営のビジネスサイト「日経SmallBiz」でIT業界の現状分析とユニークな提案をするコラムを連載中。PC月刊誌「日経ベストPC」では秋葉原のマーケティング状況をリポート。また、セキュリティ関連ベンチャー企業のマーケティング部門取締役、ゲームクリエーター養成専門学校でエンターテインメント業界のマーケティング講座も担当。
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