BPNavigator to GO - コラム＞今のショップに足りないもの

　大塚商会の販売最前線からお届けするセールスノウハウマガジン「BPNavigator」のWEB版です。

2002年9月時点の情報を掲載しています。

オフィスアメニティが無線LANで向上

　無線LANシステムが売れているらしい。どんなお客さんが購入するのかとアキバの旧知に問えば、次のような答えが。
　「小規模企業の経営者ですね。既にデスクトップPCを数台導入済みで、サブマシン用にノートPCを購入するとき、それとなく無線LANの話をすると、間違いなく興味を示します」
　先進国にあって最低水準は銀行だけではない。居住空間ならば格付けはトリプルZの日本国だ。小規模企業のオフィスとて状況は同じ。狭い空間を広くしてくれるPC機器は、どれも売れている。液晶ディスプレイに続いて効果を発揮するのは無線LANだ。
　「ケーブルだらけのスパゲティ状態オフィスに導入されれば、そりゃあ、すっきりしますからね」
　その通りだ。ところで、無線LANの普及にNTTコミュニケーションズ（NTT Com）が5月から開始したサービス「ホットスポット」も一役かっている。同社は、2001年7月からIEEE802.11b準拠の公衆無線LANサービスの接続実験「Hi-FIBE」を開始、その実験の成果が「ホットスポット」だ。モスバーガーなどチェーン展開する店舗での無線LANサービスは、ことのほかメディアに取り上げられた。さらにプリンスホテル、ビックカメラなどまで、あれよあれよという間の浸透具合だ。
　こうなると、放っておけないのが他の公衆無線LANサービス事業者だ。将来的なローミング問題の発生は必至ではないか。この手はIT業界にあっては、早いもの勝ちが慣例だ。ホットスポットの場合、構内に設置された無線アクセスポイントはアッカ・ネットワークスのDSL回線やNTT Comの光ファイバ、FWAによってNTT Comのホットスポットシステムに接続される。それをOCNバックボーン経由でインターネットに接続。OCNから先のサービスプロバイダ（ISP）はどこでも構わない。

IEEE802.11aの屋外利用からユビキタス実現

　無線LANの規格から考えると、IEEE802.11bとIEEE802.11aを活用したものだ。802.11a対応の無線LANカード利用で、最大36Mbpsの接続が可能になる。現状はこれが利用可能な一部のアクセスポイントで使われることになるが、ホットスポットサービスがIT時代の店舗の付加価値向上に役立つとわかれば、対応エリアが爆発的に広がることは間違いない。
　ところで、802.11b製品と802.11a製品を検討すると、後者の対応製品数がまだまだ少ないとわかる。しかし、オレが期待するのは実は802.11aでのサービスだ。802.11aが利用する5GHz帯は、現在、屋内限定利用という原則があるが、総務省ではそれを屋外でのワイヤレスアクセスにも適用する帯域リストラクチャリング作業を進めていると某業界紙の記者から聞いた。
　802.11a屋外サービスの実現は、夢にまでみたユビキタス社会の到来を意味する。まさに、いつでも、どこでもインターネットサービスを受けられる時代になるわけだ。アキバで働く現役店員にこの話をしてみた。
　「ケータイでもそうですが、ユビキタス時代になると、ますます売りにくい時代になりますね」あれれ、諸手をあげて喜びを共有できると思ったのに・・・どうしてだ？
　「最近のケータイはカメラ付きが標準になりつつありますよね。アレを使って店内のプライスカードに記載された価格を同業他店に見せながら価格交渉するようなツワモノもいるんです」
　ユビキタス（偏在）時代に適応できる販売システムの確立が急がれる。

島川言成
パソコン黎明期から秋葉原有名店のパソコン売場でマネージャを勤め、その後ライターに。IT関連書籍多数。日本経済新聞社では「アキハバラ文学」創生者のひとりとして紹介される。国内の機械翻訳ソフトベンチャー企業、外資系音声認識関連ベンチャー企業のコーポレート・マーケティング部長を歴任。現在、日経BP社運営のビジネスサイト「日経SmallBiz」でIT業界の現状分析とユニークな提案をするコラムを連載中。PC月刊誌「日経ベストPC」では秋葉原のマーケティング状況をリポート。また、セキュリティ関連ベンチャー企業のマーケティング部門取締役、ゲームクリエーター養成専門学校でエンターテインメント業界のマーケティング講座も担当。

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