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2003年1月時点の情報を掲載しています。
最近、情報システムの新たな提供手法が話題となっている。
一般的には、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)、オンデマンド・ビジネスなどの言葉で示されるもので、これを実現する具体的な情報システムの提供手段として、IBMでは「e-ビジネス・オンデマンド」、ヒューレット・パッカードでは、「ユーティリティ・データセンター(UDC)」という名称で、関連するサービスや製品、そして壮大なコンセプトを打ち出し始めた。
では、これらは具体的にいうとどんなものだろうか。IBMが打ち出した、オンデマンド・ビジネスおよびe-ビジネス・オンデマンドを例にとって、この動きを捉えてみよう。
米IBMのサミュエル・パルミザーノCEOは、昨年10月末、300社の大企業ユーザーを対象に、オンデマンド・ビジネスの考え方を初めて明らかにした。この考えの根本は、市場の要求や変化、従業員が求めるスピードに素早く、柔軟に対応した経営ができれば、企業はもっと違ったタイプに生まれ変わることができる、というものである。
例えば、もし金融機関が即座にクレジットや税金、抵当といった項目をチェックでき、その上でローンサービスを起案できれば、住宅ローン処理手続きに必要な時間は、何日という単位から何分のレベルにまで縮小される。これによって、顧客満足度を高め、競争力を上げ、そしてコストも半分に削減できる、という具合だ。
そのためには、企業内、パートナー、サプライヤーや顧客までにおよぶ膨大なデータやレガシーシステム、カスタムアプリケーションとJavaやLinux、あるいはグリッドといった、あらゆる最新テクノロジーとの統合、さらに必要に応じてコンピューティング資源を柔軟に変更できるユーティリティモデルを活用した仮想化技術、情報システム自身がセキュリティ、ワークロードバランシング、ソフトウェアのアップグレードなどを行う自律型コンピューティングの提供が不可欠になる、という。これが、IBMの提唱するe-ビシネス・オンデマンドということになる。
もともとIBMではe-ビシネス・オンマデンドを、IBM自身がサーバ、ストレージ、ソフトを所有し、それをユーザーが必要に応じて利用できるユーティリティモデルの言葉として使っていた。電子商取引のように、一時期にアクセスが集中し、そのピーク時に合わせた情報化投資が必要とされる場合などには、こうしたユーティリティモデルは最適といえる。必要な時に、IBMの持つリソースを使ってこれを増やし、不要になれば返せばいいという仕組みだからだ。これは顧客の要求に柔軟に、そして迅速に対応できるオンデマンド・ビジネスを実現するひとつの手段といえる。
だが、今回のe-ビジネス・オンデマンドは、このユーティリティモデルだけではなく自律型コンピューティングやグリッド技術などを含めた、さらに広い意味の言葉として使われ始めた。つまり、97年に同社が発表したe-ビジネスの次世代の考え方と位置づけているのだ。
こうした考え方は、いまや各社共通のものだ。
日本ヒューレット・パッカードの寺澤正雄会長は、「当社のUDCは、IBMに18か月先がける形で、ユーティリティモデルのコンセプトを発表している」と前置きしながら、「2003年はUDCに関する、具体的なサービス、製品が続々と発表されることになる」と、03年からユーティリティモデルが本格化することを強調する。
また、米マイクロソフトの古川享バイスプレジデントも、「今後10年の間にIT環境は大きく変化する。そのなかで、データの格納方法やファイルシステムの仕組みにも変化が訪れる。世の中のあらゆるデータが社会のデータベースのなかに格納され、ユーザーはあらゆる場所やデバイスからこのデータベースにアクセスしてデータを利用するようになる」として、将来的には個人の領域にも、こうしたユーティリティ型の使い方が広がることを示している。
では、このようなユーティリティモデルが広がった時、ビジネスパートナーは、どこに差別化を求めるのだろうか。
先頃、来日した米IBMのe-ビジネス・オンマデンド担当、アービング・ラダウスキー・バーガーゼネラルマネージャーは、「すべての企業がe-ビジネス・オンマデンドを利用するということにはならないだろう」としながらも、「中小企業こそ、e-ビジネス・オンデマンドの利用価値がある。常に最新のコンピューティング環境の利用が可能ながら、最新コンピューティング技術の能力をもった人材を不要とし、自らのコアコンピタンスにリソースを集中できるからだ」と、ビジネスパートナーの領域にも大きな影響をおよぼすことを示唆する。
このビジネスモデルが登場すれば、ビジネスパートナーの役割も必然的に変わることになるだろう。差別化をサービスに求めるのか、技術に求めるのか、あるいは営業力に求めるのか、今の段階では答えは出しにくい。だが、今から、この動きを確実に捉えておくことが重要であることは間違いない。
大河原 克行
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、'01年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊アスキー(アスキー)などで連載および定期記事を執筆中。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社刊)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社刊)など。
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