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2003年1月時点の情報を掲載しています。
良債権処理、金融危機、デフレ経済など景気先行きの不透明感を象徴する言葉は、まだまだ世の中から消えそうにありません。この経済状況下、不良債権に対する取り組みは企業にとって非常に重要なものです。商取引が続くかぎり不良債権をゼロにすることは不可能ですが、そのリスクを低減することは十分可能です。10年にわたり全社的な業務改革に取り組んできた大塚商会が、与信管理でどのような成果を上げたのかをご紹介いたします。
モノを作れば売れる時代から、売れるモノが選別される時代へと、世の中は完全に移り変わった。企業は製品開発とともに、製品を売る営業マンの生産性の向上に苦心している。
営業は、受注ができても取引先の信用調査にOKが出なければ安心はできない。受注へこぎつけたとしても、取引先の信用が望めないとなれば、それまでの営業努力はすべて無駄となる。見込客の信用調査を行い、安心して取引できるか、取引限度額はいくらかを事前にチェックする与信管理は、商取引上の鉄則である。今や業界の老舗がいきなり倒産してしまうことも珍しくないのだ。
与信管理は専門の営業管理部門だけが担うのではなく、社員がお客様の変化を迅速に把握し、全社で情報共有することで未然に事故を防ぐことが大切である。営業は与信管理の重要性を十分理解しなければならないが、与信問い合わせや回収業務が大きな負担になってしまってはよくない。つまり一連の与信処理は、スピーディかつシステマティックになされ、営業社員の業務負担を軽減し、結果として生産性向上へとつながっていくものでなければならない。与信管理とは、不良債権を増やさぬよう事前に手を打ち、その芽をいち早く摘むことを含めて考える必要がある。それには全社の取り組みが必要で、決して管理部門が与信の全業務を担うわけではない。また管理部門が与信管理に固執するあまり、営業のモチベーションを下げるようなことがあってはならない。
大塚商会では、社内業務改革への取り組みを10年近く行っている。取扱商品、在庫、売掛金(25万件顧客)、借入金、人員の増加が大きな経営課題となっていたためだ。これらを適正に圧縮しなければ、CS(顧客満足度)の向上や、競争力の強化を図ることはできない。改革には販売、顧客管理、物流、購買、サービス&サポート、財務会計・管理会計など各体制による総合的な企業体質の強化が求められ、与信管理も企業体質強化の一環として実施してきた。
「与信管理の最終的な目的は、不良債権の発生率を低く抑えることにあります。不良債権の徹底管理には、大きく分けて取引前に行う与信の仕組みと、取引後の不良債権の発生率を極力抑える仕組みのふたつがあり、この双方の仕組みがうまく機能することで営業効率の向上、無理・無駄の削減と密接につながってくるのです」と同社管理本部上級理事の辻村 昌美氏(以下、辻村氏)は語る。
低迷する経済情勢下では、売掛金回収の焦げ付きや回収遅延の件数が増え続け、これを放置しておけば不良債権化し手遅れになるのは明らかである。注意しなければならないのは、その影響で営業が本来の活動業務を妨げられたり、営業の活動意欲そのものが低下してしまう点だ。取引先信用調査としての事前の与信は、営業活動の無駄をなくし、生産性の向上に寄与しているのである。
大塚商会の与信管理システムは、提携リース会社各社とWin-Winの関係で構築されている。従来は、リース契約案件は振込・入金、消込作業のすべてを各拠点単位で処理していたが、大塚商会側の窓口を1ヶ所に集中することで、双方の業務効率が大きく向上した。
また、リース会社との契約書類のやり取りも月3〜4回に増やすことで月末集中型から分散型へと移行し、業務の平準化を実現。ところでリース会社の場合は物件リース期間の5〜6年のサイトで与信限度額を設定している。一方、大塚商会の場合は1〜3ヶ月ぐらいのサイトで設定している。大塚商会ではシステム受注物件に関しては、その多くがリース契約になるが、サプライ品をはじめとするその他の売上は、通常取引契約として締め支払処理を行っている。したがって顧客の与信管理は、リース会社の与信と自社与信のふたつが必要となる。このことはビジネスパートナー様にとってもまったく同じ状況と思われる。
「リース会社の与信でOKが出ても、大塚商会の与信でNGが出る場合がままあります。これは正確かつ最新の顧客情報をどれだけ多く持っているかによるもので、膨大な数の企業情報を持つリース会社よりも、件数は少ないけれどいろいろなアンテナを張って情報を収集している大塚商会の方が、価値ある情報を持っていることがあるのです」。与信情報についてもリース会社任せではなく、自分たちの目で見て確かな情報を集めることが重要だと辻村氏は語る。今後、お客様、提携リース会社、大塚商会の3者間において、トリプルWinの関係を維持していきたい。
従来の与信依頼の場合、営業が見込客の情報を与信依頼票などに手書き、もしくはワープロ入力したものをリース会社にFAX送信し回答を待つ。与信依頼は通常1社ではなく複数社に依頼するため、同じ内容を複数社分FAXすることになる。営業にとって、与信依頼の作業は面倒である。一方、リース会社でもFAX受信した与信依頼票から内容をシステムへ入力、結果を記入したFAXで回答返信しなければならなかった。
ところがWeb与信問い合わせシステムでは、案件情報を営業が入力するだけで自動的に提携リース会社各社に与信依頼メールとして送信され、審査結果も結果連絡票を自動作成し営業担当者、マネージャーへと同報でメール回答される。営業の依頼作業工数が減るとともに、リース会社にとっても業務効率が大幅に向上するため、全体の決済時間の短縮につながる。モバイルを利用すれば外出先でも結果確認ができる。
しかし不良債権の管理は、Web与信システムを導入すればそれで終わりというものではなく、むしろ取引後の仕組みが重要だ。大塚商会では、取引後に発生する請求督促の業務プロセスをシステム化し効果を上げている。請求書発行後、期日通りの入金が確認できず再請求発行になった場合、見積や製品出荷を差し止めにする。つまり再求発行の業務フローは、この牽制機能をもったシステムが自動的に働くようになっているのだ。これまで既存取引顧客の与信額がオーバーした場合、担当営業や拠点管理者が私情を挟まず冷静な判断をすることは難しかったが、その心配も無用だ。不良債権の予兆が見えたところで早めに断ち切るシステムは、リース会社の評価も高い。
また、請求回収業務の平準化を推進、この作業を誰もができるようにすることで事務処理生産性がかなり向上した。なかでも入金振込確認などの業務は、できるだけすべてコンピュータ処理できるようにし、手元で現金を扱うことを極力抑え、事故やミスが発生する余地をなくした。通常の振込先銀行口座にはお客様の入金が混在してしまうが、現在大塚商会ではバーチャルで約300万口座の顧客別銀行口座を設定している。これによって販売管理システムで取引先ごとに入金のデータ入力する手間をなくし、入金消込処理の自動化を実現している。現在、入金件数約25万件のうち21万件(全体の76%)を自動照合消込みしており、来年度には90%まで引き上げる予定である。このようなシステムづくりの結果、大塚商会では営業管理アシスタントの22%を削減し、人件費コストの圧縮も実現している。
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与信依頼システム図
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