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2003年3月時点の情報を掲載しています。
デスクトップパソコンは、ノートパソコンに比べて安い−−これまでパソコン業界では一般的とされてきた常識が崩れようとしている。
社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が発表した2002年10〜12月の国内パソコン出荷実績のなかで明らかになった「パソコン平均単価」では、デスクトップパソコンの平均単価が16万5000円となったのに対し、ノートパソコンの平均単価は16万7000円。その差は、わずか2000円となったのである。デスクトップとノートパソコンの平均単価の差がここまで縮まった例は過去にない。
前年同期となる2001年10〜12月には、デスクトップパソコン15万8000円、ノートパソコン17万5000円と1万7000円もの価格差があったことと比較すると、その差が急激に縮まってきたことがわかる。
傾向としては、デスクトップパソコンの平均単価が上昇しているのに対して、ノートパソコンの価格は下落する流れにある。とくに、デスクトップパソコンの価格上昇は、2002年7〜9月に比べて、わずか1四半期で1万3000円も上昇しているのだ。
この背景には、いくつかの理由がある。
第1点目は、デスクトップパソコンに付属しているモニターの液晶化が進展したことだ。
10〜12月の集計によると、デスクトップパソコンの全出荷量の80%が液晶ディスプレイ搭載モデルだったという。また、大型の17インチ液晶ディスプレイや、横長タイプのワイド画面モデルといった液晶を搭載した高価格帯の製品にも徐々に人気が集まっているという。
加えて、DVD-RAMドライブを搭載したり、高性能グラフィックスチップを搭載するといったオーディオ・ビジュアル機能を強化したパソコンが人気を博するといった動きも高価格化に影響している。
一例をあげれば、富士通では、冬モデルのデスクトップパソコンのうち、4割がDVD書き込み機能をもったマルチドライブ搭載機となっており、春モデルではこの比重を半数以上に引き上げる生産計画を打ち出している。
それだけ、デスクトップでは高機能化が進展しているわけだ。
これに対してノートパソコンは、昨年春に、パーツ価格の上昇などを背景に単価が上昇したのをピークに徐々に値下がり傾向にある。デスクトップパソコンに比べて、オーディオ・ビジュアルといった高機能が求められる要素が少ないことや、全出荷台数の半数以上を超え、コモディティ化の進展や低価格製品を求めるユーザーが増えたことが、ノートパソコンの価格下落傾向を後押ししているといえるだろう。
同調査を発表したJEITAでは、この傾向はさらに続くと予測しており、「近い将来には、デスクトップパソコンとノートパソコンの平均単価が逆転する可能性もある」と指摘する。
デスクトップパソコンの高機能化がますます進展するのは間違いない。それに対して、ノートパソコンがこれまでのように価格下落傾向が続けば、確かに平均単価の逆転傾向がありうるだろう。
だがその一方で、市場全体としては、デスクトップパソコンの単価上昇傾向は部分的なものと指摘する業界関係者もいる。
というのも、JEITAの出荷統計は大手パソコンメーカーを中心とした自主統計であり、低価格戦略を前面に打ち出しているデルコンピュータやソーテックなどは、この統計には参加していない。また、低価格が魅力である自作パソコン、ショップブランドパソコン、そして組立パーツなども含まれていない。
つまり、低価格路線の製品が、ごっそり抜け落ちているともいえるのだ。
秋葉原の老舗販売店である九十九電機と石丸電気では、全米のパソコンショップで第2位のシェアを誇るイーマシーンズと独占販売契約を結び、4万9800円から(モニター別売り)という低価格パソコンを昨年12月から発売。出荷早々、一部モデルで品切れを起こすという人気ぶりを誇っている。この点からも、低価格デスクトップパソコンの人気は相変わらずだといっていい。
高機能化が進展するナショナルブランドのデスクトップパソコンに対して、低価格化領域をカバーする非JEITA加盟パソコンメーカーのデスクトップパソコンおよび自作、組立パソコンという二極化傾向が顕著になったとの見方が的を射ているのかもしれない。
もちろんそれに伴い、販売店の取り扱い製品について、高機能路線を主力とするのか、それとも低価格路線を主軸に据えるのか、といった選択を迫られる環境になったともいえるのだが。
大河原 克行
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、'01年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊アスキー(アスキー)などで連載および定期記事を執筆中。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社刊)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社刊)など。
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