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2003年5月時点の情報を掲載しています。
パソコン需要の低迷が長期化、業界内では明るい話題が少ない。
業界団体や調査会社から発表される出荷統計なども、相次ぎ前年割れ、下方修正という言葉ばかりが並ぶ。
JEITAが予測した2003年度のパソコン出荷見通しは、前年比4%増の1020万台とプラス成長を見込むものの、「イラク戦争後の経済情勢やSARSによる影響などのほか、企業のIT投資の抑制傾向、株価低迷など、少なくとも上期の前年割れは免れない」(JEITA)と、依然として先行きの不透明感を懸念する声があがっている。
そうしたなか、前年比2倍近くの高い成長率が見込まれている製品がある。
SOHO/個人向けのインクジェット複合機だ。
複合機とは、スキャナ、カラーコピー、FAXなどを搭載したプリンタのことである。プリンタ単体以外としての利用以外にも、コピーなどのようにパソコンと接続しない独立した利用も可能だ。
インクジェットプリンタ最大手のセイコーエプソンの予測によると、年間出荷台数は2002年の50万台から、2003年は90万台へと、前年比80%増の伸び率となっているのだ。
この数字については競合メーカーによって数字の違いこそあれ、ほぼ同様に大幅な成長率を見込んでいる。
実は、インクジェットプリンタ市場全体では、2003年度は前年比3%減の615万台とマイナス成長が予測されている(セイコーエプソン予測)。なかでも、インクジェットプリンタ単能機は、前年比14%減の445万台と、わずか1年間で75万台も減少すると予測されている。
この落ち込みを複合機およびパソコン本体との接続を不要とするダイレクトプリンティング機能を搭載したプリンタが穴埋めするという構図だ。
では、ここにきて、インクジェット複合機が急速に注目を集めている背景はどこにあるのだろうか。
ひとつには、メーカー各社から幅広い製品ラインアップが整ったことがあげられる。
高価格製品と位置づけられてきた複合機だが、昨年後半から実売価格で2万円を切る価格帯を実現した商品が登場するなど、単機能機との価格差が急速に狭まったことがあげられる。
この価格帯であれば、初めてプリンタを購入するといったユーザーでも選択肢のひとつとして複合機をあげられるようになってきた。パソコン用プリンタとして利用しない時にも、簡単にカラーコピーがとれる家庭用コピーとして利用できるというメリットも、個人ユーザーの購入や企業における部門導入を後押ししている。
また、これまでは、広い設置スペースを必要とした筐体が、机の上の隅にも設置できるような省スペース化が図られ始めたことも見逃せない。書斎や、企業内の部門利用などにも場所を取らずに設置できる点が評価されている。
さらに、メーカー側の複合機に対する姿勢が大きく変わってきたことも要因のひとつに数えられるだろう。
従来の複合機はプリンタのエンジン部分に、1世代あるいは2世代前のエンジンを利用していたという例がほとんどだった。そのため、最新のインクジェットプリンタに比べて印字速度が遅い、印字品質が悪いというのが実状であり、「劣った機能の詰め合わせ」的な印象は拭えなかった。
だが、昨年から発売された製品は、各社ともに最新のエンジンを搭載するなどの動きが相次ぎ、機能が飛躍的に向上した。一部メーカーでは、エンジンの開発段階から複合機への同時搭載も視野に入れた計画へと移行しており、この点でもメーカー側の姿勢が大きく変化してきたことがわかる。
業界内では、こんな比喩もされている。
「従来はお子さまランチ的な子供騙しの要素があったのは否めない。だが、昨年来登場した複合機は、老舗が作った本格的な幕の内弁当のように、手間暇がかかった仕上がりになっている」
プリンタメーカーが本腰を入れはじめたという意味でも、この比喩はまさに的を得ているといえよう。
実は、複合機の浸透は、プリンタメーカー、ディーラーにとっても大きなメリットがある。
個人を例に取れば、これまでは年賀状シーズンなどの一時期に利用が集中していたプリンタ利用を、コピーやFAXなど日常的な利用へと拡大できるからだ。
これによって、インク、紙などの消耗品の消費量が増加するというアフタービジネスの拡大につなげることができる。
プリンタ事業の収益性を高める最大の近道は、消耗品ビジネスの拡大というのは周知の通り。単機能プリンタよりも、複合機を売りたがる販売店が増えているのもうなづける。
大河原 克行
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、'01年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊アスキー(アスキー)などで連載および定期記事を執筆中。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社刊)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社刊)など。
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