大塚商会の販売最前線からお届けするセールスノウハウマガジン「BPNavigator」のWEB版です。
Up Front Opinion
|
巻頭特集
|
Open Source Solutions
|
ソフトウェアライセンス
| Column >
IT活用
>
売れるショップ
>
ビジネストレンド
|
イベント情報
2003年5月時点の情報を掲載しています。
ロス率の低減は小売店の渇望
一般的な小売店の店員などが話す“ロス”とは、どんな意味でしょうか?それは非常に広範囲です。この言葉には、店を運営することから発生する、あらゆる損失が含まれています。
書店やドラッグストアなどにおけるロスの代表は「万引」だと、知人の経営コンサルタントからレクチャーされたことがありました。ロス率は、売上に対する損失から計算することができます。発生してしまったロス金額を粗利で補うには、たいへんな努力が必要になります。そのため、私がマネージャーをしていた某家電量販店の経営陣は、「ロスを最小限に抑えられるかどうかが店長の責務だ!」とまで叫んでいました。ロスは万引だけに限りません。商品を店頭に陳列していれば、破損、汚損、廃棄なども発生します。
物質面ではなく、精神面ともいえるロスもあります。売場の清掃が行き届いていない、販売員の接客態度が悪い、などがこれに当たります。これまた経営陣から「腕も磨けば、玉も磨くのがプロ店員だ!」と指導されました。接客技法と商品管理を両立させないとロスは減らないのです。新商品の仕入を怠った、人気商品を欠品したまま放置していたという場合などには、「自発的に売上を拒絶しているのか!」と怒鳴り声まで発せられました。
経営が左前になる小売店は、金額や数量の管理の厳密性が欠如して、発生するはずがないロスへの対処にも鈍感です。管理者がロスの性格を分析して、ロス管理項目と対応責任者を明確にする必要があるのです。ロス金額とロス発生率を四半期ごとに検証できるくらいの余裕が欲しいところです。
販売や接客などの機会損失などによるロスは、従業員教育やロールプレイなどで改善することができます。品減り、商品廃棄ロスなど金額の大きいロスの削減も重要ですが、目に見えないロスの発生防止に努める姿勢があれば、スタッフレベルが自然と向上します。
ICタグ技術は商流管理に必須
ロス率をゼロに近づけることが可能と期待される技術としてICタグがあります。ICタグとは情報を記録するICチップと、無線通信用のアンテナで構成する超小型装置です。出版業界では、ICタグに関わるベンダーと組み、コンソーシアムを結成し、ICタグの導入に向けた活動が本格的にスタートしています。「ICタグ技術協力企業コンソーシアム」では、加盟したベンダーとユーザーとで、ICタグを活用した万引防止と物流業務の効率化を目指すソリューションを模索しはじめました。
コンソーシアムの会員企業80社の中には、日立製作所やNTTデータといったベンダーが過半数を占めています。単独業界がICタグの導入を目指してベンダーと協業して、組織的な活動を開始しているわけです。出版社や取次店の煩雑な物流業務を効率化したい、書店での万引防止にも適応したいという要望は、以前からありました。
しかしこれまでは技術的な面で、要望にかなうものが見つかりませんでした。そこに出てきたのがICタグという次第です。年間数十億部を取り扱う業界にとってICタグはどんなメリットがあるのでしょうか?書籍の万引を例にとってみましょう。経済産業省が発表した数値では、単店舗当たりの平均被害額は年々増加傾向にあり、02年では実に210万円超とのことです。
万引という違法行為自体許されませんが、出版社の場合、それはロス発生だけに留まりません。書店で万引したアイドルの写真集や人気コミックは古書販売店に転売されてしまいます。つまり、換金目的の犯罪なのです。古書販売店の店頭に並んだ新刊書はどうなるのでしょうか?通常の書籍流通の卸価格よりも安価になっていたという笑えない話を聞いたことがあります。それを放置しては、従来の流通制度が崩壊してしまいます。
ICタグの技術により、製造から消費に至るまでの商流管理が可能になれば、長期低迷中の出版業界が復活する可能性もあるのです。もちろん、他業界にも応用できる技術です。
島川 言成
パソコン黎明期から秋葉原有名店のパソコン売場でマネージャを勤め、その後ライターに。IT関連書籍多数。日本経済新聞社では「アキハバラ文学」創生者のひとりとして紹介される。国内の機械翻訳ソフトベンチャー企業、外資系音声認識関連ベンチャー企業のコーポレート・マーケティング部長を歴任。現在、日経BP社運営のビジネスサイト「日経SmallBiz」でIT業界の現状分析とユニークな提案をするコラムを連載中。PC月刊誌「日経ベストPC」では秋葉原のマーケティング状況をリポート。また、セキュリティ関連ベンチャー企業のマーケティング部門取締役、ゲームクリエーター養成専門学校でエンターテインメント業界のマーケティング講座も担当。
本紙の購読申込み・お問合せはこちらから
Copyright 2006 Otsuka Corporation. All Rights Reserved.