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2003年7月時点の情報を掲載しています。
中古PCの市場が着実に拡大しつつある。
社団法人電子情報技術産業協会によると、国内の中古PC市場は1999年度が60万台、2000年度が120万台、2001年度が200万台と、年々急速な勢いで伸張。2002年度は具体的な数字はまだ明らかにはなっていないが「引き続き高い成長率を維持しているのは間違いない」(同協会)と、市場が拡大傾向にあることを示す。
同協会の調べでは、2002年度の新品のPC出荷実績は前年比8%減の984万台と1000万台を割り込んだ状況。一方、これまでの中古PC市場の伸び率を勘案し、2002年度には約250万台の市場規模に拡大していると仮定すれば、国内で流通するPCの5台に1台が既に中古PCということになる。販売会社にとっても、侮れない市場規模に到達し始めたといえよう。
同調査によると、中古PCはいくつかのルートから製品が流れ込んでいるのがわかる。2001年度の実績によると、企業などの事業系ユーザーから357万台、家庭系ユーザーから46万台の合計403万台のPCが使用済みとして排出されたと推計している。そのうち、廃棄されるものを除いて中古市場に流入するのが、家庭系ユーザーから15万台、事業系ユーザーからは25万台。さらに、「リースアップ」製品を含むリース会社およびレンタル会社を経由して中古市場に流入するものが150万台、メーカーや販売会社が回収したものから、中間処理業者を通じて中古PC市場に出回るものが約10万台あるとしている。
このうち、実際に中古PCとして国内に2次流通されるのが112万台。残りの85万台強は、海外市場に輸出されることになる。海外向けとしては、東南アジアに加え、東欧、ロシア、アフリカなどが主要地域となっており、これらの地域では一世代前のCPUでも商品価値があり、日本とは異なった製品の人気が高いという。
では、国内で中古PCが注目を集め始めている理由はどこにあるのだろうか。
ひとつはブロードバンドの浸透によって、クライアントPCに最新の機能を求めない利用層が増えたことだ。企業、個人を問わず、メールやブラウジングの利用だけにPCを利用するといった使い方が増加、一世代前のPCでも十分利用できるという考え方が出始めている。
また個人向けでは、ハイクラスのPCを中古で手に入れるといった自動車と同様の発想を持つユーザーが出てきたこと、ディーラーや販売店サイドにおいても、データ消去サービスや買い取り制度の充実、販売時の長期保証制度の実施など、初心者でも中古PCを売買しやすい環境が整ってきたことも見逃せない。
個人向けを中心に中古PC販売を行うソフマップでは、「2〜3年でPCを買い換えるというユーザーが増加し、質の高いPCが集まるようになった。その一方、女性や初心者層でも中古PCを購入する例が目立つようになってきた」と話す。
さらに、今年10月から開始される個人向けPCのリサイクルの実施によって、これまで販売されたPCに関しては排出時にリサイクル費用が徴収されるようになることを嫌って中古市場に持ち込むユーザーが増加するとの見込みもある。質の高い中古PCが集まる可能性があるとして、中古PC店は期待を寄せているところだ。
また、PCメーカー自身が中古PC分野に進出し始めたことも中古市場拡大に影響しそうだ。日本IBMは、「IBMリフレッシュPC」の名称で、リース期間が終わったPCを修理/クリーニングした後に、再生品としてPC量販店で流通させる。NECも、デスクトップの生産拠点であった旧NEC群馬を母体として発足したNECカスタムサポートを通じて中古PCを再生。メーカー認定中古製品として流通させる。これもユーザーが安心して中古PCを購入できる環境整備のひとつとなるだろう。
このように中古PCは最早見逃せない市場を形成しつつある。だが、この分野に乗り出すには新品販売とは異なったノウハウが必要とされるのも事実。商品を見極める力や、買い取り・販売価格の設定、修理/クリーニング/データ消去といった整備のための体制づくりも必要だ。そして、多くの販売店が苦労しているのが質の高い中古製品の調達力の問題である。
一方、最近の日本ヒューレット・パッカードやソーテックの新品PCに代表されるように、中古PCの主力価格帯といわれるデスクトップ=5万円、ノートPC=10万円の領域にまで新品の価格が落ちてきたことも、中古PC市場の先行きに何らかの影響を及ぼしそうだ。
成長する中古PC市場への参入をうかがう販売店も多いが、いくつかの障壁もある。やみくもに参入するのは危険であるのは間違いない。
大河原 克行
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、'01年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊アスキー(アスキー)などで連載および定期記事を執筆中。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社刊)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社刊)など。
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