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2003年9月時点の情報を掲載しています。
資源有効利用促進法に基づいて、10月1日から家庭系パソコンの回収・リサイクル制度がスタートする。
「家庭系パソコン」と聞くと、企業を中心に事業展開をしている販売会社には、直接関係ないと思われがちだが、中小企業やSOHOにおいては家庭系パソコンに分類される機種が数多く使われているのが実態であり、この制度のポイントはぜひ知っておいた方がいいだろう。
周知のように、企業向けパソコンのリサイクルは、すでに2001年4月から実施されているが、今回新たにスタートした家庭系パソコンのリサイクル制度は、企業系パソコンのそれとは、まったく別ものと捉えてもいいほど大きな違いがある。
例えば、企業系パソコンのリサイクルは産業廃棄物に分類されるが、家庭系パソコンの場合は一般廃棄物となる。そのため、廃棄する業者や制度、規約なども自ずと異なってくる。
新制度となる家庭系パソコンの場合は、業界団体である社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が用意した回収・リサイクルのスキームを利用することで、全国の郵便局(日本郵政公社)の窓口や郵便局員による戸別回収が行われる。回収・リサイクル費用は、ノートパソコン、デスクトップパソコン、液晶モニターが3000円、CRTモニターが4000円。例えば、液晶モニター一体型パソコンの場合は3000円だが、デスクトップパソコン本体とCRTモニターが分離している場合には7000円の費用が必要だ。
これらの費用設定は、制度開始の10月1日よりも前に販売されたパソコンに関してのもの。10月1日以降に販売されたパソコンに関しては、「PCリサイクルマーク」が貼付され、リサイクル費用はパソコンの価格に上乗せの形となり、販売時点での徴収となる。費用は、前述のものよりも若干安くなるようだ。
ところで、家庭系パソコンの分類は、メーカー側の定義に委ねられている。機種ごとの細かい分類についてはJEITAのホームページ(http://www.jeita.or.jp)を参照していただくのがいいが、この分類作業はメーカー各社の頭を悩ませたようだ。
原稿執筆段階では、まだ各社から機種ごとの分類は発表されていないが、もともとの製品コンセプトや、搭載しているOS(ウィンドウズXP)が「ホームエディション」か「プロフェッショナル」かで切り分けるという分類方法になりそうだ。
例えば、NECのように企業系パソコン(MATE、VersaPro)と家庭系パソコン(VALUESTAR、LaVie)を事業ラインによって明確に分けている場合は、製品ごとの分類がわかりやすい。その一方、日本IBMのThinkPadのように企業系パソコンとはいいながらも個人ユーザーが利用しているケースが多い機種や、デルコンピュータのようにユーザーがOSのプロフェッショナル版とホームエディション版を自由に選択できるようになっている場合などは、分類が難しい。
ところで、企業において家庭系パソコンを利用している場合のリサイクルついてはどうなるのだろうか。
10月1日以前に導入されたパソコンについての対応はメーカーによって異なるようだ。一方、10月1日以降に販売された家庭系パソコンを企業で利用する場合には、販売時にリサイクル費用が徴収されるため、その処理が必要になる。
現時点でのJEITAの見解は、家庭系パソコン用の回収・リサイクル費用を、そのまま企業系パソコン用に転化できるような仕組みが用意されるだろうということだ。ただ、それには手続きなどが必要になりそうで、事務手数料などの実費が別途必要になる公算が強いという。現在、企業のパソコン平均寿命は5.8年といわれているが、3年リースなどの動きも活発化しており、数年後には、事前に回収・リサイクル費用を支払った家庭系パソコンの導入企業における「廃棄問題」が顕在化する可能性もある。
だが10月以降は、メーカー、販売会社が回収・リサイクル時点での混乱を嫌って、家庭系と企業系を明確に切り分けた商談を徹底するといった動きも出てきそうだ。家庭系パソコンを数多く企業に販売していたメーカーなどは、結果として受注生産の割合を引き上げることにもつながるため、本体のコスト削減というメリットが出るかもしれない。また、販売店にとっては、データ消去や企業の情報機器の資産管理といった新たな需要も出てくるだろう。リサイクルはメーカー、販売会社の負担を増やすだけといわれてきたが、実は、隠れたメリットもありそうだ。
大河原 克行
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、'01年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊アスキー(アスキー)などで連載および定期記事を執筆中。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社刊)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社刊)など。
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