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2003年11月時点の情報を掲載しています。
パソコン出荷台数を知るための公式データとして、業界内でよく利用されているのが社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が四半期ごとに発表しているパソコン出荷統計だ。
同統計は、デルコンピュータを除くほとんどの国内主要パソコンメーカーが参加している自主統計で、一般的に、市場全体の約90%をカバーしているといわれる。
その最新データとなる2003年度第2四半期(7〜9月)の出荷統計が先頃発表された。
これによると、国内のパソコン出荷は、台数ベースで前年同期比24%増の262万7000台、金額ベースでは同17%増の4030億円となり、台数、金額ともに2桁の大幅な伸びとなった。
2桁の伸び率を達成したのは、台数では2000年第4四半期以来10期ぶり。金額ベースでは、2000年第2四半期以来12期ぶりというもの。
国内の経済環境が回復基調に向かうとともに、景気低迷感が徐々に払拭され、企業の情報化投資、個人消費が上向き始めていたことが2桁増に達した背景だと同協会では分析しており、この好調ぶりを受けて、「今年度通期見通しである1020万台は、最低限の数字とし、さらに+αの出荷を見込みたい」と、事実上の上方修正を明らかにしたほどだ。
会見では、+αの具体的な数値については言及しなかったが、2001年度実績が1068万台であったことを引き合いに出し、「ここには到達したい」とコメントするなど、少なくとも4〜5%程度の上乗せを期待しているようだ。
しかし、市場動向や調査の背景などを見てみると、10期ぶりの2桁増を達成したとはいえ、実は、パソコン需要の本格回復とは言い難い状況にある。いや、むしろ、手放しで喜ぶのは危険だといわざるを得ない。
それにはいくつかの理由がある。
第1点目には、比較となる前年の第2四半期の出荷ベースが低いという点だ。
前年同期は、サッカーの日韓ワールドカップの開催によって、個人消費が低迷。パソコン出荷も同様に前年第2四半期実績は、前年同期比6.5%減の212万6000台と落ち込みを見せていた。昨年第2四半期を振り返ると、さらにその前年が20%台のマイナス成長となっていたことから、業界内では少なからず需要回復を期待した節があった。だが、結果としては、そこからさらに落ち込むという事態になったのである。
そうした意味で、今年2桁増の大幅な回復を果たしたとはいえ、残念ながら2000年度第2四半期の289万5000台には届いていないのである。
第2点目には、今年の場合の特殊事情として、各社のパソコン新製品投入が9月に集中し、9月だけの集計では前年同月比4割増と異例ともいえる伸び率を記録している点だ。これは当然、第2四半期全体の大幅な伸びを牽引する格好となっている。
例年ならば、9月は製品出荷を絞り込み、10月の新製品投入に控えるというのがメーカー各社に共通した戦略。しかし、今年の場合は、個人向けパソコンのリサイクル制度が10月1日から開始となったため、9月の駆け込み需要と10月以降の反動を懸念したメーカー各社が、PCリサイクルマークを貼付したパソコン新製品を前倒しで9月に出荷したという事情がある。
例年出荷を絞り込む時期に、出荷のピークを持ってきたのだから、4割増という数字も当然といえば当然である。
言い換えれば、年末商戦を含む第3四半期(10〜12月)のパソコン出荷量にも少なからず影響を及ぼすことになるのは間違いないだろう。
そして、3点目は今回の出荷統計からアロシステムが新たに参加している点だ。アロシステムは、パソコン工房などの店舗展開を全国規模で行う、ショップ系組立パソコンメーカーとして人気を誇る企業で、業界関係者などの声をまとめると、年間出荷台数は30万台程度と推定される。となると、同社が統計に参加するだけで前年比3%程度の上乗せ効果があるという計算だ。同協会では、前年に遡って上乗せして集計することがないため、前年第2四半期は17社の出荷統計、今年は18社の集計での比較ということになるのだ。
こうしたいくつかの要因を見ると、2桁増という高い成長率を達成したとはいえ、市況回復と断言するのはまだ早いといえるだろう。
むしろ、この2桁増をベースに今後の成長曲線を描くことの方が危険だといえ、パソコン需要の本格回復を判断するのは、個人需要が集中する年末年始商戦を含む第3四半期の動向、そして年度末の企業需要の動向を見てからになりそうだ。
大河原 克行
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、'01年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊アスキー(アスキー)などで連載および定期記事を執筆中。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社刊)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社刊)など。
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