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2004年1月時点の情報を掲載しています。
米国では、企業でやりとりされている電子メールを保存しておく重要性についての議論が高まっている。
これは、日本で最近話題を集めているディザスタリカバリやビジネスコンテュニティという考え方とは異なるものであり、それらと区別する言い方をすれば、「データアーカイブ」あるいは「コンテンツアーカイブ」という観点で捉えることができる動きといえるだろう。
なかでも、金融サービス事業者や医療保険業界においては、電子メールのデータや患者の電子データを一定期間保存しておくことが証券取引法をはじめとする各種法律で義務づけられている。最近では、これを実施していなかった複数の証券会社に対して、8,000万ドルにのぼる罰金を支払うよう命じたという例も出ているほどだ。
また、これらの法規制の対象にならない企業においても、昨今では、電子メールを一定期間保存しておくといった動きが出ているのだ。
米国でこうした動きが注目されている背景にはいくつかの理由がある。
ひとつは、法規制の対象となっている企業に限らず、すべての企業は、州や連邦機関などからの問い合わせに対して、迅速に情報を提供しなければならない、という点だ。
現在、企業活動において、電子メールは欠かせない存在となっている。むしろ、業務連絡のほとんどを電子メールに頼っている企業が多いだけに、電子メールデータを保存しておくことは、直接、企業活動に関わる情報のほとんどを保存しておくことにもつながる。この点から、必然的に電子メールデータを保存しておくという仕組みが構築されたわけだ。
2つめには、訴訟大国という米国ならではの事情がある。
社内外から持ち込まれる企業や個人からの訴訟に対して、絶対的な証拠のひとつとして活用できるのが電子メールだ。米国のある調査によると、米国内の著名な企業は、平均125件もの訴訟を常に抱えているのが実態だという。これだけの訴訟大国のなかでは、電子メールデータが重要な証拠物件として提出されることも多く、機密情報の漏洩問題や社内のセクシュアルハラスメントに関する訴訟などの有効なデータとしても活用されている。
では、日本における状況どうなのだろうか。
外資系企業では本社の意向を受けて、データアーカイブに対する意識が強いようだが、日本に本社を置く企業では、国際企業といえどもまだ意識が低いのが実態といえそうだ。
ストレージベンダーや管理ソフトウエアベンダーによると、ディザスタリカバリやビジネスコンテュニティという観点でのデータバックアップ、レプリケーション、スナップショットとしての活用には高い関心があるものの、データをアーカイブしておくという考え方に関心を寄せる企業は極めて少ないという。米国のように、常に訴訟にさらされるという経験がないという市場特性や文化の違いが大きく影響し、必要性を感じていないという背景が大きいのは明らかだ。
また、企業の情報化投資予算が抑制傾向にあるなか、直接利益を生み出さないデータアーカイブに投資をするという例は稀だ。戦略的投資に案件に比べると、どうしても後回しとなってしまうのは否めないだろう。
だが、関係者の間では、日本においても、データアーカイブの重要性が今後は高まるであろうと指摘する声も出始めている。
欧米同様、電子メールが企業内外のコミュニケーションツールとして欠かすことができない存在になっているいま、この情報を、紙の文書やFAXの送受信文書と同様に一定期間保存しておくことの重要性に気がつきはじめている企業も多いからだ。電子商取引や電子政府の浸透、電子認証制度の導入などによって、取引を証明するといったシーンにも、アーカイブは必要とされることになるだろう。
さらに、訴訟や事件の際にも電子メールデータが証拠として活用される場面も出始めている。実際、公正取引委員会が証拠物件のひとつとして電子メールのデータを押収したという例もある。
また、別の側面から見れば、電子メールデータを、ストレージからアーカイブデータとして定期的に別のストレージに保存することによって、ストレージそのものの負荷を軽減できるというメリットもある。
ストレージの低価格化に加えて、ストレージ統合の進展や、プロビジョニングやオーケストレーションといった機能によって、低コストでより効率的なストレージ管理を行える環境もできあがってきた。情報ライフ管理という観点で頻繁に利用するデータと、長期間利用しないデータを切り分ける提案のなかでもデータアーカイブの考え方はひとつの切り口になる。顧客への提案材料のひとつにしてみてはどうだろうか。
大河原 克行
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、'01年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊アスキー(アスキー)などで連載および定期記事を執筆中。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社刊)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社刊)など。
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