グリッドコンピューティングが注目されるようになる以前、コンピュータの計算能力を高める方法は、マルチプロセッサ技術とクラスタリング技術という、大きく二つの進化を重ねてきた。 マルチプロセッサ技術は、改めて説明する必要もないほどに明確で単純な高速処理の手段だ。マザーボード上に複数のプロセッサを搭載し、演算を同時並行的に処理することで、高速化を実現している。しかしその処理分配方法は、プロセッサの設計レベルで決められており、技術の汎用性は存在しない。 一方のクラスタリング技術は、「多重化」という目的で使われることが多く、複数台のサーバを同時に稼動させ、どちらか一方に障害が発生しても、もう一方で稼動し続けることによって、サービスを停止しない仕組みなどに多用される。分配処理用の回線はATM(非同期転送モード)などの高速接続が用いられ、マルチプロセッサに比べ汎用性が増しているのが特徴だ。 これらの技術とグリッドコンピューティングの違いを明確にするキーワードは『接続技術の汎用性の度合い』ということになる。グリッドコンピューティングでは、高速回線をはじめ、今後もさらに進化するであろう汎用ネットワーク技術を最大限に活用している。 しかし、『グリッド』と『クラスタリング』の違いは、接続方法の汎用性の違いだけなのだろうか。すでにオラクルのOracle9iでは、クラスタリング技術を用いた高度な負荷分散処理を可能にしていて、ほとんどグリッドに近いソリューションを実現していたのだ。 乱暴にいってしまえば、従来の『グリッド』と『クラスタリング』との間に明確な差違はない。各種クラスタリング技術の統合こそがグリッドコンピューティングの礎だからだ。 しかし、ビジネスにおいてのグリッドコンピューティングとなると話は変わってくる。そこにはコンピューティングに対する柔軟性(スケーラビリティ)を追求する意味で、ハードウエアの仮想化とプロビジョニングが大きく関わってくることとなる。それらを見極めるには、具体的に利用されるビジネスシーンを知ることが重要だろう。すでに、オラクルの『Oracle 10g』のように、グリッドコンピューティングに向けて積極的に取り組んでいる例もある。次のパートでは、その『Oracle 10g』を中心として、データベースの分野で、ビジネスの可能性や方向性を探っていこう。 続きは本紙でご覧下さい。