大塚商会の販売最前線からお届けするセールスノウハウマガジン「BPNavigator」のWEB版です。
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2004年3月時点の情報を掲載しています。
秋葉原でIT関連機器を販売するショップで働くということは、秒進分歩で闊歩するIT関連知識との追いかけっこです。この知識はハードウエアベンダ、ソフトウエアベンダ、ソリューションベンダなどが遠慮なく提案してくれるのですが、どれくらいの量があるのでしょうか? 分厚い本の代表に岩波書店の広辞苑がありますが、現状、それを凌駕したと思います。実際、秋葉原で働いている旧知店員とこんな話をしたことがあります。
「インターネットの普及以来、膨大な数の通信関連用語が入ってきたので、勉強する意欲が萎えてしまった気がします。最近ではお客様から質問されたから、出版社が発売している用語辞典で調べているくらいです」
なるほど、筆者にしても似た感覚を持っています。例えば「スパイウエア」という言葉を聞いてから、実際にどんなものであるのか把握するまで、結構な時間を経たと思います。この言葉を調査する動機は、個人情報の漏洩問題が散発したからです。昨年末に発表されたコンピュータウイルス発見・駆除ソフトが、やはりスパイウエアへの対応を行ったものが多く、その関心の高さを示しました。専門家集団をしても、IT社会が広範囲になった現在、事件などを動機として新しい脅威に対抗しようとしたのです。個人レベルでは知識の後追いをするばかりです。
スパイウエアはPC利用者の行動や個人情報などを収集するだけではありません。CPUの空き時間を借用して計算行為をするものもあります。収集された情報は、Webマーケティングを得意とする企業(スパイウエアの開発元)などに送信されてしまいます。スパイウエアは他のアプリケーションソフトとセットで配布され、インストール時に、当該アプリと一括して利用条件の承諾を求められます。また、スパイウエアは利用者に気づかれないために、バックグラウンドでのみ動作するツールになっています。利用者はスパイウエアがインストールされたことさえ気づきません。
スパイウエアの活動内容は、インストール時に表示される、誰もが読み流してしまいがちな利用条件に少しだけ書かれています。この利用条件を、よく内容を読まずに承認すると、ソフトを利用することは承諾したことになるわけで、スパイウエア活動を承認したことにもなっているのです。しかも、スパイウエアを後で見つけても、発見だけでは違法行為と指摘できません。
困惑する人がいるでしょうが、無断で個人情報を収集することに消費者団体が反スパイウエア活動を起こしていても、大半の個人は「どうせ、重要な情報を持っているわけではないし」といった程度の認識をしているだけでしょう。しかし、本当に重要な情報が読者のPCに含まれていないのでしょうか? このあたり、先ほどの秋葉原店員の以下の言葉が参考になります。
「昨年末にトレンドマイクロなどのセキュリティベンダがスパイウエア対策に注目しました。こうしたことから、お客様の個人情報への意識がそれで高まり、スパイウエアが紛れ込みやすい、ネットショッピングや海外サイトをよく利用するユーザが検証をはじめました。スパイウエアの説明を求める人も増えています」
なるほど、最近はインターネットを利用しない人は稀です。企業によっては、海外サイトへのアクセス自体が仕事という場合もあります。そんなシステムにトロイの木馬に類似するオンラインスパイウエアを潜まされていれば、個人情報がいつ漏洩してもおかしくないと言えるのではないでしょうか。
前述しましたが、スパイウエアは潜ませた当人が、その意識に欠けていることが脅威なのです。スパイウエアを制御できる開発者は、ある瞬間にしてスパイウエアを悪意に溢れたツールに変えてしまう可能性を否定できません。個人情報の漏洩は、企業の信用を失墜されるだけでなく、甚大な損害も与えることでしょう。法的にも責任を問われる時代になりました。スパイウエア対策はIT社会に生きる企業の必須の行為なのです。
島川 言成
パソコン黎明期から秋葉原有名店のパソコン売場でマネージャを勤め、その後ライターに。IT関連書籍多数。日本経済新聞社では「アキハバラ文学」創生者のひとりとして紹介される。国内の機械翻訳ソフトベンチャー企業、外資系音声認識関連ベンチャー企業のコーポレート・マーケティング部長を歴任。現在、日経BP社運営のビジネスサイト「日経SmallBiz」でIT業界の現状分析とユニークな提案をするコラムを連載中。PC月刊誌「日経ベストPC」では秋葉原のマーケティング状況をリポート。また、セキュリティ関連ベンチャー企業のマーケティング部門取締役、ゲームクリエーター養成専門学校でエンターテインメント業界のマーケティング講座も担当。
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