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2004年7月時点の情報を掲載しています。
社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が発表した2003年度のメインフレーム、ミッドレンジ、ワークステーションの出荷実績は、企業におけるIT投資意欲が回復しつつあること裏づける結果となった。
例えば、ミッドレンジコンピュータの出荷実績は、台数では前年比1%増の18万6,453台と、微増に留まったようにみえるが、同協会の別の調査であるパソコン出荷統計に含まれているIAサーバ分を合わせた、IAサーバ全体の統計では、前年比15%増の32万2,734台と、2桁増の大幅な成長となっているのだ。
さらに、ミッドレンジでは、上期の出荷台数は前年並の8万7,011台、金額では22%減の2,345億円であったのに対し、下期は台数で1%増の9万9,442台、金額では前年比7%減、2,967億円とマイナス成長になったものの、徐々に回復基調にあることを示している。なかでも、これまで厳しかった高価格帯での回復が目立っており、下期の集計では、価格帯別で4,000万円以上のクラスは台数ベースで前年比15%増、1,000万円以上4,000万円未満では1%増と、ともにプラスに転じている。
一方、メインフレームは、台数では前年比5%減の1,241台、金額ベースで前年比29%減の2,625億円と、依然としてマイナス成長。とくに金額ベースでは96年以来の前年割れを抜け出せないままの状態となっているが、これに関しても、同協会の見通しは明るい。というのも、半期別に見ると、上期は、金額では前年同期比22%減の1,234億円、台数では32%減の448台となったのに対して、下期は金額では22%減の1,391億円となったものの、台数は前年比22%増の793台となり、プラス成長へと転じたからだ。
「メインフレームからのマイグレーションが進展しているものの、高度な社会インフラシステムの基盤として今後も根強い需要が期待できるのに加え、メインフレームでなくてもいいようなシステム案件は、すでにオープン系へ移行済み。台数、金額も下げ止まり傾向にある」と同協会では分析している。
このように回復基調が見えつつあるIT産業だが、これらの動向は、業界の思惑とは異なる形で進展しているともいえる。それは、「e-Japan計画は、今回の統計には出荷増として影響しているわけではない」という同協会のコメントにも表れている。地方自治体などにおけるe-Japan計画のさらなる浸透が課題といえそうだ。
また昨今、サーバへの搭載が進展していると見られるLinuxだが、同協会は会見で「目立つほどの増加傾向はない」とコメント。伸張するのは2004年度以降になるとの見通しを示している。
先に触れたパソコン出荷統計とミッドレンジ出荷統計を足した「IAサーバ」のカテゴリーにおいては、Linuxサーバの占める割合は約1割。しかし、この多くがパソコン出荷統計に含まれるものであり、上位機種が多く含まれるミッドレンジの出荷統計では、その比率が極めて少なくなっている。基幹サーバとしての動向が注目されるなか、今後ミッドレンジの統計にどんな影響を及ぼすのかも気になるところだ。
その一方で、IT投資促進税制に関しては、e-Japan計画以上に、今回のミッドレンジの出荷統計にプラスの影響を及ぼしたと見ている。同協会でも、「すでに、20%の企業がIT投資促進税制を適用したIT導入の実績が出ているという調査結果もあり、プラス要素だと判断することができる」とコメント。
当初は、適用範囲の不透明さや、制度そのものの認知度が低かったこともあり、実効性にも疑問が持たれていたが、企業にとって直接メリットを及ぼす施策であることから、活用する動きが広がったといえる。販社にとっても、この制度の存在を提案材料として示すことは、大きな武器になるはずだ。
では、2004年度以降のIT市場はどうなるのか。同協会では比較的明るい見通しを示している。UNIX、Windows、Linuxなどのオープンサーバ合計では、台数で前年比5%増としたのと同時に、金額では3年ぶりに増加に転じると予測。「ミッドレンジは、新たなIT投資の中核として潜在投資力は非常に高いと見込んでいる。企業業績の改善による投資抑制緩和、アウトソーシングビジネス拡大などの情報システムモデルの変革といった、オープンサーバの需要にとって好転要素もある」とした。
だが、価格への圧力はますます強まると見られるのは明らか。市況は好転するとはいえ、販社にとっては手放しでは喜べない要素も、市場には数多く転がっている。手綱を緩めるのはもうしばらく先にした方がいいかもしれない。
大河原 克行
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、'01年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊アスキー(アスキー)などで連載および定期記事を執筆中。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社刊)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社刊)など。
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