大塚商会の販売最前線からお届けするセールスノウハウマガジン「BPNavigator」のWEB版です。
Up Front Opinion
|
Another side Talk
|
巻頭特集
|
Open Source Solutions
|
ソフトウェアライセンス
|
IT活用
|
売れるショップ
|
ビジネストレンド
|
イベント
2004年9月時点の情報を掲載しています。
日本人選手の大活躍で幕を閉じたアテネオリンピック。その感動を大画面や高精細のテレビで見ようと、オリンピック開催前の家電業界は駆け込み需要に沸いた。
昨年まで低迷を続けていた家電販売だが、今年に入ってから徐々に回復基調に転じ、オリンピックを機に前年実績を大きく上回る実績を確実な線とした。
さらに、これに猛暑の影響が加わり、エアコンも好調な売れ行き。松下電器の川上 徹也専務取締役は、「過去の実績を見ると、テレビが売れる時にはエアコンが売れない、エアコンが売れる時にはテレビが売れないというのが通例だったが、今年はテレビもエアコンも売れるという異例の状況が続いている」と語る。
業界が注目したのは、やはりデジタル家電の売れ行きだ。ソニーマーケティングの鹿野 清執行役員によると、オリンピック開催前の、6月、7月は、PDPテレビ、液晶テレビともに前年同期の2倍の売れ行きを見せ、「薄型と、大画面という2つの要素によって、販売に加速がついている」という。
シャープの町田 勝彦社長も、オリンピックにあわせて8月1日から発売した45V型の液晶テレビが、99万7,500円という高価格にも関わらず、事前予約で1,000台を突破したことを明らかにした。「サンプルがないままで、これだけの予約を得られるとは思わなかった」と、出足の良さに驚きを隠さない。9月から10月には「累計出荷1万台を狙いたい」と述べ、この点からも需要の旺盛ぶりがわかる。
同様に、松下電器が7月末から発売したBlu-Ray Discレコーダーも、月産2,000台の強気の計画で投入。「そのほとんどがハイビジョンで放映されたオリンピックの感動を、高画質映像で残したいというユーザー。発売直後から高い人気を誇っている」という。
主要各社のコメントからも、オリンピック需要が、予想を上回る売れ行きを見せたことがわかる。
だが、デジタル家電の売れ行きは、むしろこれからが本番だというのが、家電メーカー各社に共通した意見だ。というのも2000年のシドニーオリンピック、2002年の日韓共催サッカーワールドカップを見ると、開催前や開催期間よりも、年末商戦の方がはるかに需要が集中していたのである。
社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の調べによると、大型テレビの出荷台数は、シドニーオリンピックが開催された2000年では、開催期間に比べて年末商戦は約1.7倍、2002年のワールドカップでは、1.8倍というように、年末商戦の方が需要が高まっているのがわかる。
オリンピック開催前には、オリンピック需要後の反動が一部では懸念されていたものの、業界筋では、むしろオリンピック後の需要拡大に、焦点をあわせているのだ。
家電メーカーのトップの間からも、「秋口には、需要の一服感はあるだろうが、その後一気に立ち上がってくるはず」(シャープ・町田 勝彦社長)、「デジタル家電はオリンピック終了後も伸びるのは明らか。年末に向けて製品をさらに強化したい」(松下電器・川上 徹也専務取締役)という声が聞かれ、各社とも年末商戦に向けた臨戦態勢を整えようとしている。
それは、オリンピックの終了にあわせて、各社の新製品攻勢が始まっていることからもわかる。
さらに、こんな声もある。「デジタル家電の普及は、むしろ、オリンピック以降に加速すると見ており、この勢いは、2008年の北京オリンピックまで続くだろう」(ソニー・安藤 国威 代表執行役社長)。
デジタル家電は、製品の機能強化というだけでなく、従来の家電製品を置き換えていくという役割を担う。
とくに、テレビでは地上デジタル放送への移行という大きな変化が控えており、買い換え需要を促進する材料も揃いつつある。旺盛な需要は長期化するというわけだ。
だが、その一方で、オリンピックの影響によって、個人向けパソコンの需要が、デジタル家電やエアコンにとられ、第一四半期の個人向けパソコン出荷は、大幅な前年割れになったといわれる。
オリンピックをパソコンで見ようという提案を数社が行ったものの、提案に力や勢いがなかったばかりか、その動きが遅く、残念ながらオリンピック需要を獲得することはできなかった。
デジタル家電の勢いが年末でさらに加速するとなると、今後の個人向けパソコンの需要は、ますます厳しい状況に追い込まれるといわざるをえない。
個人需要を巡る家電業界とパソコン業界の明暗は、これからさらに激しく分かれるかもしれない。
大河原 克行
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、'01年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊アスキー(アスキー)などで連載および定期記事を執筆中。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社刊)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社刊)など。
本紙の購読申込み・お問合せはこちらから
Copyright 2006 Otsuka Corporation. All Rights Reserved.