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2004年11月時点の情報を掲載しています。
毎年、年末になるとパソコンショップ店頭では、インクジェットプリンタと年賀状ソフトによる「年賀状需要」に沸く。そして、プリンタメーカーによる熾烈な戦いが繰り広げられる。今年も同様に、プリンタメーカーによる熱い戦いが展開されているところだ。
とくに、今年の場合、市場の8割を占めるといわれるエプソン、キヤノンの上位2社が、まったく異なるコンセプトのインクジェットプリンタを投入してきただけに、その戦いの激しさは例年以上のものだといえる。
ある販売店では、その様子をこう語る。
「昨年までは、同じ土俵の上で、印字品質や印字速度を競っていたが、今年は各社ごとに特徴が異なるため、印字品質や印字速度、価格だけでは単純比較できない状況となっている。それだけに、製品コンセプトそのものを問われる商戦になりそうだ」
ズバリ、この点こそが、今年のプリンタ年末商戦の特徴ということになりそうだ。
では、エプソン「カラリオ」とキヤノン「ピクサス」の製品コンセプトはどこが違うのだろうか。
それは、「マルチ」と「シングル」という基本的な製品コンセプトの違いだといっていい。 ここ数年、トップシェアを維持し続けているエプソンは、今年の商戦では、プリンタに、スキャナ機能やダイレクトプリント機能などを搭載した「複合機(マルチファンクションプリンタ)」のラインアップを一気に強化したのが特徴だ。
「デジタル機器は多機能化する方向にあるが、プリンタにも同様の動きが出てきている。今年の製品では、Photo All-in-Oneの切り口から、写真画質の強化を実現しながら多機能化を目指した」とエプソンでは説明している。
同社プリンタのイメージキャラクターに、従来から採用している松浦亜弥さんに加えて、「モーニング娘。」を採用し、個性ある複数のイメージキャラクター構成としたのも、マルチファンクションの強みを訴えることを狙ったものだ。
実際に、オーダーシートに指示を書き込み、これをスキャナで読み込むことで、印刷枚数などの指示を行うといったことや、手書き合成シートに書き込んだ内容と、パソコンで作成したデータを連動させることで、手書き感覚の年賀状を作成できるといった、プリンタとスキャナの融合によって実現される新たな使い方も搭載されている。
まさに複合機で勝負をかけたという構図である。
一方、今年の夏以降、インクジェットプリンタ分野で好調な売れ行きを見せているキヤノンが追求したのは、「シングルファンクション」プリンタの強化だった。
キヤノンは、複合機の市場構成比が高まっていることを認識しながらも、「複合機といえども、やはり主流となる使い方はプリンタ機能。一方、普及価格帯の製品では、写真画質を中心としたスペックの底上げに対する需要が根強く、写真プリントへのニーズはますます高まっている」として、改めてシングルファンクションプリンタの品揃えに力を注いだ理由を説明する。昨年は複合機の品揃えで先行したキヤノンが、今年は戦略を一転したようにも見える。
そして、カメラメーカーである強みを生かして、写真画質の追求にも余念がない。それと同時に、筐体デザインをこれまでの製品群とは一線を画すものへと刷新。インクカートリッジの仕組みも変更するなど、今回の製品で同社が掲げた、「一新」という言葉通りのフルモデルチェンジとなった。
このように、両社の製品戦略は明らかに異なるものとなっている。そのほかにも、日本からの要求を製品化に反映し、幅広いラインアップを揃え始めた日本ヒューレット・パッカードや、デルとの提携によって、プリンタ市場へのアプローチを開始しはじめたレックスマーク、複合機で高い評価を誇るブラザー工業の存在も見逃せない。
いよいよ年末商戦も本番まっただ中に入ってきた。メーカーの間では、こうした製品コンセプトの違いを背景に、「明暗がはっきりと出る商戦になる」との見方も出ており、例年以上に緊張感が走っている。
果たして、どんな結果がでるのか。結果はすぐに出ることになる。
大河原 克行
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、'01年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊アスキー(アスキー)などで連載および定期記事を執筆中。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社刊)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社刊)など。
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