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2005年3月時点の情報を掲載しています。
いよいよ4月1日から個人情報保護法が施行される。個人情報保護法とは、「個人情報の有用性に配慮しながら、個人の権利利益を保護すること」を目的としたものだ。個人情報保護法は、官民を通じた個人情報保護の基本理念等を定めた基本法に相当する部分と、民間事業者の遵守すべき義務等を定めた一般法に相当する部分から構成されている。そして、個人情報を「生存する個人に関する情報で特定の個人を識別可能なもの」と定義し、個人情報データベースなど、体系的に識別可能で、検索できるようなものがその対象になる。
5,000を超える個人情報を取り扱い、個人情報データベース等を事業に利用している企業を、個人情報取り扱い事業者とし、同事業者は利用目的による制限や、適正な情報取得、安全管理措置などについての義務が生じるほか、従業員・委託先に対する適切な監督なども求められる。また、個人情報を企業がどのような目的で利用しているのかについて、本人から要求があれば、求めに応じて通知しなければならないといった対応が盛り込まれる。それとともに、利用目的による制限や適正な取得、第3者への提供の制限に違反していると判明したときには、原則として個人情報の利用を停止すること、といった項目も含まれている。
各企業はこれらに準拠した形で、自らのガイドラインを策定し、情報漏えい対策をとることになる。だが、いくつかの問題も出ている。ひとつは、個人情報保護法の施行に向けて、各企業が参考にすべき内容を示した主務官庁の指針(ガイドライン)が、当初は2004年夏頃までに策定が予定されていたが、2004年12月末にずれ込んだため、業界団体(認定団体)の指針策定が大幅に遅れたという問題があるのだ。
これにより、大手企業の間では、業界の指針が出てから、自社の指針を決定しようとしていたケースが多かったこともあり、4月の施行段階では、約1割程度の企業しか、指針を決定することができないのではないかと危惧する意見もあるのだ。
また、個人情報保護法の制度の複雑性を指摘する声もある。例えば、私立病院のカルテは、個人情報保護法の適用対象となるが、国立病院では行政機関個人情報保護法の対象となり、独立行政法人となった国立病院では独立行政法人等個人情報保護法の対象、市立病院では、当該地方公共団体が制定した個人情報保護法がそれぞれ適用対象となるというように、カルテというひとつの個人情報をとっても、病院が置かれた立場によって、それぞれに異なる法律が対象となる。つまり、自らの企業が所属する業種、業界ごとに、どの主務官庁および業界のガイドラインを参考にすればいいのかを把握することが、企業の方針策定上で注意すべき点なのである。
一方、IT業界筋では、個人情報保護に伴う需要増大に期待している。社団法人電子情報技術産業協会は、2004年度(2004年4〜2005年3月)の国内パソコン出荷見通しを、当初の1,140万台から、1,200万台へと上方修正すると発表。さらに、2005年暦年の出荷見通しについても、「前年比7〜8%増程度を見込みたい」(パーソナルコンピュータ事業委員会・片山 徹委員長)との見方で、成長基調にあることを示しながら、個人情報保護法の施行に際しては、「指紋認証システムを導入したり、セキュリティ強化のためにパソコンを入れ替えたりといった企業が出てくることになり、これが、リプレイスの促進材料になる」として、具体的な押し上げ効果の指数については言及しなかったものの、個人情報保護法がパソコン需要の押し上げ効果につながっていることを強調しており、市場全体の活性化材料であることは間違いないようだ。
個人情報保護法は、ガイドラインの策定が遅れたこともあって、4月にすべての体制が整う企業は少ない。また、最終的には最新のOSへの入れ替えや、セキュリティ機能を搭載した機器へのリプレイスなど大がかりな投資が必要となることも考えられ、むしろ、もう少し時間をかけて段階的に対応を進めていくという企業の方が多い。あせって対策をとるのではなく、長期戦となることを見越して、取り組むのがいいだろう。
大河原 克行
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、'01年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊アスキー(アスキー)などで連載および定期記事を執筆中。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社刊)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社刊)など。
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