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2005年5月時点の情報を掲載しています。
薄型テレビの市場の活気は続き新製品発表の時期を早めるメーカーも
これまでは秋口に新製品が発表され、年末で各社が販売でしのぎを削るというのが一般的な構図だった、家庭用テレビの市場が変化しつつある。昨年のアテネオリンピックの開催にあわせて、薄型テレビの新製品を投入した松下電器が、今年も同じタイミングで新製品投入を発表。東芝、三菱電機も同様のタイミングで新製品を投入し、夏のボーナス商戦を前に、新製品が主要各社から相次いで発表されているのだ。
しかも、9機種を一気に投入した松下電器は、「昨年のオリンピック商戦以上に大量の広告費用を投下する」というように、前年以上の強力なプロモーション展開を予定していることを明らかにし、ボーナス商戦での展開に自信を見せる。
また、東芝は、160GBのハードディスクを搭載した液晶テレビ「ちょっとタイムface」を発表。ハードディスクの搭載によって、トイレや不意の電話などでテレビ視聴が中断される場合に、リモコンのボタンひとつで録画でき、席に戻ってきたら、すぐに見ていたドラマやスポーツ番組を続きが見られるという利便性を実現してみせた。
ハードディスクを搭載したDVDレコーダーとの組み合わせでは、録画の設定や操作までに時間がかかるが、テレビにハードディスクを直接搭載することで実現した使い勝手の良さだといえるだろう。
薄型テレビ分野に出遅れた三菱電機も、この春に投入した新製品で、一気に巻き返しをかけようと鼻息も荒い。これまでに、パソコン用モニターなどの開発、生産、販売でNECと共同で設立していたNEC三菱電機ビジュアルシステムズを今年3月末で解消し、これらの技術資産や人的資産を三菱電機内部に取り込んだ。これにより今後は、モニターとの融合展開も期待されるところだ。新製品では、ルネサステクノロジとの共同開発による、高画質化回路「Diamond Engine V」を搭載。さらに、オーディオユーザーには高い評価がある「DIATONE」ブランドのスピーカーを上位モデルに内蔵。画質、音質で差異化を図る考えだ。
こうした新製品による性能向上と利便性の向上は、ユーザーにとってもうれしい限りだが、やはり気になるのは、価格の動向だろう。すでに、32インチまでの中小型テレビの領域では、実売価格で1インチあたり1万円以下の価格帯にまで下がってきているが、今年は40インチ以上の製品でも、この価格帯が現実のものとなってくるのは間違いない。
その背景には、各社の相次ぐパネル新工場の稼働があげられる。まず、韓国サムスン電子とソニーの合弁会社である韓国S-LCDが、4月から第7世代ガラス基板による液晶パネルの生産を開始。これによって、ソニーとサムスンは、低コスト化を図りながら、高品質のパネルを調達することが可能になる。
また、松下電器は、2005年11月にプラズマパネルの生産拠点として、尼崎に新工場を稼働させる予定だったが、これを前倒しで生産開始する方向で建設を進めており、早ければ9月にも稼働することになりそうだ。
同工場では、現在、同社の主力工場となっている茨木第1工場と比較して、製造固定費を72%も削減。投資生産性で3.7倍、人員生産性で4.2倍、面積生産性で2.6倍という効率化も見込めることから、パネル生産の低コスト化に大きく貢献することができるという。
一方、シャープも2006年10月には亀山第2工場を稼働させる予定だ。ここでは第8世代の生産ラインを稼働させ、大型化へとの対応とともに生産効率性を高める考えである。
こうして見ると、相次ぐ新パネル工場の稼働は、パネルのコストダウンに直結し、薄型テレビの価格下落をさらに加速するのは明らかだ。もちろん、2011年の地上アナログ放送の停波を前にして、今後、継続的にテレビの買い換えが見込まれることを考えると、需要増大を背景にした量産効果による価格下落も期待できる。一部では20インチ台の薄型テレビの価格下落には歯止めがかかったとする声もあるが、大画面テレビにおける価格下落はまだまだ続きそうであり、各社の低価格化競争に向けた体質づくりも、今後の重要な課題となる。
大河原 克行
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、'01年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊アスキー(アスキー)などで連載および定期記事を執筆中。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社刊)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社刊)など。
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