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2005年7月時点の情報を掲載しています。
2005年度の国内パソコン市場は、なんと過去最高のパソコン出荷台数が見込まれている。業界団体である社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)によると、2005年度の国内パソコン出荷見通しは、前年比6%増の1,280万台。過去最高の出荷台数となった2000年度の1,210万台を超えるとの見通しが出ているのだ。
当初、2005年内の発売が予定されていた、次期Windows「ロングホーン(開発コードネーム)」の出荷が1年先送りになり、「不作の1年」とまで言われていた2005年。それだけに、この予測値をIT業界関係者に話すと、驚きの声をあげるケースの方が多い。だが、2004年度実績では前年比2桁増の伸びを記録し、他の業界に先駆けて一歩先に景況が回復。2005年度に入っても、その勢いが持続しているのである。
統計を担当している同協会パーソナルコンピュータ事業委員会 会長の片山 徹氏(=NEC)は、「この予測値をボトムとして、さらに上方修正を目指したい」と、一層の強気ぶりを見せている。起爆剤不在といわれるなかで、なぜこれだけ強気の予測ができるのだろうか。片山氏は、「いまや、ひとつのOSやCPUの発売によって、市況が左右される時代は終わった。むしろ、複数の需要拡大の要素が重なり合って、2005年度は成長することになる」と分析する。
実際、同協会が成長要因としてあげた項目は数多い。例えば、2000年問題を背景に、2000年から翌年の2001年にかけて導入された、大量のパソコンがリプレース時期を迎えており、これによる需要喚起が期待される点だ。2000年度が同調査を開始して以来、過去最大の出荷台数となっていることからもそのリプレース需要の大きさがわかるだろう。
さらに、個人情報保護法の全面施行を背景に、情報漏えい対策、セキュリティ強化を狙った置き換え需要、政府が推進する「e-japan戦略II」を背景にした電子申告の進展やe-Taxの普及、電子文書法の施行に伴うオフィスの生産性向上に向けた導入促進など、誘引材料は数多い。また、IT投資促進税制や少額資産損金算入制度が最終年度を迎えることで、中小企業の情報化投資が促進されるなどのプラス要素も見逃せないといえる。
一方、個人向け需要においても、「一家に一台」の環境から、「一人一台」の環境に進展するという予測もある。いわばマイPC化による買い換え、買い増し需要が期待されるというわけだ。
これらの要因によって、2005年度に過去最高の出荷実績が達成されれば、2006年度も引き続き、過去最高を更新する公算が強い。「ロングホーン」の登場によって、64ビット時代の到来に拍車がかかることになり、買い換え需要がさらに本格化するからだ。
しかも、64ビットパソコンは、x64と呼ばれるクライアントパソコン向けの仕様であれば、既存の32ビットアプリケーションソフトがそのまま稼働し、高速化も図れる。そして、マイクロソフトからパソコンメーカーに提供されるOSのOEM価格は、32ビット版とは差がないといわれている。その他、64ビットCPUの引き渡し価格も、通常のクロック周波数の向上に準拠した形での値上がり幅に留まるとされ、順次、低価格化に向けた価格改訂が行われるというサイクルになる予定だ。
つまり、64ビットだからといってシステム価格が大幅に上がるわけではなく、これまでの32ビットパソコンの機能強化と同じ範囲内での価格設定となるのである。パソコン業界にとっては、明るい数年が続くことになるともいえそうだ。
だが、気をつけておかなくてはならない点もある。ひとつは、2004年度下期の統計から、デルが新たに参加しているという点だ。10%を超えるシェアを持つデルの参加は、出荷台数の大きな引き上げ要素となっている。この数値の上乗せ分を見誤ると危険だ。また、過去最高の予測は、あくまでも台数ベースの話である点。金額ベースでみれば、過去最高という数値はまだ先の話になる。
2005年の国内パソコン市場予測では、金額ベースでの具体的な数値を明らかにしていないが、片山氏は、「前年比横ばい程度」と、一転して厳しい見方をする。金額ベースの苦戦は、そのまま各社の収益の行方にも影響するだろう。過去最高の出荷台数という市況動向に、浮かれてばかりもいられない、ともいえそうだ。
大河原 克行
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、'01年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊アスキー(アスキー)などで連載および定期記事を執筆中。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社刊)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社刊)など。
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