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2005年7月時点の情報を掲載しています。
業務改革・改善のためには、どのようなIT活用の方法があるのだろうか。パッケージ化されたアプリケーションの利用によって、どこまで効率は上げられるのか。あるいは、ビジネス系アプリケーションの使いこなしによって改善が計れるのか。そうした視点から、IT活用について考えていく。
IT予算の多くが 運用管理に費やされている
とある調査によれば、大手企業の情報システム関連にかかるコストでは、その約8割が運用管理などの維持費にかかっているという。構築したシステムを維持しなければ、業務に支障をきたすので新規の投資よりも継続に予算が使われているのだ。その結果、新たな組織変更やビジネスモデルの改革を推進していこうとしても、予算が既存のシステムにかかっているため、足かせになることがあるという。
このような話は、大手企業の大規模な情報システムだけに限ったことだと、多くの人たちは思うかもしれない。しかし、すべてのコンピュータがネットワークに結ばれる時代になった今、ITインフラの運用管理は業務やビジネスの継続にとって、最も重要な仕事のひとつとなっているのではないだろうか。例えば、ネットワークやサーバ障害によるシステムの停止が、自社のビジネスにどれだけ影響を与えるのか、考えてみたことはあるだろうか。仮に、取引先と電子メールでやり取りをしていたとして、そのメールが営業時間帯で数時間使えなくなったら、どのくらいの機会損失につながるだろうか。目安として、2時間のシステムダウンが発生したと仮定し、10人の担当者が400通の電子メールを受信できず、200通の返信を出せなかったとしよう。この中の10%が、商談や発注に結びつくようなメールであったとすれば、40〜60件のビジネスを逃したことになる。
さらに、これが電子メールではなく販売管理や財務関連のサーバだとしたら、どのような被害が発生するだろうか。まず、受発注処理ができなくなれば、業務に与える影響は大きい。生産が止まったり、発送ができなくなる。それによって引き起こされる信用不安や取引のキャンセルなどを考えると、損失は大きくなる。ましてや、月末処理ができなくなったり、経費生産が滞れば、経営にも大きな影響を及ぼすことになる。
こうした不安からITを守るために、運用管理の重要性が増しているのだ。
道具から基盤へと進化したIT
基本的に、パソコンは消耗品だ。その稼働部品には寿命がある。例えば、液晶パネルには何万時間かの限界があり、モーターで駆動しているファンやハードディスクもいつかは故障する。半導体関連の部品に関しても、半永久的に使えるわけではない。1995年にWindows 95がヒットして、それからの数年間は、積極的なパソコンの追加や買い替えが促進されたので、壊れたり寿命がくる前に、機種交代が行われていた。しかし、2000年以降はパソコンの普及も一段落して、企業の資産としてITが組み込まれるようになり、最低でも3年から5年は継続して利用されるようになってきた。また、実際にパソコンの性能も向上したことによって、2000年前後のモデルであれば、まだまだ現役として利用することもできる。しかし、性能的には対応できたとしても、製品寿命の面では5年というのは大きな境目となる。特に、ハードディスクは突然に動かなくなったりする。
運用管理で安全なIT基盤を確立する
形あるものはいつか壊れる。それは当たり前のことだとしても、それが自分の使っている道具にも当てはまると考えている人は少ない。動いているときには、止まることなど考えることもない。しかし、運用上のトラブルは必ず発生する。そうしたときに、少しでも問題を早急に解決することが、最善の策といえる。トラブルが発生した後の対応を迅速にするパッシブ・セーフティな基盤を整えることが大切だ。
例えば、重要なデータを稼働させているデータベース用サーバは、単独ではなく多重化するという方法がある。二台のサーバを並列に稼働させて、一台がダウンしてももう一台で対応する。いわゆるクラスタリングと呼ばれる技術だ。
また、バックアップも基本的だが充分に効果的な対処方法といえる。それも、サーバだけではなく、稼働しているすべてのクライアント用パソコンをバックアップすることが効果的だ。ビジネスの大切なデータは、サーバではなく個人のパソコンに入っていることが多い。また、個人とはいえ、仕事で利用しているパソコンなのだから、すべてのデータを会社側でしっかりと保存するという取り組みは、企業モラルやコンプライアンスの向上といった効果まで期待できる。
そして、理想的には運用管理に長けたソリューションの導入が望ましい。サーバだけではなく、ネットワークなどの稼働状況もモニタリングして、トラフィックなどに異常があれば警告を出すことで、システム全体の安全な運用が可能になる。優れた運用管理ソフトの中には、現象のモニタリングだけではなく、個々のリソースの稼働ログから製品寿命を予測するものまであるが、その分コストもかかるので、自社のシステムに適したコストパフォーマンスの運用管理ソフトを導入するべきだろう。
意外と忘れられているIT資産管理
賢くて効果的なIT運用のために、もうひとつ重要なポイントが資産管理にある。パソコンや関連部品の価格が低下したことによって、今ではパソコン本体ですら10万円以下の価格で購入できる。その結果、情報システム部門や総務部などで管理していないパソコンや周辺機器が、社内のあちこちに転がっていることが増えてきた。会社の経理的には、消耗品扱いになるので資産管理をしなくてもいい、という考えも成り立つ。しかし、昨今の情報セキュリティの問題や、システム全体の運用管理という面から考えると、価格の高低に関わらず、ネットワークに結ばれるすべてのIT資産は厳密に管理されるべきなのだ。また、正確なIT資産の管理は、機器の的確な交換時期を計画できるようになる。いまや、会社の経費に占めるIT関連予算が増大しているだけに、計画的な情報投資は経営における解決課題である。IT資産管理は、社内で未承認のハードやソフトが使われる危険性を防ぎ、経営計画にも貢献できる重要な対策といえる。
実際に、IT資産管理をすべて手作業で行えば、大変な労力になるが、ここでも利便性の高い資産管理ツールを活用すれば、少ない管理者でも正確なマネジメントが可能になる。多くのIT資産管理ツールは、ネットワーク内に接続されているシステムリソースを検索して、そのデータベースを作成する。そこから、リソース情報だけでは取得できない購入価格などの情報を補完していくことによって、価値あるIT資産管理台帳を作り出せるのだ。
ビジネスのIT依存度が高くなり、これからも継続的にITを活用していく企業にとって、ITシステム全体の運用管理と資産管理は、今すぐにでも取り組みを開始するべき、重要なテーマだ。
田中 亘氏
筆者のプロフィール/筆者は、IT業界で20年を超えるキャリアがあり、ライターになる前はソフトの企画・開発や販売の経験を持つ。現在はIT系の雑誌をはじめ、産業系の新聞などでも技術解説などを執筆している。得意とするジャンルは、PCを中心にネットワークや通信などIT全般に渡る。2004年以降、ITという枠を超えて、デジタル家電や携帯電話関連の執筆も増えてきた。
■IT資産管理
管理ツールを利用すれば、あちこちにちらばるIT資産の一元管理を、簡単に行えるため、機器の交換時期も明確になり、本当に必要な経費がすぐに算出できる
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