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2005年9月時点の情報を掲載しています。
業務改革・改善のためには、どのようなIT活用の方法があるのだろうか。パッケージ化されたアプリケーションの利用によって、どこまで効率は上げられるのか。あるいは、ビジネス系アプリケーションの使いこなしによって改善が図れるのか。そうした視点から、IT活用について考えていく。今月はモバイルについて考察する。
モバイルはIT活用における 永遠のテーマ
ユビキタスという言葉が今日のように取り沙汰される以前から、PCを持ち歩いて外出先でも利用するモバイルは、IT活用における重要なテーマとして、さまざまな取り組みが行われてきた。古くは、PCそのものが持ち運べる大きさになることが課題だったこともある。現在では、ノートPCの携帯性は向上し、モデムや無線LANの内蔵は当たり前になった。新幹線や飛行機の中でも、ノートPCを広げているビジネスマンの姿を見かけることも多くなった。しかし、ノート代わりにPCを持ち歩く利用者は増えてきたものの、真のユビキタス社会を最大限に活用しているケースは、まだ少ない。現代のモバイルにおいて重要なテーマは、持ち歩いて使えるだけではなく、いつでもどこでも、自分が必要とする情報にアクセスできることにある。
単に、移動先でのコミュニケーションというだけであれば、携帯電話でも用は足りると思う人も多いだろう。しかし、これだけ多くの人が携帯電話を常に持ち歩いていても、オフィスや自宅に戻ればPCを使う必要がある。携帯電話は、連絡には便利だが、本格的なビジネスでのIT活用となると、やはりPCに匹敵するだけの機能を持ち歩くべきなのだ。
モバイルで広がるIT活用の可能性
携帯電話とPCを活用したモバイルでは、何が違うのか。その最大の差は、データ量にある。携帯電話の狭い画面と、限られたキー操作では、簡単なメールの確認や携帯用ウェブサイトのブラウジングまでならば苦にならないが、本格的なビジネスとなると辛い。特に、メールだけではなく添付ファイルなどが関わってくると、携帯電話の機能では不十分になる。ワークシートで送られてくる見積書や、ドキュメントとして添付されてくる企画書など、いまや電子メールはビジネスのインフラとして、日々膨大な量のデータがやり取りされている。おそらく、多くの人たちが、毎朝自分の机の前で、昨夜からたまっている電子メールを処理するために、多くの時間を費やしているのではないだろうか。こうした時間を短縮することも、最近ではビジネスの生産性に大きく影響すると考えられている。また、メールのやり取りが頻繁になると、そのレスポンス時間も重要なポイントになる。朝出したメールの返事が、翌日や二日後に来るようでは、得意先の機嫌を損ねてしまいかねない。それだけに、いつでもどこからでもメールをチェックできる環境は、多くのビジネスマンが望むところとなっている。
ユビキタス社会における情報疎通を促進するために、モバイル機器や通信インフラは、これまでにも数々の進化を遂げてきた。1990年代の後半に登場したAir H″は、その先駆的な存在だったといえる。PHS通信網でありながら、パケット定額制を打ち出したことによって、ノートPCやPDAでの利用が拡大した。現在でも、Air H″の需要は堅実な数を維持している。
しかし、それでもその普及にはある種の限界はある。特に、ノートPCと通信カードの組み合わせによる利用には、ある程度の知識や技量が求められる。そのため、誰もが手軽に使えるかといえばそうではない。また、128Kbpsという回線も、本格的なインターネット利用には不十分な速度だ。そのため、多くの潜在的な利用者としては、より携帯性に優れたモバイル機器か、反対に高速接続できる無線通信環境を求めていた。
FOMA M1000の 可能性はどうか
DoCoMoが7月から販売を開始したFOMA M1000は、ビジネス用途をテーマとしたモバイル型携帯電話といえる。iモード機能をすべて取り除き、代わりに無線LAN接続やプロバイダ経由のパケット通信によって、インターネット用メールサーバへの接続を可能にした。例えば、会社でインターネット経由でのアクセスを許可しているメールサーバがあれば、M1000を使って直接そのサーバに接続し、自分宛のメールを確認できるようになる。ノートPCで外出先から行っているメール接続の機能を、M1000はそのコンパクトな本体の中に、通信機能まで含めて備え持っているのだ。OSには、Symbianを搭載し、CPUはTIのOMAP 1510を採用し、208×320ドットのTFT液晶画面がある。スケジュールや電話帳にToDoリストなど、基本的なPDA機能も備えている。まさに、電子手帳と3G携帯電話が融合したモバイル機器といえる。
iモードが使えない代わりに、WebブラウザとしてもOperaを内蔵しているので、Javaやフラッシュなども再生できる。その他には、デジカメや動画録画機能も備え、USBケーブル接続でPCとのファイル転送やスケジュールのリンクなども行える。これまで、Pocket PCにAir H″を差して使っていた人ならば、その多くをM1000で置き換えられる。ただし、WordやExcel、PDFなどのドキュメントは、閲覧のみになっており、編集はできない。
実際にM1000を持ち歩くようになると、ノートPCでメールを確認する頻度は減る。また、電車の中でも利用できるので、着信を確認する頻度は増える。ノートPCでは、それなりの場所を選ばなければならなかったが、PDAのようなM1000であれば、まさにいつでもどこでも使えるのだ。これまで、多くのモバイル機器を使いこなしてきた人にとって、M1000はある意味で待望の1台となるかもしれない。
課題はモバイル対応の ワークフローの確立
M1000だけではなく、今後は各社からこのような通信機能を備えた多機能なモバイル端末が、数多く登場してくるだろう。すでに、M1000を構成するモジュール化されたチップやパッケージは、各社から提供されている。あとは、必要なモジュールを選んで組み合わせるだけで、メーカーは市場の求めるモバイル端末を製品化できるのだ。
しかし、こうしたPDA型の端末が普及するかどうかは、ハードウェアの性能だけではなく、それをサポートするIT環境そのものにかかっている。例えば、単にメールのチェックとWebを閲覧するだけだと考えれば、M1000は高価な投資になってしまうだろう。それだけならば、iモードやEzWebにメールを転送すれば済む。
そうではなくて、会社で割り当てた一意のメールアドレスを活用して、承認などのワークフローを実現するなど、ビジネスプロセスと組み合わせたIT環境を構築してこそはじめて、モバイル端末を利用する意味がある。忙しい役員や担当者が、M1000などで外部から承認などを行えるようになれば、ビジネスのスピードは着実にアップする。在庫の確認や納期の計算なども、外部から社内のイントラネットにVPNでアクセスできるようにすれば、客先で即座に答えられるようになる。
こうしたIT環境を整えることによって、はじめてモバイル機器の利用価値が向上し、投資に見合った利益も生み出されるようになる。そのためには、まずはモバイルに対する積極的な取り組みを開始するべきだろう。機器の選定や通信インフラの確認、接続方式の検討やVPNの設定など、インターネットを有効に活用する。そして、いかに遠くからでも安価に安全に接続できるかを検討し、そのルートを数多く用意することが、モバイルによるIT活用の大きな一歩となる。
田中 亘氏
筆者のプロフィール/筆者は、IT業界で20年を超えるキャリアがあり、ライターになる前はソフトの企画・開発や販売の経験を持つ。現在はIT系の雑誌をはじめ、産業系の新聞などでも技術解説などを執筆している。得意とするジャンルは、PCを中心にネットワークや通信などIT全般に渡る。2004年以降、ITという枠を超えて、デジタル家電や携帯電話関連の執筆も増えてきた。
■DoCoMo FOMA M1000はiモード機能を取り除き、直接サーバに接続が可能になる
■FOMA M1000を使えば、ExcelやPDFを開くこともできる。編集はできないが、モバイルPCとしてビジネスのスピードアップが図られる
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